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プロジェリア患者の細胞に、癌に対する保護メカニズムを発見

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日:2014年10月2日

 

 NCIの研究者らは、急激な早期老化を特徴とする極めてまれな遺伝子疾患患者の細胞を調べ、癌に対する新たな細胞の保護メカニズムを発見した。研究者らは、通常は癌が発現しないとされているハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)患者の細胞で、BRD4(Bromodomain-containing protein 4、BRD4 遺伝子にコードされるタンパク質)の介在に腫瘍保護メカニズムを発見した。重要なことは、この腫瘍保護メカニズムは、単にHGPS患者にとどまらないことである。BRD4の腫瘍保護の役割は、HGPS患者の細胞内ではかなり増強されるが、同じ経路が一般集団においても働いていることが、乳癌および肺癌患者を含む複数の患者群の臨床結果データ解析によって明らかにされている。 NCI受容体生物学・遺伝子発現研究所( Laboratory of Receptor Biology and Gene Expression)Cell Biology of Genomes グループのTom Misteli博士が主導したこの研究は、2014年10月2日の電子版Cell Reportsの中で発表されている。

 

 本研究の目的は、HGPS患者の特筆すべき癌に対する耐性の仕組みを明らかにすることである。はじめに、研究者らは腫瘍の生成を防ぐHGPS細胞の内因性の機序について確かめた。続いて、癌に対する耐性に影響を与えるタンパク質を同定するために、分子生物学的手法を用いてBRD4タンパクを同定した。研究者らは次に、一般集団においてもBRD4がより普遍的な腫瘍防御の役割を担っているのかどうかを調べた。これまでの知見では、BRD4の発現は乳癌および肺癌の転移を制限することを示唆している。これらの癌の臨床サンプルを検査することにより、研究者らは、BRD4感受性遺伝子の発現が、乳癌および肺癌患者のより高い生存率に関与していることを発見した。対照的に、BRD4感受性遺伝子は、それまでの知見でもBRD4により促進されるであろうと示唆された、白血病などの血液癌患者の予後不良にも関与していた。このように、BRD4は異なる組織においては異なる効果を持っていて、組織によって腫瘍促進役、または腫瘍保護役の両方に作用することができると考えられる。次の段階は、BRD4による腫瘍の保護的役割の完全な理解とその治療に活用するための研究であろう。

 

原文

 

翻訳滝川俊和 

監修高山吉永(分子生物学/北里大学医学部分子遺伝学)

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