たばこの規制強化を通じた国民の健康の増進

米国国立がん研究所(NCI)/ブログ~がん研究の動向~

がん対策の歴史において、2016年5月5日は画期的な節目として永久に記録されるであろう。この日、たばこ製品に関する規制権限の対象を、葉巻、電子たばこ、およびフーカ(水パイプ)たばこを含め拡大する内容の最終規則を、米国食品医薬品局(FDA)が定めたと、米国保健福祉省長官は発表した。

紙巻きたばこ の有害性については多く研究されているが、その他の各種たばこ製品の有害性については十分に理解されていない。しかし、葉巻や無煙たばこを含む従来型のたばこ製品のすべては、依存性が非常に高く、がんを引き起こす原因となることは周知である。これらの製品のいずれについても、安全とされる喫煙量は存在しない。電子たばこに関しては、米国の青年の間で急速に普及していることが特に懸念されている。

現在、米国高校生の電子たばこの使用率は、2013年の4.5%から2014年の13.4%、人数にしておよそ66 万人から200万人へと増加しており、米国中学生の電子たばこの使用率にいたっては、2013年から2014年の1年間で1.1%から3.9%、およそ12万人から45万人へと3倍以上も増加した、と米国疾病予防管理センター(CDC)が実施した米国青少年たばこ調査(National Youth Tobacco Survey)の結果で分かった。

電子たばこ(およびその他たばこ製品)に含まれるニコチンは、依存性が非常に高いのみでなく、脳の発達においても有害になる可能性がある。さらに電子たばこの使用は、将来、青年になってからたばこを喫煙する危険因子になり得る、と最近の研究は示唆している。

より広く見渡すとたばこ使用は依然として、米国および世界中で予防可能な死因の第1位である。たばこ使用は、少なくとも20種類のがん、ならびに、心疾患、脳卒中、大動脈瘤、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫など)、糖尿病、骨粗鬆症、白内障および加齢黄斑変性、不妊など、その他の多くの健康問題の原因と関連している。米国でのたばこ使用の削減については大きな進展がみられているが、いまだ多くの課題が残されている。2014年には、18歳以上の米国成人100人当たり17人近く、すなわち約4000万人がたばこを吸っていた。現在米国では、たばこの喫煙は、受動喫煙への暴露による4万2千件近くの死亡を含め、年間48万件以上の死亡をもたらしている。

加えて、1600万人以上の米国人が喫煙が原因の何らかの疾患を抱えており、喫煙を続けると、このうち最大で半数がたばこに関連する疾患により死亡するとみられている。平均して、喫煙者は非喫煙者より10年早く死亡する。また、米国における青少年のたばこ使用は公衆衛生上の大きな問題であり続けている。

米国では毎日3,200人以上の青年が初めてのたばこを経験するが、その多くが毎日喫煙するようになる。米国青年の現在の喫煙率が減らない場合、現在18歳未満の米国の青少年のうち560万人が喫煙関連の疾患が原因で早期に死亡することが予想され得る。これは、現在存命中の17歳以下の米国青少年およそ13人に1人に相当する。

これらの理由から、NCI学術顧問委員会(Board of Scientific Advisors)のたばこ規制研究の優先順位付けのためのワーキンググループ(Tobacco Control Research Priorities Working Group)は最近、たばこ規制に関するNCIの取り組みを新たな段階に導くための、推奨事項を広範囲に提示した。

NCIは、電子たばこについていまだ多く残る疑問に答えるために、また禁煙を望む喫煙者の禁煙成功率を上げるために必要な研究の支援を行うことにより、提携関係機関の協力のもと、今回のFDAによる新たな規制措置を引き続き補完し続ける。

【画像訳】

NCI、Division of Cancer Control and Population Sciencesの Robert T. Croyle博士。

画像著作権: National Cancer Institute(アメリカ国立がん研究所)

翻訳担当者 星野恭子

監修 田中文啓 (呼吸器外科/産業医科大学)

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原文掲載日 

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