小児ALLの導入療法ではデキサメタゾンがプレドニゾンより有効

キャンサーコンサルタンツ
2008年9月

プレドニゾンと比べてデキサメタゾンを使用した導入療法が小児の急性リンパ芽球性白血病(ALL)の再発率を減少させることがEuropean AIEOP-BFM ALL 2000 trial に所属している研究者達により報告された。研究の詳細は、2008年12月7日にサンフランシスコで開催された米国血液学会(ASH)の年次総会で発表された。[1]

標準リスクのALL患者に対する導入療法は、現在次の3つの製剤の投与から成る:オンコビン® (ビンクリスチン)、プレドニゾンあるいはデキサメタゾン、そしてElspar®(L-アスパラギナーゼ)あるいはOncaspar ®(PEG-L-アスパラギナーゼ)。小児ALLの導入療法におけるプレドニゾンと比較したデキサメタゾンの相対効果は、これまで大規模に研究されていなかった。

本試験では、3,655人のALL患者が、導入療法にデキサメタゾンを用いるグループとプレドニゾンを用いるグループに無作為に割り付けられた。強化療法後、98.8%の患者が、完全寛解に達した。本試験の平均追跡期間は、4.4年間である。

以下の表は、本無作為試験の主な結果をまとめたものである:

表1: 小児ALLにおけるデキサメタゾンvs. プレドニゾン

*1/1デキサメタゾンプレドニゾン
6年間のイベントフリー生存率84.1%79.1%
6年間の累積再発率11%18%
骨髄のみの再発8%12%
中枢神経系の再発2%4%
寛解導入中の死亡率2%0.9%
寛解期間中の死亡率2%1.6%

非致死性の感染性の合併は、デキサメタゾン群でより多くみられた。研究者らは、デキサメタゾンが、「小児ALLの再発率を3分の1減らすことができる」と結論づけた。また、さらなる集中的な臨床モニタリングと感染に対する早期の処置がプレドニゾンに対するデキサメタゾンの優位性をより向上させると考えられる。

コメント:

これらは、興味深いデータであり、最大情報を得るために、統一されたプロトコルで多くの小児ALL患者を治療すべきであることを示している。

参考文献:

:[1] Schrappe M, Zimmermann M, Moricke A, et al. Dexamethasone in induction can eliminate one third of all relapses in childhood acute lymphoblastic leukemia (ALL): Results of an international randomized trial in 3655 patients (Trial AIEOP-BFM ALL 2000). Blood. 2008;112:9, abstract number 7.


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翻訳担当者 高杉友紀子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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