HIV表面に提示されるEnvタンパク質を画像化

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

 原文掲載日 :2012年7月12日

低温電子顕微鏡法と呼ばれる技術を使用して、米国国立癌研究所(NCI)の研究者らは、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)の一部であり、Envと呼ばれるタンパク質の変形を検出した。Envが宿主細胞上のレセプターに結合時にHIV感染は起こる。この発見はPLoS Pathogens誌の2012年6月12日号に掲載された。この研究を行うにあたって、NCIの研究者らは原型のHIVウイルスと精製されたEnvタンパク質を研究した。そのHIVとタンパク質の検体は、氷晶形成を防ぎその構造を保存する方法として超低温で新鮮凍結された。その冷凍サンプルは電子顕微鏡を使用して画像化された。多くの異なる角度から写したタンパク質イメージを編集することで、研究者らはEnvの3次元モデルの構築を可能になり、宿主細胞に侵入するためにEnvが活性化される時にEnvに起こる変化を決定した。

活性化状態のHIVのEnvタンパク質のイメージ化により、そのベースに3つのらせん状のロッド(桿状対)があることが明らかになった。Envのこれらの部位はほとんどのHIV株に高度に保存されるアミノ酸由来であることから、研究者らは、HIVが細胞に侵入する前の非常に脆弱な状態のHIVを攻撃することで、この新たに発見された構造を標的にする抗体の開発が、HIV感染を防ぐための効果的な戦略になるかもしれないという仮説を立てた。この研究室の研究をさらに知るには、http://electron.nci.nih.govサイトにアクセスしてください。
 

原文

翻訳担当者 岩崎多歌子

監修 後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん研究に関連する記事

【米国癌学会(AACR)】MDアンダーソンから画期的発表12演題の画像

【米国癌学会(AACR)】MDアンダーソンから画期的発表12演題

アブストラクト:1186、3746、3763、3776、3824、6367、6384、6396、6424、6427、6436、6438テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの...
がん細胞の弱点を見つける「金属探知機」を開発の画像

がん細胞の弱点を見つける「金属探知機」を開発

がん細胞の弱点を見つける『金属探知機』として機能するアルゴリズムが、研究者らによって開発された。個別化がん治療の大きなブレークスルーである。

ケンブリッジ大学の研究者らによって開発された...
休眠がん細胞にSTING作用薬で転移防止を目指すの画像

休眠がん細胞にSTING作用薬で転移防止を目指す

治療によってがんの徴候がすべてなくなった後、何年も経ってから再発するがんがあるのはなぜか? その答えには、発病初期に体の他の部位に転移し、その後、眠った状態(休眠状態)に入る厄介ながん...
遺伝子組換え脂肪細胞を使用して腫瘍を「飢餓状態」にの画像

遺伝子組換え脂肪細胞を使用して腫瘍を「飢餓状態」に

科学者たちは長年、がん細胞が生き残るために必要な栄養素を絶つことで死滅させる方法を研究してきた。新たな研究によると、遺伝子組換え脂肪細胞がこの目標の実現に役立つ可能性が示唆されている。...