若年甲状腺がんサバイバーは心疾患、骨粗鬆症リスクに直面

要約には本抄録に含まれない最新データを含む

「早期診断を受けた場合、大半の若年甲状腺がん患者における治療は成功し、がん発症後も長く生存します」とASCOの専門委員で本日のプレスキャスト(インターネット生放送による記者会見)の司会であるMerry Jennifer Markham医師は語った。また、「しかし、これらのサバイバーにおいて、治療が以後の人生でどのような影響を及ぼすのかについては十分にわかっていません。本試験により、がん治療後の個別ケアの必要性、および特に心リスクなどの重点的に取り組むべき分野が強調されました」とも語った。

米国では、甲状腺がんの発症率はそれ以外のがんよりも急激な上昇を続けており、通常、大半の成人がんよりも若年齢で診断を受ける。今年、米国では、成人64,300人が甲状腺がんの診断を受けると推定される。

新たな試験により、若年甲状腺がんサバイバー(40歳未満で診断を受けた者)では、高血圧、心疾患、骨粗鬆症のリスクが高いことが明らかになった。研究者らはこの知見を、サンディエゴで近く行われる2017年がんサバイバーシップシンポジウムで発表する。

「甲状腺がんの診断を受けた患者、とくに若年で診断を受けた場合、甲状腺がんによる死亡は3%未満であり、予後と生存率は良好です。しかし、甲状腺がんサバイバーの数が増えるにつれ、より多くの人が治療に起因する深刻な症状を抱えて生きています」と筆頭著者であるBrenna Blackburn氏は語った。同氏は、公衆衛生学修士、Hashibe Lab at Huntsman Cancer Institute(HCI)の一員であり、ユタ大学の博士課程大学院生である 。また、「われわれが甲状腺がんサバイバーの健康管理に役立てるだけでなく、診断確定時点から腫瘍医がこれらの患者に行うケアの方法についての情報提供もできるようになるために、これらの長期リスクを理解することは重要です」とも語った。

Blackburn氏らは、1997~2012年の間に甲状腺がんの診断を受けたユタ州の患者3,706人から得たデータを検討し、その患者らをがんの診断を受けていない15,587人から成るマッチングさせた対照群と比較した。40歳未満で甲状腺がんの診断を受けたサバイバーは、がんのない人から成るマッチングさせた対照群よりも心臓周辺に腫脹(心膜炎、心内膜炎、および心筋炎)が発生する可能性が5倍高く、心臓弁膜症を発症する可能性は2倍以上高い。また、若年甲状腺がんサバイバーは、マッチイングさせた対照者よりも高血圧や心律動異常など、上記以外の心疾患を発症する可能性も高かった。さらに、若年患者は、対照群よりも骨粗鬆症を発症する可能性が7倍以上高かった。

また、研究者らは40歳以降に診断を受けた患者における晩期合併症のリスクも評価した。対照群と比較した場合、同様に上昇したリスクも一部あるが、40歳未満で診断を受けた患者よりもその程度は小さかったことが明らかになった。具体的には、高齢患者は、マッチングさせた対照者よりも高血圧リスクが46%上昇し、骨粗鬆症を発症する可能性が2倍以上高かったことが明らかになった。

このような晩期合併症は、通常、老化に関連している。しかし、著者らは、若年患者は手術、放射性ヨウ素治療、外照射療法、およびホルモン療法などのより積極的な治療を受ける傾向が強いためであると推定する。

「若年患者はより健康であると考えられることが多く、放射線照射およびホルモン療法などの心臓障害に関連付けられている積極的な種類の治療に対処する態勢がより整っているとみなされています。しかし、それらの積極的治療により、厄介な有害作用も後発することが認められました」とBlackburn氏は語った。

研究者らによると、本試験は、将来、甲状腺がん患者をケアする方法が得られる大きな証拠の始まりということだ。研究者らは、心臓の晩期合併症は遺伝的特徴によるものなのか、あるいは遺伝性遺伝子変異によるものなのかを検証する予定である。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の新ガイドラインでは、がんサバイバーにおける心機能障害に取り組んでおり、心臓障害をもたらす可能性のある治療を受けている患者において、医師が注意深く病歴聴取および理学的診察を実施することを推奨した。また、このガイドラインでは、早期管理を目的として、患者に心臓病専門医を紹介している。

女性では、甲状腺がんは5番目に好発するがんである。今年は、甲状腺がんによる死亡が1,980件発生すると推定されている。1

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1アメリカがん協会が発表したCancer Facts & Figures 2016の統計を採用。

翻訳担当者 三浦 恵子

監修 小宮 武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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