低リスク甲状腺結節を診断するための遺伝子発現検査

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生検において確定診断のできない甲状腺結節における、遺伝子発現を測定する新しい検査法は、低リスクの甲状腺結節を診断することを可能にし、不必要な手術を避けることができる。これらの結果はNew England Journal of Medicine誌の電子版で発表された。[1]

甲状腺は頸部の前に位置しており、喉頭の下部に付着し、気管の上部に存在する。甲状腺は2つの部位(2葉)にわかれており、峡部でつながっている。甲状腺は、代謝、成長、発達を調節する甲状腺ホルモンを産生し、生命維持になくてはならないものである。

甲状腺から突き出るように増大する小さく異常な肥大(結節)が発見された場合、甲状腺癌が疑われる。このようなケースでは、超音波ガイド下穿刺吸引(FNA)生検で、その結節が癌なのか良性なのかを診断する。甲状腺結節の大部分は良性であり、FNA生検により、それらの良性小結節うち62-85%を正確に診断することができる。しかしながら、20-35%の結節はFNAにおいても診断の確定ができず、さらに確定診断をするために手術が必要となる。FNAによって採取された甲状腺組織の遺伝子を分類する今回の新しい検査法によって、不必要な手術を避けることが可能になる。

19カ月間にわたる49臨床施設による多施設研究において、3,789人の患者が参加し、4,812のFNA標本が得られた。確定診断不能な甲状腺結節の265標本中85標本が、外科的切除後に、悪性であると判断された。265標本の確定診断不能な標本において、遺伝子発現を分類したところ、85本のうち78本を悪性疑いと診断することができた。全体的にみると、この遺伝子発現検査は悪性腫瘍を除外する場合には85-95%の陰性適中率を示した。

付随論説で、J. Larry Jameson氏(医師、医学博士、ペレルマン医学大学院(Perelman School of Medicine)学部長、ペンシルベニア大学の総合医療研究教育機関(Health System)の部長)は、遺伝子発現検査は低リスク結節を診断することができ、1年に約25,000件行われている甲状腺手術を避けることができると述べている。[2]

研究者らは、この遺伝子発現検査は、低リスク甲状腺結節を診断する価値のある新しい方法であり、不必要な手術を減らし、生涯にわたる甲状腺ホルモン補充治療の必要性を減らすと結論付けている。

参考文献:
[1] Alexander EK, Kennedy GC, Baloch ZW, et al. Preoperative diagnosis of benign thyroid nodules with indeterminate cytology. New England Journal of Medicine. Published early online June 25, 2012. 10.1056/NEJMoa1203208
[2] Jameson JL. Minimizing Unnecessary Surgery for Thyroid Nodules. New England Journal of Medicine. Published online June 25, 2012. 10.1056/NEJMe1205893


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翻訳担当者 古屋千恵

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院・総合内科)

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