2010/11/16号◆特集記事「米保健社会福祉省による米国新タバコ規制戦略についての発表」

同号原文
NCI Cancer Bulletin 2010年11月16日号(Volume 7 / Number 22)


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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
米保健社会福祉省による米国新タバコ規制戦略についての発表

米国保健社会福祉省(HHS)は先週、喫煙者の禁煙を支援し、非喫煙者が喫煙を始めることを阻止しようとする新しい包括的なタバコ規制戦略を発表した。本計画の中で最も注目度の高い内容の一つが、2012年に始まる健康に関する大胆な警告文であり、警告文はタバコのパッケージ両面の上半分と、タバコ製品の広告の20%以上を占めなければならないことになる。

「われわれは、タバコの箱を手にする全ての人がそのリスクをはっきりと理解していることを確認したいのです」と、HHS長官のKathleen Sebelius氏は、ワシントンD.C.のジョージ・ワシントン大学で開かれた記者会見で述べた。また、この会見では、米国食品医薬品局(FDA)長官のDr. Margaret A. Hamburg氏、およびHHSの医療担当次官補(Assistant Secretary for Health)のDr. Howard Koh氏による発言も注目された。

「これは、タバコに関する健康への警告とタバコ広告における、25年以上ぶりの最も重大な変化となることでしょう」と、Hamburg氏は語った。2009年に可決された『家庭の喫煙予防とタバコ規制法(The Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act)』により、FDA当局はタバコ製品の製造、営業、および流通を規制する権限が付与されたが、この新しい警告文は、その規制がいかに公衆衛生に利益をもたらすのかを示す具体例となると同氏は続けた。

他の国々においてもタバコのパッケージに同様な写実的警告ラベルの取り組みが実施されている、と米国国立癌研究所(NCI)の癌制御・人口学部門(DCCPS)タバコ規制調査課(TCRB)長を務めるDr. Cathy Backinger氏は語った。そして、最近の研究結果から、米国における新しい警告ラベルは喫煙率の引き下げに役立つことが期待されている。「データによると、喫煙の危害の本質と重大さを表記することは、喫煙者が禁煙を行う動機づけになると示されています」と、Backinger氏は述べた。

エビデンスベースの利用

これらの警告文は、Sebelius氏の語る喫煙者の禁煙を支援し、非喫煙者が喫煙を始めないよう計画された初の包括的な新戦略の一部分である。「本戦略は、4本の戦略的行動という柱の上に成り立っています」と、本計画を策定した作業グループの共同議長を務めるKoh氏は補足した。

Ending the Tobacco Epidemic: A Tobacco Control Strategic Action Plan(タバコによる流行病の終結:タバコ規制戦略的行動計画)』に記述されている目標は、小児、青年、若年成人によるタバコ使用の開始を削減し、現の喫煙者が首尾よく禁煙できるよう支援することで、今後10年間で現在の成人喫煙率を約20%から12%まで低下させるという数値目標を中心に展開している。また、本計画には非喫煙者の受動喫煙への暴露の削減、およびタバコ製品の製造、営業、流通を規制するFDAの役割を支援することも含まれる。

本計画で概説している主要な戦略的行動とは次のとおりである。国と地方におけるタバコ規制取り組みの促進、全国メディアや通信手段を介した社会規範の変化による国民の関心の増大、HHS内での模範となるタバコ規制対策の実施による指導、および科学的根拠と監視態勢の拡大による知識の向上である。

NCIの研究者らは4つすべての主要行動分野に関与し、DCCPSの理事であるDr. Robert Croyle氏は、本計画を策定した運営委員会の共同議長として米国国立衛生研究所(NIH)を代表する。「NCIのタバコ規制調査が、保健社会福祉省長官の新計画に貢献できたことを嬉しく思います」と、DCCPSの副理事であるDr. Debbie Winn氏は述べた。「タバコを吸う国民が減っていくことで、肺癌や喫煙に起因する他の疾病による死亡者が減ることでしょう」。

NCIは、本計画の活動の実施および資金提供を受けた研究基盤の設立に貢献している連邦機関の一つである。Backinger氏は、国と地方レベルのタバコ規制プログラムに長年にわたり資金を提供してきた部署に属し、本計画が実施された際に研究および調査のモニターを行う小委員会の共同議長として任務にあたる。

今がその時

「われわれは、わが国の公衆衛生の歴史において、実に前例のない時代に生きています」とKoh氏は述べ、タバコの影響がもたらしたものは流行病であると指摘する。20世紀においてタバコ関連の原因により100万人という人の命が失われた一方、「21世紀では、タバコという流行病により10億人(世界中で)の死亡者がでると推定されています」と、同氏は語った。

肺癌は米国においてまれな疾患であるべきであり、癌死亡の主因となるべきではない、とKoh氏は強調した。「なぜなら、これは全て防止できることだからです」と、同氏は続けた。「わが国はあまりにも長期間にわたり、耐え難い事実に耐え、容認できない実態を容認することを余儀なくされてきました」。

ウィスコンシン大学のタバコ研究・介入センター(Center for Tobacco Research and Intervention)の理事で、本計画を創出した多くの専門家の1人であるDr. Michael Fiore氏は、米国の公衆衛生において今こそが前例のない時代であり、進歩を遂げる機会であることに同意する理由を次のとおり述べた。

「20世紀後半において公衆衛生に関する最も重要な功績の中で、アメリカのタバコ依存症の割合が1960年代半ばでは約42%であったのが、今日では20%をわずかに超えるほどになりました」と、Fiore氏は述べた。しかし、この進歩は公平ではないと同氏は続けた。なぜなら「タバコを使用する人が低所得者、教育水準の低い人々、さらに他の精神や健康状態を患う人々のような、タバコを断つ手段に乏しい階層に集中してきているからです。例えば『メディケアおよびメディケード(貧困や高齢者のための米国の公的医療保険制度)』により保障を受けている人々を含め、このような人々に変化をもたらすための機会が今日たくさんあります」。

Fiore氏によると、連邦政府のみではこれらの機会を充分に活用することはできないという。「HHSと政府全体ができることは指導力を発揮することです」と同氏は述べた。「しかし、本計画の目的を現実にするためには、研究と民間地域との全面協力が不可欠です」。

— Addison Greenwood

詳細について米国保健社会福祉省は、戦略計画の完全版と、関連するプレスリリースおよびプレス報道をオンラインで配信している。推奨されるタバコ警告ラベルの実例は、FDAのホームページを参照のこと。

NCIでは、ファクトシート、禁煙のガイドライン、その他の手段および情報を含む、禁煙支援のための多くのリソースを有する。
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翻訳担当者 栃木 和美

監修 朝井 鈴香(獣医学・免疫学)

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原文掲載日 

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