OncoLog11-12月号◆In Brief「NF-κBは神経膠芽腫の治療抵抗性と関連がある可能性 」

MDアンダーソン OncoLog 2013年11-12月号(Volume 58 / Numbers 11-12)

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NF-κBは神経膠芽腫の治療抵抗性と関連があるかもしれない

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が統括する国際グループの新たな研究によると、炎症関連の転写因子NF-κBとそのシグナル伝達経路は膠芽腫の悪性度および治療抵抗性の主な要因であるかもしれない。

本研究は、膠芽腫の悪性度に関するリスク因子と寄与因子を同定する進行中の取り組みの一つである。同研究グループは膠芽腫細胞の2つの異なるサブタイプを分離し、細胞培養においてより浸潤度が高く放射線抵抗性を示す間葉系サブタイプが、自発的に、悪性度が低い前神経サブタイプに変換することを示した。また、この変換は、培地にNK-κB活性化剤を添加することにより逆行することもわかった。

細胞は、悪性度が低い前神経サブタイプから悪性度が高い間葉系サブタイプに移行する可能性があることは知られていたが、これを制御するメカニズムは解明されていなかった。

放射線腫瘍科助教授で本研究報告の共同著者でもあるErik Sulman医学博士は、「浸潤および血管新生に関連のある遺伝子発現を特徴とする腫瘍細胞の間葉系サブタイプへの移行は放射線抵抗性につながる」と述べた。

本所見は11月にCancer Cell誌で発表された。

研究者が膠芽腫細胞の特徴も明らかにしようと複数の患者から同細胞を採取し培養した際に驚くべき発見があった。もともと間葉系サブタイプの細胞だった多くの細胞が培養により前神経サブタイプの細胞に変換したのである。膠芽腫細胞は生体内で低悪性度の状態に逆行することはほとんどなく、結果は予期せぬものであった。

これを踏まえ、研究チームは、この逆行について可能性あるメカニズムを検討した。NK-κBシグナル伝達活性化サイトカインである腫瘍壊死因子αで前神経サブタイプの膠芽腫細胞を処理したところ、培養された細胞は放射線抵抗性を示す間葉系サブタイプへと確実に変換された。また、この作用はNF-κBシグナル伝達を阻害することにより確実に元に戻すことができた。

本所見は、前神経サブタイプの細胞から間葉系サブタイプの細胞への典型的な移行においてNF-κBのシグナル伝達が重要な役割を果たすことを示している。Sulman医師によると、これらの結果は、炎症性反応を阻害し腫瘍細胞の標準放射線療法に対する感受性を高めることで、膠芽腫患者の予後が改善されることを示唆するものである。

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翻訳担当者 宮武洋子

監修 西川 亮 (脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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