Elitekが成人および小児の腫瘍崩壊症候群(TLS)を予防

キャンサーコンサルタンツ
2009年12月

2009年12月上旬、ニューオーリンズで開催された米国血液学会年次総会(ASH)で、Elitek(ラスブリカーゼ)が成人および小児の腫瘍崩壊症候群(TLS)を予防し得るという2つの報告があった。

腫瘍崩壊症候群(TLS)は、悪性腫瘍が大量に死滅した結果、腎不全、電解質代謝異常を引き起こし、輸血を必要とする合併症である。TLSは化学療法剤の投与量を少なくするか(ただしこれは治癒可能な悪性腫瘍患者にとって望ましくないことがある)、または輸液とアロプリノールの投与でしばしば防ぎ得る。しかしこれらの支持療法は必ずしも奏効しない。

Elitekは遺伝子組み換え尿酸酸化酵素である。尿酸酸化酵素はヒト以外の哺乳類に存在するがヒトには存在しない。本剤は尿酸の分解を促進し、プリン代謝の不活性代謝物であるアラントインへと変換する。

本剤は米国食品医薬品局(FDA)により、化学療法剤投与中の白血病、リンパ腫患者のTLSの予防および治療に対し使用が承認されている。FDA承認投与量は1日当たり0.15−0.20 mg/kgを5日間で、FDA承認は、小児白血病またはリンパ腫におけるアロプリノールとElitekの比較ランダム化試験の結果に基づいたものである。血中尿酸値はアロプリノール投与群に比べ、Elitek投与群の方が有意に低かった。投与後4時間後の尿酸値はアロプリノール投与群ではわずか12%低下しただけであったが、Elitek投与群では86%低下した。加えて、クレアチニン値はElitek投与4日間は改善したが、アロプリノール投与中は実際には悪化していた。

M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らは、TLSを発症するリスクの高い血液悪性腫瘍の成人患者に対しElitekの標準的な5日間固定投与法(n=34)と、単回投与後は必要に応じて追加投与する方法(n=30)を比較した[1]。全員において初回投与後4時間後に尿酸値は正常化し、そのうち83%は検出限界値まで下がっていた。固定投与群の全患者において正常値が保たれた。単回投与群のうち2回目の投与を必要としたのは4人だけであった。この試験により、大多数の患者はElitekの単回投与で効果的に治療できることが示唆された。これはElitekの高額な薬価を考えれば重要な所見である。

Children’s Oncology Group(小児腫瘍グループ)臨床試験団体に所属する研究者らは、小児の成熟B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)に対するElitekの評価を行った [2] 。著者らによれば、進行成熟B-NHLを発症した小児において、強力な導入化学療法を実施すると、これまでならばTLSと腎不全の発症率はそれぞれ16%と10%であった。本試験にはB-NHLのハイリスク患者が42人含まれた。輸液とElitek投与により、94%の患者において、寛解導入治療開始7日目に糸球体濾過量が改善した。検査値的には19%の患者にTLSが認められたが、臨床的には認められなかった。本試験で完全寛解しなかったのは42人中1人のみであった。

コメント:これらの結果から、ElitekはTLSを予防し、白血病、リンパ腫のハイリスク患者に対する初期治療の効果を高めることが示唆された。さらに、M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らによる報告から、Elitekが低用量でも有効であり、総投与量を抑えられることは意味深い。

文献:
[1]Vadhan-Raj S, Fayad L, Fanale M, et al. Randomized clinical trial of rasburicase administered as a standard fixed five days dosing Vs a single dose followed by as needed dosing in adult patients with hematologic malignancies at risk of developing tumor lysis syndrome. Blood. 2009;114:49, abstract number 105.
[2] Goldman S, Lynch J, Harrison L, et al. Preliminary results of the addition of rasburicase to the reduction cycle and rituximab to the induction and consolidation cycles of FAB group C chemotherapy in children and adolescents with advanced stage (bone marrow+-CNS) mature B-cell non-Hodgkin lymphoma (B-NHL): A Children’s Oncology Group Report. Blood. 2009;114: 48, abstract number 104.


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翻訳担当者 武内優子(薬学)

監修 寺島慶太(小児血液腫瘍・神経腫瘍学/テキサス小児がんセンター)

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