ルキソリチニブが原発性骨髄線維症の生存期間を延長

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ルキソリチニブ(ruxolitinib、商品名Jakafi)は中間リスクまたは高リスクの原発性骨髄線維症患者において、従来治療を受けた患者と比較して生存期間を延長するという結果が、Blood誌に掲載された。

原発性骨髄線維症は、骨髄増殖性の腫瘍として知られる血液がんの一種である。本疾患は血液細胞を産生する骨髄細胞の発生異常および機能異常を伴い、骨髄の瘢痕化(はんこんか)を促進する。これは貧血、脾臓および肝臓の肥大、倦怠感などの症状を引き起こす。一部の骨髄線維症の患者では、急性骨髄性白血病へ進行することもある。

2011年に承認されたルキソリチニブは、骨髄線維症の疾患に限定して承認された現在唯一の薬剤であり、JAK阻害剤として知られる分子標的治療薬である。脾臓肥大、寝汗、掻痒(かゆみ)、骨痛または筋肉痛などの骨髄線維症の徴候および症状を和らげることができる。

国際予後スコアリングシステム(以下、IPSS)は、原発性骨髄線維症の診断に使用されるリスク評価法である。(フォローアップ期間中、動的IPSS(以下、DIPSS)およびDIPSS+時間依存モデルを使用する)。中間リスク-2または高IPSSリスクに分類される原発性骨髄線維症患者の平均余命は4年以下である。

今回、ルキソリチニブに関して2つの前方視的ランダム化第3相臨床試験を実施した。COMFORT-1試験ではルキソリチニブとプラセボを比較し、COMFORT-2試験ではルキソリチニブと利用可能な最善の療法を比較した。両試験ともにルキソリチニブ治療へのクロスオーバーが許容されていた。

今回の試験において、研究者らは、DIPSS開発時に対象としたルキソリチニブ未投与患者コホートを解析した。ルキソリチニブ投与を受けた原発性骨髄線維症患者100人(COMFORT-2 コホート)の生存期間と、従来治療を受けた原発性骨髄線維症患者350人(DIPSS コホート)の生存期間とを比較した。

解析の結果、高IPSSリスク原発性骨髄線維症患者のうち、ルキソリチニブ投与を受けた患者は、従来治療を受けた患者よりも生存期間が長いことが判明した。生存期間の中央値はCOMFORT-2コホートで5年、DIPSSコホートで3.5年であった。初期診断後8年時生存率はCOMFORT-2コホートで32.2%、DIPSSコホートで15.9%であった。診断時の年齢および解析開始時のIPSSリスクについての補正後も、ルキソリチニブは延命効果を示した。

研究者らは、原発性骨髄線維症患者のうち、罹患全期間を通して従来治療を受けた患者より、罹患中のある時期にルキソリチニブ投与を受けた患者の方が生存期間は長いと結論づけた。結果として、ルキソリチニブは本疾患の自然経過に影響を与える可能性があると推測される。

参考文献
Passamonti F, Maffioli M, Cervantes F, et al: Impact of ruxolitinib on the natural history of primary myelofibrosis: a comparison of the DIPSS and the COMFORT-2 cohorts. Blood. 2014; 123(12): 1833-1835.


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翻訳担当者 大木友子

監修 東 光久(血液がん・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院)

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