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新たな免疫療法がさまざまな癌に有効である可能性

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新たな免疫療法がさまざまな癌に有効である可能性

米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース

原文掲載日:2014年5月8日

 

患者の癌に特有の変異をもった腫瘍細胞を特異的に攻撃する新たな手法を用いた免疫療法が、米国国立衛生研究所(NIH)の一構成機関である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らにより開発された。研究者らは、体の内部および外部表面(皮膚など)を覆っている上皮細胞に発生した癌が発現する変異タンパク質に対し、人の免疫システムが反応(癌細胞を攻撃)することが可能であると証明した。これら上皮細胞からは、消化器、肺、膵臓、膀胱およびその他の部位において、さまざまな種類の一般的な癌が発生する。

 

研究者らによると、免疫反応を利用して患者に治療効果をもたらすことができるとの根拠がこの研究により追加された。この研究結果は、2014年5月9日付けのScience誌に掲載された。

 

「われわれの研究は、人における癌免疫療法の主要課題に取り組んだものです。それは、いかにして一般的な上皮性癌を効果的に攻撃するかというものです」と、NCI癌研究センターの外科部門長であるSteven A. Rosenberg医学博士は述べた。「われわれが開発した方法は、患者の個々の癌に特有な散発性変異あるいはドライバー変異に対する特異的な攻撃に免疫療法を利用する上での青写真となります」。

 

遺伝子変化は全ての悪性腫瘍で認められ、その中には、抗癌免疫反応の引き金となる変異タンパク質の産生へとつながる可能性を持つものもある。Rosenberg氏のチームが行った研究により、多くの場合、人のメラノーマの腫瘍には、腫瘍浸潤リンパ球またはTILと呼ばれる、変異に反応する免疫細胞が含まれているということが示された。この細胞の存在が、メラノーマの治療における養子細胞療法(ACT)およびその他の免疫療法の有効性を説明する助けとなるだろう。

 

養子免疫療法では、患者自身のTILを採取した後、その中で抗腫瘍活性の最も強いものを研究室で大量に増やし、患者への注入に用いる。しかしながら、この研究が行われる以前には、人の免疫システムが、上皮細胞癌から産生される変異タンパク質に対して効果的に反応するかどうかは明らかになっていなかった。上皮細胞癌は、全ての癌の80%以上を占めている。また、これらの癌に対する個別化免疫療法の開発に、このような反応が利用できるかどうかもわかっていなかった。

 

この研究において、Rosenberg氏のチームは、転移性の消化器癌患者から採取したTILが、患者特有の変異を認識することができるかどうかの検討に取り組んだ。彼らは、肺と肝臓に転移が認められ、標準的化学療法で効果が示されなかった胆管癌患者から採取したTILの解析を行った。患者は43歳の女性で、NIHの消化器癌患者に対するACT試験(臨床試験番号 NCT01174121)に登録された。

 

研究者らは、はじめに 全エクソン領域の塩基配列を解析した 。この際に、患者の免疫細胞が認識する可能性がある変異を同定するため、 タンパク質に翻訳されるDNA領域の解析 が行われた。さらなる実験により、 患者のTILの一部が、ERBB2相互作用タンパク(ERBB2IP)と呼ばれるタンパク質にある変異を認識していることが示された。その後、424億個のTILを用いて、患者に養子細胞移入が行われた。そのうち約25%は、ERBB2IP変異に反応するTリンパ球であり、これらは主に細胞性免疫を促進するために他の細胞を活性化する役割をしている。続いて、T細胞の増殖および機能を高めるために、抗癌剤であるインターロイキン2による4回の治療を行った。

 

TILの移入の結果、患者の転移した肺および肝臓の腫瘍は安定化した。患者の病状に最終的な進行がみられた約13カ月後に、変異に反応するT細胞が95%を占める細胞を移入に用いて養子免疫療法を再度行ったところ、腫瘍縮小が認められ、最新の追跡調査の時点(2回目のT細胞注入から6カ月後)においても継続していた。これらの結果は、変異タンパク質に対するT細胞の反応を、転移した上皮細胞癌を縮小させるのに利用できるということを証明するものである。

 

「消化器癌およびその他の癌に対して免疫療法が奏功するための主たるハードルは、腫瘍反応性T細胞の明らかに低い出現頻度であることから、ここで報告した戦略を用いることで、T細胞養子細胞療法を一般的な癌の患者に利用することができるようになる可能性があります」とRosenberg氏は述べた。

 

参考文献: Tran et al.  Cancer immunotherapy based on mutation-specific CD4+ T cells in a patient with epithelial cancer. Science. May 9, 2014. DOI: 10.1126/science.1251102.

 

原文

翻訳田村克代 

監修田中謙太郎(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)

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