新規分子標的薬レンバチニブは、放射性ヨウ素抵抗性の進行分化型甲状腺癌患者において高い奏効率をもたらし、癌の進行を遅らせる

 <治療が困難な一般的な4癌種に対する有望な分子標的薬(ASCO2014)> 折畳記事

レンバチニブは、標準的放射性ヨウ素(radioiodine;RAI)内用療法に抵抗性の分化型甲状腺癌に非常に有効であることがSELECT第3相臨床試験の結果により示された。この新規経口分子標的薬は疾患の増悪を14.7カ月遅延させた。また、患者の約3分の2に腫瘍縮小が認められた。全生存期間(OS)の中央値にはまだ到達していない。

「この試験結果から、レンバチニブがいずれは放射性ヨウ素抵抗性甲状腺癌に対する標準的治療法になると私達は確信しています」と筆頭著者である、フランスのパリ大学(パリ南)腫瘍学教授Martin Schlumberger医師は述べた。「ほんの1年前には、これらの患者に対しては有効な治療選択肢がありませんでした。現在では臨床現場で活性を示す薬剤が2つあり、どちらもチロシンキナーゼ阻害剤で、これは注目に値します」。

分化型甲状腺癌は最も頻度が高い甲状腺癌であり、米国では毎年、甲状腺癌と診断される60,000症例の約85%を占める。分化型甲状腺癌は通常、標準的治療法である手術やRAIで治療できるが、約5~15%の患者がRAI内用療法抵抗性の分化型甲状腺癌を発症する。もう1つの分子標的薬ソラフェニブは、同じRAI内用療法抵抗性の分化型甲状腺癌患者の治療薬として、2013年11月FDAに承認された。

レンバチニブは経口チロシンキナーゼ阻害剤であり、VEGFR1 – 3、FGFR1-4、PDGFR-β、KIT、RETなど癌細胞内にある数種類の標的を阻害する。レンバチニブについては現在、第2相および第3相臨床試験で肝臓癌、肺癌、腎癌やその他の固形腫瘍に対する治療薬としての可能性が研究されている。

この試験では、1年以内に進行したRAI内用療法抵抗性の進行分化型の甲状腺癌患者392人をレンバチニブ投与群とプラセボ投与群とに無作為に割り付けた。プラセボ投与群の患者には、増悪した場合にレンバチニブ投与へ移行することが許されていた。

レンバチニブ投与患者の約65%で腫瘍縮小が認められたが、プラセボ投与患者では3%のみであった。ほとんどの奏効は試験開始から2カ月以内に認められた。レンバチニブ投与群での無増悪生存期間(PFS)中央値は18.3カ月であり、プラセボ投与群では3.6カ月であった。全生存期間(OS)の中央値にはまだ到達していない。

レンバチニブ投与でみられた最も頻度の高い5つの副作用は高血圧、下痢、食欲減退、体重減少および悪心であった。患者の78.5%において、これらの副作用によりレンバチニブの投与量が減量されたが、その利益は減少した投与量によっても持続したとSchlumberger氏は指摘した。

本研究は、エーザイ㈱による支援を受けた。

ASCOの見解:
「私達が目のあたりにしている稀な癌に対する分子標的薬の進歩には勇気づけられます」とGregory A. Masters医師(ASCO専門医)は述べた。「分化型甲状腺癌患者では従来、RAI内用療法を実施しても増悪した場合には、治療選択肢はごく限られていました。現在では、この新薬レンバチニブは副作用が少ない有効な治療選択肢になります。また、癌が増悪する前に患者の生存期間を延長させることができます」。

抄録全文参照:http://abstracts.asco.org/144/AbstView_144_132694.html

翻訳担当者 渡邊岳

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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