若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い

2015年6月16日

頸部リンパ節転移を有する甲状腺がん患者のうち、45歳以上の患者では死亡リスクは比較的高いが、45歳未満では当てはまらないというのが長年の見解であった。

しかし、デュークがん研究所およびデューク大学臨床研究所の研究者たちは、リンパ節に転移を有する甲状腺がん患者の場合、45歳未満であっても死亡リスクが増加することを確認した。45歳未満の若年患者における死亡リスクは低いとしてきた現今の見解および「予後を踏まえた病期分類」を覆す結果である。

今回の研究結果は2015年6月15日の週にJournal of Clinical Oncology誌で発表された。この時はまた、米国がん合同委員会が甲状腺がんを含むすべてのがん種における病期分類規準の見直しに取り組んでいる最中であった。甲状腺がんは米国において男女ともに最も急速に増加しているがんである。

「甲状腺がんの病期分類システムは非常に特異的であり、患者が45歳以上であるか、それ未満であるかによって分類パターンが2つに分かれます。病期分類システムにおいて年齢がこれほど重要な要素となるのは甲状腺がんだけです」とデューク大学外科学・内科学教授であり本研究統括著者のJulie Ann Sosa医師は述べている。

Sosa医師によると、現行のシステムの下では45歳以上の患者における甲状腺がんは4つの病期(ステージ)に分類され、ステージ1の患者の予後が最も良好、ステージ4が最も不良となる。一方45歳未満の患者では現在2つのステージしかなく、ともに、予後は総じて良好としている点に特徴をもつ。

Sosa医師らは、若年患者におけるリンパ節転移の生存に及ぼす影響が、現行の病期分類システムに的確に反映されているのかについて探究したと述べている。以前に行われた2つの研究により、45歳未満の患者ではリンパ節転移と予後とは関連していないことが示唆されたとはいえ、これら2つの研究には多くの欠点があったのである。

デューク研究者らによる今回の解析の対象は、米国National Cancer Data Base およびSEERデータベースの 2つの大規模公的データソースから得た、7万人にも及ぶ患者の転帰記録であった。

解析の結果、45歳未満の甲状腺がん患者の場合、頸部リンパ節転移を有する患者の生存率は、リンパ節転移のない患者に比べると低く、また、これらの患者における生存率低下のリスクは、45歳以上の患者の場合と同様であることが確認された。さらに、がんが転移したリンパ節の数が生存に関わってくることが判明した。転移を有するリンパ節が1つの場合、生存が脅かされるリスクは比較的小さい一方、6つ以上となるとこのリスクは明らかに増大するのである。

「ここからは疾病負担の問題となります。転移を有するリンパ節の数によって生存に差異が生じるとはいえ、限度があるのです。リンパ節6つという数が重要と思われ、6つを超えるリンパ節に転移しても、事実上、死亡リスクが6つの時以上に増加するわけではないのです」とSosa医師。さらに次のように続けた。

これらの知見は、直ちに診療の変更につながり得る重要性をもつ。すなわち、45歳未満の甲状腺がん患者における実際の予後をより適切に反映するためには、この年齢層に関する現行の病期分類システムを訂正した方が良いのではないかという疑問を本研究は投げかけているという。

さらに、切除するべきリンパ節の数が更に多くあるのか否かを判断するために、従来よりも精密な画像や生検による解析を手術前に行うよう医師たちに求められる可能性が、今回の知見により示唆されているという。

「いかなる手術もリスクを伴います。ですから、患者さんをこのリスクに曝すのは、患者さんにとって有益性が付随する場合に限りたいのです。つまり、若年の患者さんにおけるリンパ節転移が、本当にその患者さんの「生存が脅かされるリスク(の増加)」につながることが判明している場合のみ、手術範囲を広げることが妥当となり得るのです」。

本研究の著者には、Sosaの他に以下の諸氏が含まれる。Mohamed Abdelgadir Adam、John Pura、Paolo Goffredo、Michaela A. Dinan、Shelby D. Reed、Randall P. Scheri、Terry Hyslop、Sanziana A. Roman。

本研究はデュークがん研究所およびデューク大学臨床研究所から助成を受けた。

翻訳担当者 八木佐和子

監修 東 光久(腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)監修 

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