早期の皮膚治療はVectibix® (パニツムマブ[panitumumab])の治療を受けた結腸直腸癌患者の皮膚反応を減少させる

キャンサーコンサルタンツ
2008年9月

結腸直腸癌患者において、Vectibix® 〔ベクチヴィクス〕(パニツムマブ〔panitumumab〕)での治療に先行して開始した皮膚治療は、副作用発現後の皮膚治療に比較し、付随する副作用を有意に減少させた。これらの結果は2008年6月スペインで開催された第10回世界消化器癌学会で発表された。

大腸癌は米国での癌による死因の第2位である。すでに治療を行い、病気が進行または再発した患者の標準治療後の治療選択肢は限られている。Vectibixは癌細胞表面の特定の標的に結合する新しい標的治療薬である。Vectibixは、癌の増殖や転移に関与する生物学的経路である上皮増殖因子受容体[EGFR]を標的にしている。上皮増殖因子受容体を標的にすることによりVectibixは正常細胞には副作用を与えずに癌細胞を直接破壊することが可能である。Vectibixは米国食品医薬品局[FDA]に承認され、結腸直腸癌治療に化学療法としばしば併用して使われている。

Vectibixの主要な副作用は皮膚反応である。軽症から重症までありうるこの副作用は、患者のQOLに悪影響を与えることが多い。研究者らはこれらの副作用を最小化する方法を評価しようとしていた。

米国の数箇所の施設の研究者らは、最近、STEPP (Skin Toxicity Evaluation Protocol with Panitumumab)と呼ばれる臨床試験を実施した。この臨床試験ではVectibixでの治療に付随する皮膚反応の最小化を目的とする2つの異なる治療法を比較した。この臨床試験にはCamptosar®(イリノテカン)[irinotecan]をベースとする化学療法にVectibixを加えた併用療法を受けている進行再発結腸直腸癌患者約100人近くが参加した。患者は2つのグループに分けられ、第1グループでは併用化学療法の前から6週間、先に皮膚治療が行われた。第2グループでは、併用化学療法を施行する6週のあいだで、医療提供者が皮膚への副作用に対して治療の必要性を感じたときに対症的治療が行われた。皮膚治療は、皮膚保湿剤(毎日、腹部と脚を除いた体全体に塗布)、日焼け止め(屋外に出る前に露出された皮膚部分に塗布)ステロイド外用薬(就寝前に腹部と脚を除いた体全体に塗布)、抗菌剤ドキシサイクリン[doxycycline]を用いて行われた。治療7週後で患者は皮膚治療を継続するかどうか選択できた。

・重篤な皮膚障害のあった患者は、対症的治療グループでの62%と比較して先に治療をした患者グループでは29%のみであった。

・先に行った皮膚治療はVectibixと化学療法との併用化学療法の有効性に影響しなかった。

・無増悪生存期間の中央値は先に皮膚治療を行った患者群で4.9カ月、対症的治療グループでは4.3カ月であった。

・全生存期間の中央値は両グループともに約13.5カ月であった。

・他の上皮増殖因子受容体阻害剤と同様に、KRAS変異のある患者に比較してKRAS変異のない患者の転帰は良好だった。

研究者らは結腸直腸癌患者において、皮膚反応に対しての先制的治療は、Vectibixの治療有効性に影響することなく、Vectibixに付随する皮膚反応を有意に減少すると思われる、と結論づけている。

コメント:

これらの先制的治療はVectibixの副作用を軽減すると考えられる。

参考文献:
Mitchell E, LaCouture M, Shearer H, et al. Updated Results of STEPP, a Phase 2, Open-Label Study of Pre-Emptive Versus Reactive Skin Toxicity Treatment in Metastatic Colorectal Cancer (mCRC) Patients Receiving Panitumumab + FOLFIRI or Irinotecan-Only Chemotherapy as Second-Line Treatment. 10th World Congress on Gastrointestinal Cancer. June 2008. Barcelona, Spain.

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翻訳担当者 大隅 郁子

監修 島村 義樹(薬学)

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