アプレミラストは免疫チェックポイント阻害薬関連の乾癬に有望だが、乾癬性関節炎への効果は限定的
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療後に発症した乾癬に対し、アプレミラストは部分的あるいは完全な効果を示すことが明らかになったが、ICI治療後の乾癬性関節炎(PsA)に対しては効果が限定的であることがわかった。対象となった患者の75%以上は、乾癬または乾癬性関節炎(PsA)、もしくは他の疾患を既往にもち、ICI開始後にそれらの疾患が再燃した可能性があった。また、全体の29%が下痢や吐き気といった副作用によりアプレミラストを中止していた。
この研究は、米国の3つの主要学術医療センターでリウマチ性免疫関連有害事象の患者レジストリを用いて行われた多施設共同観察研究であり、がんに対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を受けた後に免疫関連の適応でアプレミラストを使用した患者が対象となった。ICI開始前にアプレミラストを使用していた患者や、自己免疫疾患を既往にもつ患者も含まれた。解析対象は21人で、平均年齢は59歳、71%が男性、90%が白人であった。その内訳は、ICI乾癬にのみアプレミラストを使用した患者が10人、ICI-PsAにのみ使用した患者が3人、両方に使用した患者が8人であった。効果判定は有害事象共通用語基準(CTCAE)に基づき、グレード0への改善を完全奏効、より低いグレードへの改善を部分奏効とした。
結果として、自己免疫疾患を既往にもたない5人のうち4人が部分的改善を示したが、3人は忍容性の問題で、1人は長期的効果が得られず治療を中止した。一方、既往疾患があり免疫チェックポイント阻害薬(ICI)開始前にアプレミラストを使用していなかった患者では、乾癬群は全員が完全または部分奏効を示したのに対し、PsA群では57%にとどまった。既往疾患をもちICI開始後に再燃を経験した13人では、ICI開始から再燃までの中央値は20.4週であった。乾癬群では39.7週と遅く、PsA群では4週と早期に発症していた。最終追跡では、患者全体の38%にがんの進行または死亡が認められた。
著者らは、症例数が少なく確定的な結論は導けないが、皮膚病変に対しては関節病変よりも有効性が示唆されると述べ、「アプレミラストは免疫抑制作用がなく、免疫チェックポイント阻害薬治療に対するがんの反応を妨げないと考えられるため、ICI-PsAに対しても依然として有望な治療選択肢である」と付け加えている。
この研究は、ニューヨーク市の特別外科病院およびワイル・コーネル医科大学のNilasha Ghosh医師(理学修士)が主導した。2025年7月14日にArthritis Care & Researchオンライン版に掲載された。
研究の限界としては、症例数が少ないこと、またアプレミラストの有効性は医師が記録したCTCAEスコアの変化で評価されており、主観的要素が介在する可能性があることが挙げられる。
資金面では米国国立研究資源センターおよび臨床・トランスレーショナル科学センターの助成を受けており、著者の一部は各種研究機関や基金からの支援を受けていた。さらに、ある著者は講演料や諮問委員会での活動、特許申請を開示し、別の著者は助成金やコンサルティング料を、さらに別の著者は財団の会計係を務めていることを報告した。
- 監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
- 記事担当者 平沢沙枝
- 原文掲載日 2025/09
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