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リスクのある小児において外科手術がまれな甲状腺癌を予防する可能性

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リスクのある小児において外科手術がまれな甲状腺癌を予防する可能性

Surgery May Prevent Rare Thyroid Cancer in At-Risk Children
(Posted: 09/28/2005)New England Journal of Medicine2005年9月15日号によると、珍しい甲状腺癌を引き起こす遺伝子変異をもちながら発症はしていない50人の子供のうち44人が、予防的甲状腺切除後5年以上無病であった。


キーワード

甲状腺癌、小児癌、甲状腺摘除術、遺伝子検査

要約
稀なタイプの甲状腺癌を引き起こす遺伝変異を持っているものの、病気の徴候が見られない50人中44人の小児で、甲状腺を摘出する予防的な手術後5年以上無病期間の状態が続いていました。リスクのあるすべての子供について複雑な処置が通常的に行われることが必要かどうかを確かめるためには、長期的な経過観察が必要です。

出典  New England Journal of Medicine, Sept. 15, 2005 (ジャーナル要約参照)

背景
甲状腺髄様癌と呼ばれる稀なタイプの小児癌は、病気が甲状腺をこえて成長したり拡がったりする前に甲状腺を摘出する手術(甲状腺摘除術)が行われる場合にのみ、完治する可能性があります。手術は複雑であり、患者は合成甲状腺ホルモンを終身的に摂取する必要があります。

1990年代初め、遺伝子の様々な変異の1つで、RETとして知られるものを継承している子供で、甲状腺髄様癌を発症することがほぼ確実であることが、研究者によって発見されました。このような子供は現在、遺伝子検査で特定することができます。ここで述べる臨床試験は、健康であるもののリスクのある子供が、予防的な甲状腺摘出術によって甲状腺髄様癌のリスクを回避する可能性があるかどうかを見出す目的で行われました。

試験
遺伝子検査プログラムは1993年に開始され、甲状腺髄様癌を発症するRETの変異の1つを遺伝していた85人の患者を最終的に特定しました。この患者のうち83人について、甲状腺を摘出する手術を行い、その後5年間継続して経過を観察しました。

手術を受けたにもかかわらず患者に癌が発症してしまったかどうかを判断するために、研究者は、甲状腺髄様癌細胞によって生成されるカルシトニンと呼ばれる物質のレベルを測定する血液検査に頼りました。高いレベルのカルシトニンは病気の徴候のひとつであると考えられます。

また研究者は、患者の別の身体的特徴についての情報を収集し、どのような患者が予防的な手術で最も効果を得る可能性があるかを予測できるものがあるかどうかを調べました。これらの例には、患者が持っている特定のRETの変異の種類、遺伝子で変異が起こっている具体的な場所、手術を受けた時点の年齢、および摘出された甲状腺の細胞、または付近のリンパ腺細胞で癌の徴候が見られたかどうかが含まれました。

このレポートでは、手術を受けた年齢が3歳から19歳までの50人の患者からの結果が提供されています。この研究の主執筆者は、ノースカロライナ州ダラムにあるデューク医科大学のMichael A. Skinner, M.D.です。

結果
50人中44人の患者-手術を受けた時点の年齢が8歳未満の患者すべてを含む-は、カルシトニンの血液検査で判断したところ、少なくとも5年経過した時点では癌を発症していませんでした。

6人の患者については、6人全員が8歳を超えていたため、年齢が要素となる可能性があるものの、手術を受けたにもかかわらず癌を発症してしまった確実な理由を割り出すことはできませんでした。6人中、手術を受けた時点で癌性のリンパ節を持っていた3人の患者のうち、2人の患者は5年以内に癌を発症しており、リンパ節の状態が大いに影響していた可能性もあります。その他の点では、研究が行われた他の要素で、結果は予測されないようでした。

制限事項
この所見は有望ではあるものの、早期に行われた甲状腺の外科切除によって遺伝性の甲状腺髄様癌を予防または完治するかどうかを確かめるために、より多くの患者において手術後長期に渡る経過観察が必要である、と本研究の執筆者は言います。

本研究のレポートでは、幼児における甲状腺摘出術の合併症の可能性については触れられていない、と国立癌研究所の小児癌専門医であるBarry Anderson, M.D., Ph.Dは言います。このような手術が関連する合併症では、神経や声帯にダメージを与えたり、カルシウムのレベルを調整する副甲状腺を損傷したり、頸部組織へ出血したりして、稀に死に至る場合があります。頸部の作りがより小さいため、子供は大人よりも手術後にこのような合併症に直面する可能性が高い、とマサチューセッツ州ボストンにあるブリガムアンドウィメンズ病院のFrancis D. Moore, M.D.およびRobert G. Dluhy, M.D.は同じ巻の論説で指摘しています。

さらに本研究は、、治療が安全で効果的かどうかを証明することが目的の”最良の判断基準”であると一般的に見なされている無作為比較試験ではありません。無作為比較試験の場合、手術を受けるまたは受けない患者は無作為に割り当てられますが、RETの変異を持っていると特定される子供は、手術を受けない場合、甲状腺髄様癌を発症するのはほぼ確実なので、一部の患者に手術を行わない試験を実行するのは不適切である、とAndersonは言います。

コメント
「この研究は、幼齢期に予防的な手術を行うと、RETの変異を持った患者で(少なくともこの試験のフォロー期間の5年間は)甲状腺髄様癌を発症するのを回避するということを実証している」とAndersonは述べています。また彼は、すべてのスタッフが高度に訓練され、幼齢期の患者にこのような手術を行った経験のある小児科専門医センターでのみ手術を行うべきである、と忠告しています。

論説委員のMooreとDluhyはこのアドバイスに同意し、行うに安全な最も早い幼児期に手術を行うべきであると追記しています。彼らはまた、患者やその家族に情報を提供したり、精神的なサポートをおこなう遺伝子カウンセラーをセンターごとに雇うことも推奨しています。

(Yucca 訳・林 正樹(血液・腫瘍科))

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