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陰茎がんの男性の多くが推奨治療を受けていない

  • 2018年5月14日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

JAMA Oncolgy3月1日版に掲載された大規模な後ろ向き研究によると、隣接するリンパ節に転移した陰茎がんの男性すべてが生存期間を改善する可能性のある推奨治療を受けているわけではない。

 

このような陰茎がん男性の約3分の1が転移したリンパ節の摘出(リンパ節切除)を受けておらず、化学療法を受けた人も半数未満であったことが国立のがん治療データベースの記録から明らかになった。広く利用されている専門家向けのガイドラインによると、リンパ節切除および化学療法ともに、リンパ節に転移しているが他部位への転移がない陰茎がんの男性に現在推奨されている治療法である。

 

「残念ながら実際に我々は期待される目標を達成していない」と研究を主導したフィラデルフィアのフォックスチェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)のShreyas Joshi医師は説明した。

 

化学療法を受けていない男性が多いという研究結果は意外ではないかもしれないと今回の研究に関与していないメイヨークリニックのLance C. Pagliaro医師はコメントした。

 

陰茎がんの男性に有効かつ忍容性のある化学療法レジメンが明らかになったのはわずか2~3年前のことであり、このような情報が研究時点では医療共同体に広く伝わっていなかった可能性があるとPagliaro医師は続けた。2012年になって初めて全米総合がん情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)から陰茎がん治療に関する最初のガイドラインが発表された。

 

しかし、臨床医師はかなり以前からリンパ節切除が生存の確率を改善することを知っていたとPagliaro医師は付け加えた。「リンパ節に転移した男性の多くが命を救う可能性のある外科手術を受けていないが、受けなくてもよいという明確な理由はない。」

 

リンパ節切除により生存期間が改善

陰茎がんは非常に希少ながんで、米国で陰茎がんと診断されている男性は毎年わずか約2,000人である。治療をしなければ急速に転移し、診断時に50歳以上である男性が大半である。陰茎がんと診断された男性の多くがその他の健康問題を抱えているとJoshi医師は説明した。診断時にがんが隣接するリンパ節に転移した男性の約60%が5年後にも生存している。

 

陰茎がん治療の最近の傾向を調査するため、Joshi医師らは2004年から2014年までに全米がんデータベース(National Cancer Database)に収集された記録を利用した。このデータベースには米国とプエルトリコの施設1,500か所以上で新たに診断されたがんの症例の約70%が記録されている。

 

この期間に陰茎がんと診断された男性11,469人のうち、1,123人のがんが局所リンパ節に転移していたが他部位への転移はなかった。

 

このうち67%がリンパ節の切除を受けた。研究期間中に化学療法の利用は増加したが、陰茎がんの男性では2014年でも依然48%しか利用していなかった。

 

概して、患者の年齢に関わらずリンパ節切除を受けると全生存期間が改善した。

 

その他の健康問題を抱えた患者に対し、陰茎切除後にリンパ節手術を受けてもらうことに医師は躊躇する場合があるとJoshi医師は説明する。

 

データを分析する際に患者の年齢や健康状態を考慮してもなお、「リンパ節切除を受けた人の全生存期間が大幅に改善されることが分かった。つまりどの患者に外科手術を受てもらうかということに関して、私たちはやや選択的でありすぎるということである」とJoshi医師は語った。「(他の病気がある)患者であってもリンパ節切除は依然有益である可能性があります。」

 

Pagliaro医師は「年齢の高さや体力の衰えに基づいて不適格な患者はほとんどおらず、当センターでは治癒目的のための積極的な治療を行わない患者はほとんどいない」と同意した。

 

化学療法により生存期間が改善することは分析で示されなかったが、研究チームとPagliaro医師はこの結果を化学療法が有効でないエビデンスとして解釈しないよう警告した。

 

化学療法により陰茎がんの男性の生存期間が改善されるということが小規模な臨床試験で示唆されており、今回の研究で生存期間に改善が見られなかった理由がいくつかある。患者が化学療法を受けた、あるいは受けなかった理由、化学療法の種類、そして化学療法を受けた時のがんのステージがデータベースには記録されていなかったとJoshi医師は説明した。

 

また2010年以前は、陰茎がんに使用されていた化学療法は現在使用されているものよりも効果がなく、「多くは極めて毒性の強いものだった」とPagliaro医師は語った。またデータベースには、転移がんの緩和治療の一環として(このような場合には生存期間の改善は期待できない)化学療法が利用されたのかどうかが記録されていなかったとJoshi医師は付け加えた。

 

臨床試験のためより多くの陰茎がん患者を募集

陰茎がんは希少なため臨床試験に募集できる患者の数に制限があり、陰茎がんの治療の進歩がその希少性により妨げられていると本研究の著者は記述している。研究対象の10年間に、年間4例以上の陰茎がんを診ている病院で治療を受けた陰茎がんの男性は3分の1未満であった。

 

Pagliaro医師は陰茎がんの専門医で、この疾患では大規模とみなされる治療センターで年間約20人の患者を診ているが、Pagliaro医師らが最近実施した術前すなわちネオアジュバント化学療法の臨床試験を実施する際に「30人の患者を募集するのに8年かかった」という。

 

陰茎がんまたはその他の希少がんについて、全国の患者すべてが数か所だけある専門の病院で治療を受けている英国のような制度であれば米国でより機能するであろうとテキサス大学のMDアンダーソンがんセンターのBarrett McCormick医師およびCurtis Pettaway医師は附属論説で記載している。

 

継続中の進行陰茎がん国際臨床試験(InPACT:International Penile Advanced Cancer Trial)では、近隣のリンパ節に転移した陰茎がん患者に対する化学療法の使用についてより決定的な答えを提供できることを願っている。本臨床試験はリンパ節切除単独、リンパ節切除とネオアジュバント化学療法の併用、リンパ節切除とネオアジュバント化学療法と放射線治療の併用の3つを比較している。InPACTはまた再発リスクの高い男性が骨盤リンパ節を追加切除することが有効かどうかを調べている。

 

陰茎がんについて答えが出ていない疑問はこれだけではないとPagliaro医師はコメントした。最新の分子標的療法や免疫療法が有効なのかを確認すると同時に、ネオアジュバント化学療法と外科手術後の化学療法(アジュバント化学療法)を比較する他の試験が必要である。

 

特に希少がんについて、一つの試験で答えが出せる以上の多くの疑問があるとPagliaro医師は締めくくった。

翻訳松長愛美

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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