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がん早期発見のための血液検査の最終結果:検診としての使用を支持

血液検査で50種類以上のがんを、多くの場合、症状が出る前に発見 

【ESMO Annals of Oncology誌プレスリリース】

50種類以上のがんが検出可能な血液検査は、無症状の50才以上の患者などリスクの高い人々に対し、さまざまながん種のスクリーニング検査として実施するのに十分な精度であることが、ある研究の最終結果により示された。

メジャーながん専門誌であるAnnals of Oncology誌に、6月25日に掲載された論文によると、この検査は、偽陽性率が非常に低く、多くの場合で症状が出る前にがんを正確に検出できた。また、この検査は、がんが体のどこにあるかを高い精度で予測し、医師が効果的な診断検査を選択するのに役立つと考えられる。

この研究の開発と資金提供を行っているGRAIL社(米国カリフォルニア州)は、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がん、大腸がんなどの既存のスクリーニング検査を補完するため、複数のがん種の早期発見検査を、米国内で処方箋のみで提供を可能にした。この検査で検出できるがんの中には、検診が実施されていないものも多くある。たとえば、肝臓がん、膵臓がん、食道がんなどで、これらは最も死亡率の高いがんの一つであり、早期発見が大きな違いを生む可能性がある。

今回の論文の筆頭著者である、米国クリーブランドクリニック、グリックマン泌尿器腎臓研究所所長のEric Klein博士は、次のように述べている。「治療が成功する可能性が高い早期の段階でがんを発見することは、がんの負担を減らすための最も重要な機会です。今回のデータは、この複数のがん種を検出する検査を、既存の検診と併用することで、がんの発見方法、ひいては公衆衛生に大きな影響を与えることを示唆しています」と述べている。

この検査では、各患者から血液を採取し、腫瘍(およびその他の細胞)が血液中に排出するセルフリーDNA(cfDNA)と呼ばれるDNAを分析する。ゲノムシーケンスにより遺伝子発現を制御する「メチル化」と呼ばれるDNAの化学変化を検出し、この結果を用いて、機械学習(人工知能)で開発された分類法により、がんの存在を示唆する異常なメチル化パターンを検出する。さらに、この機械学習による分類法では、体内のどこにがんがあるかの予測が可能である。結果は、サンプルが検査施設に届いてから10営業日以内に得ることができる。

本日発表されたCirculating Cell-free Genome Atlas(CCGA)研究における3番目であり最後となるこのサブスタディでは、すでにがんと診断されている2,823人と、がんではない1,254人を対象に、検査の性能を調査した。50種類以上のがんのシグナルを検出した結果、がんの4つのステージ(1、2、3、4)全体で、がんが存在すると判断したケースの51.5%で正しくがんを検出することができた(感度または真陽性率)。この検査の特異度(真陰性率)は99.5%で、これはがんを誤って検出したケース(偽陽性率)がわずか0.5%であったことを意味する。

検査の感度(*正確にがんであるとの判定ができる割合)は、米国の年間がん死亡者数の3分の2を占める、あらかじめ指定された12種類のがん(肛門がん、膀胱がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、肝臓・胆管がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、リンパ腫、多発性骨髄腫などの白血病)のステージ1~3全体で、67.6%、50種類以上のがん全体では40.7%であった。

すべてのがん種で、早期である1期では16.8%、2期では40.4%、3期では77%、症状が現れることが多い最も進行した4期では90.1%と、がんのステージが上がるごとに検出率が向上した。

また、がんの種類によっても感度が異なった。食道がん、肝臓がん、膵臓がんなど検診の選択肢がない固形がんでは、検査の総合感度は、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がんなどの検診の選択肢がある固形がんの2倍で、33.7%に対して65.6%であった。また、リンパ腫や骨髄腫などの血液のがんでは、全体の感度が55.1%であった。

また、複数のがん種の早期発見検査では、88.7%のケースで、がんが体内のどの組織にあるかを正しく特定することができた。

Klein博士は次のように述べている。「血流中に多くのcfDNAを排出するがんの方が、より検出が容易であると私達は考えています。また、これらのがんは致死的となることが多いですが、先行研究では、この複数のがん種の早期発見検査が、これらのがんをより強く検出することが示されています。前立腺などのがんは、他の腫瘍に比べてDNAの排出量が少ないため、こういったがんに対しては既存の検診が依然として重要です」。

研究チームは、この検査が集団スクリーニングに使用された場合の性能を評価するために、陽性的中率(PPV)(陽性の結果が得られた人のうち、正しくがんと判定された人の割合)と陰性的中率(NPV)(陰性の結果が得られた人のうち、がんではないと正しく判定された人の割合)を推定した。その結果、がんになる可能性が最も高いとされる50〜79歳の人の陽性的中率は44.4%、陰性的中率は99.4%であった。

Klein博士は次のように結論した。「多くの死亡原因であるがんや、他の世界中のヘルスケアについての問題の早期発見のツールとして、血液サンプル中のcfDNAを検出する次世代シーケンサーの使用を支持する文献が増えてきていますが、今回のデータもそれを支持するものとなりました。さらに、簡単な採血だけで済むスクリーニング検査は、医療施設へのアクセスが悪い地域にも選択肢を提供することができます。このアプローチが公衆衛生に与える影響に期待しています」。

研究者らは、米国(STRIVE試験、PATHFINDER試験、REFLECTION試験)および英国(SUMMIT試験)で行われている大規模な前向き試験で、この検査の追加データを収集し、集団スクリーニングの実現可能性を検討し続けている。また、GRAIL社は、英国の国民保険サービスとの提携を確立し、今年後半から、対象となる約16万5,000人の患者を対象に、複数のがん種の早期発見検査の臨床的および経済的な性能を検討する。

CCGA試験の強みは、北米の142のクリニックから15,254人が参加していることで、多様な集団に結果を一般化することができる。最終部分の研究の参加者は、この検査の性能を正確に確認するため、検査の初期の開発段階には参加していなかった。この最終部分の研究の限界は以下のとおりである。生検後のがん患者から血液サンプルを採取した場合、生検前に比べて血液中のcfDNAの割合が増加する可能性がある。CCGA試験はケースコントロール研究であり、集団検診での実施がどのようなものになるか、完全には反映していない可能性がある(これはPATHFINDER試験で評価中である)。子宮頸がん、肛門がん、頭頸部がんなど、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発生するがんについては、発生組織の検出に若干の不正確さがある。

Annals of Oncology誌の編集長であり、Institut Gustave Roussy(フランス、ヴィルジュイフ)の研究部長であるファブリス・アンドレ教授は、次のように述べている。「がんの早期発見は、世界中の多くの人々の命を救うことができる、がん研究の次の先端分野です。この問題に対処する技術を開発することが最初の段階です。次の段階は、新たな治療介入方法の開発を行います。それと並行して、結果を変えるためには、人々の意識に関する大きな努力を継続する必要があります」。

翻訳平沢沙枝

監修石井一夫(公立諏訪東京理科大学 工学部 情報応用工学科)

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