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2012/06/12号◆特集記事「小児期CTスキャンによるわずかな癌リスク上昇が研究で明らかに」

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2012/06/12号◆特集記事「小児期CTスキャンによるわずかな癌リスク上昇が研究で明らかに」

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NCI Cancer Bulletin2012年6月12日号(Volume 9 / Number 12)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

小児期CTスキャンによるわずかな癌リスク上昇が研究で明らかに

小児期のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンによる放射線曝露後10年間で、わずかながら白血病および脳腫瘍のリスクが上昇することが新研究により示された。本研究はNCIおよび英国ニューカッスル大学の研究者主導で行われたもので、原爆被爆者や偶発的に高線量の放射線に曝露された人などのモデルを用いず、CT受検者を直接対象とした初の分析である。

今回の知見は6月6日付Lancet誌に掲載された。

しかしCTスキャンは非常に有益な診断法に変わりはなく、絶対リスクは低い、と著者らは強調している。「CTスキャンの実施が臨床上妥当であり、かつ適切な線量で行われるならば、CTスキャンによる利益はこのような小さなリスクをはるかに上回るでしょう」。NCIの放射線疫学科主任研究員で今回の新コホート研究の上級著者であるDr. Amy Berrinton de González氏はこう話している。

今回の研究のため、ニューカッスル大学健康・社会研究所のDr. Mark Pearce氏らは1985年から2002年にかけ、英国で22歳までに1回以上CTスキャンを受けたことのある患者17万5000人のデータを収集した。英国の国民保健サービス適用病院の放射線科の記録を精査し、癌発生率および死亡率のデータを提供する登録制度と相互に参照した。

放射線に対しては骨髄と脳の感受性が特に高いことから、白血病と脳腫瘍に注目した。また、小児では細胞分裂および身体の成長が早いことからも、成人よりも放射線感受性が高い。

CTスキャンの種類(たとえば頭部や腹部CTスキャン)ごとに体内各器官に照射する放射線量が異なることから、各種CTスキャンで骨髄および脳に吸収された推定線量と白血病および脳腫瘍のリスクの関連を評価した。

推定吸収線量に影響する他の因子としては患者の年齢および性別などがある。また、CTスキャンが行われた年も推定吸収線量に影響する可能性がある。これは1980年代、クリニックに導入されるようになってからCTの照射線量が大きく減ったためだ。

これらすべての因子を検討した結果、現在のCT設定の場合、15歳未満の頭部CTスキャン2~3回の累積線量で脳腫瘍リスクが約3倍、5~10回の累積線量で白血病リスクが約3倍となることが示唆された。

これらのリスクは大きく見えるかもしれないが、絶対リスクは非常に小さいものにとどまると研究者らは結論づけている。そのリスクは、頭部CTスキャンを1万人実施するごとに曝露後10年以内の白血病および脳腫瘍症例がそれぞれ1例増加する程度と推定される。

「公衆衛生上は大きな問題ですが、個人にとっては非常に小さな問題です」。Pediatric Radiology誌編集者でミシガン小児病院放射線科部長のDr. Thomas Slovis氏はこのようにコメントしている(同氏は本研究に関わっていない)。放射線照射が小児に害をもたらす可能性について保護者は心配するが「診断を行わないことによる害もある」とSlovis氏は説明している。「CTが最善の検査であるならば間違いなく実施すべきです」。

「CTスキャンが不適当または不必要なときに限って、利益はなくリスクのみということになります」とSlovis氏は付け加えた。さらに、過去10年にわたり、医療界では小児に対する不必要な医療放射線照射を削減し、可能な限り照射量を抑えた個人に合わせた画像診断を行ってきている、と同氏は述べた。

小児癌画像診断における放射線安全連合(Alliance for Radiation Safety in Pediatric Imaging)が行う大規模な研修および患者支援の取り組みである「子どもに優しい画像診断」(Image Gently)キャンペーンには現在70医療機関が参加している、と同連合の運営委員でデューク大学放射線学および小児科学教授のDr. Donald Frush氏は説明している。

画像診断に直接携わるかに関わらず、「10年前より今の方が皆、照射量の問題に気づいています」とFrush氏は話す。「われわれは、参加機関の放射線技師および研修医に対しこのことも周知徹底しはじめたところです」。

さらに、「教育に加え、CT機器や検査手順の大幅な改良で、1回のスキャンに必要な照射量が減少しています」と同氏は付け加えた。

医療専門家らは、CTが臨床上の疑問を解決する最良の検査法である場合に限り実施されるようにすること、および放射線照射を要しない他の検査の方がよい選択肢となりうる場合もあることを理解するように努めている。例えば最近、米国内科専門医財団が行っている「賢く選ぼう」(Choosing Wisely)キャンペーンで、小児における虫垂炎の診断でCTより先に超音波検査を検討するよう推奨されている、といったことがある。

「不必要なCT検査は、不当な放射線曝露です」。Frush氏はこのように述べた。

 

FDA、小児の画像診断機器に対する新指針を提案 米国食品医薬品局(FDA)は、CTスキャナーなど新しいX線画像診断装置の設計における小児に対する安全性について、メーカーに配慮を促す指針案に関しパブリックコメントを募集している。また、FDAは7月16日に産業界代表、医師、放射線技師、物理学者、患者支援者を集め指針案に関する公開討論会を開催する予定。

–Sharon Reynolds

参考記事:「画像診断による癌リスク

詳しい情報: コンピュータ断層撮影(CT):Q&A 、放射線リスクと小児CT(コンピューター断層撮影):医療従事者のための指針

 

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橋本 仁 訳
廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック) 監修
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