ASCO泌尿生殖器がんシンポジウム2022:ダナファーバーがん研究所の発表

2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器(GU)がんシンポジウムにおいてダナファーバーがん研究所が重要な研究成果を発表する。このシンポジウムは、サンフランシスコを会場に2月17~19日にバーチャル形式および現地開催で実施される。ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムは、世界の泌尿生殖器がん治療を専門的に扱う、この分野を代表するイベントである。ダナファーバー主導による研究では、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんに関する革新的かつ学際的な専門知識の実例が示され、がん患者の生活の質、およびCOVID-19パンデミック(世界的大流行)がとりわけ泌尿生殖器がんに及ぼす影響などについて取り上げる。

以下に、ダナファーバーの専門家による発表予定の注目研究を一部挙げる。

高リスク腎細胞がん患者に対する術後ペムブロリズマブの効果が追加6カ月の追跡期間でも持続

高リスクの腎細胞がん患者について、腎摘出後の免疫療法薬ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の効果が投与開始後30カ月以上持続することが、KEYNOTE-564試験に基づく最新結果から明らかになった。ダナファーバーのToni K. Choueiri医師が率いる研究では、1年間にわたりペムブロリズマブを投与した腎細胞がん患者は、30カ月時点の生存率および無再発率がプラセボを投与した患者よりも有意に高かったことが確認された。また、この時点で新たな安全性シグナル(安全性に関する警告)も検出されなかった。この結果は、再発リスクの高い腎細胞がん患者994人をペムブロリズマブ群とプラセボ群に半数ずつ割り付けて実施した過去の試験結果を、今回新たに6カ月の追跡期間を経て更新したものである。

演題:腎細胞がんに対する腎摘除後のペムブロリズマブ補助療法:KEYNOTE-564試験、追跡30カ月間の結果(アブストラクト:290)
概要動画:腎臓がん研究:術後の免疫療法 | ダナファーバーがん研究所

米国北東部の大規模医療センターにて、パンデミック初期に減少した泌尿生殖器がんの検診、新規診断、治療件数が大幅回復

COVID-19パンデミックの発生当初、米国北東部最大の医療センターでは一般的な泌尿生殖器がんに対する検診、新規診断、治療件数が急激な落ち込みをみせたが、その後いずれも2021年初頭までに大幅に回復したことが、ダナファーバーの研究からわかった。Chris Labaki医師、Quoc-Dien Trinh医師、Toni K. Choueiri医師らによると、パンデミックの第1波が到来した2020年3月から6月にかけて前立腺がん、尿路上皮がん(膀胱などの尿路系を覆う粘膜に生じるがん)、腎細胞がん(腎臓がん)の検診、新規診断、治療件数が、パンデミック以前と比べ15.7~64.8%減少した。こうした検診、診断、治療におけるモダリティ(技術・手法)の使用率は、その後2020年12月~2021年3月までに、ほぼ通常または通常以上のレベルにまで次第に増加した。パンデミック発生当初は、それまでの12カ月間と比較して725件の診断が「見逃された」ものの、2020年6月~2021年3月には971件「回復」した。

演題:COVID-19パンデミック期間中の泌尿生殖器(GU)がんの検診、新規診断、外科的治療件数における経時的推移(アブストラクト:281)
概要動画:COVID-19と泌尿生殖器がん:パンデミックの影響 | ダナファーバーがん研究所

米国・英国・ドイツ間にみる前立腺がんの検診および治療法の違い

米国、英国、ドイツで治療を受けた前立腺がん患者約16,000人を対象に行った調査で、検診および治療のいずれのパターンも国によって注目すべき違いがあることが明らかになった。米国およびドイツでは、健診にて非転移性前立腺がんと診断された人の割合が回答者の77%を占めるのに対し、英国では42%であった。治療方法にも違いがみられた。英国では前立腺全摘術よりも放射線療法の施行率がわずかに高く、米国およびドイツに比べ、監視療法がより頻繁に実施されている。3カ国ともに共通しているのは、患者が受けた治療に概ね満足していることだと、本研究の主導者の一人であるダナファーバーのAlicia K. Morgans医師・公衆衛生学修士は話す。

演題:3カ国間における患者の傾向およびペイシェントジャーニー(患者がたどる疾患の認識から治療後の生活に至るまでの道のり)の把握―前立腺がん患者に対する完全デジタル化大規模調査の結果(アブストラクト:16)
概要動画:前立腺がん研究:地理的背景にみるペイシェントジャーニー | ダナファーバーがん研究所

翻訳担当者 伊藤美奈子

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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