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たばこに関する世界的な経済負担-Mark Parascandola氏へのインタビュー

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たばこに関する世界的な経済負担-Mark Parascandola氏へのインタビュー

NCI(米国国立がん研究所)ブログ~がん研究の動向~

NCIは、たばこの使用とたばこ規制に関する研究シリーズ の最新版である、「たばことたばこ規制に関する経済的側面」を最近公表した。この新たなレポートは、世界保健機構と共同で作成しており、世界中の多くの国々で、たばこ規制の経済的側面を取り巻く最近の研究を検証している。

 

本インタビューでは、NCIのタバコ 規制研究部門(Tobacco Control. Research Branch)のMark Parascandola氏(博士)がこの知見について論じる。

 

たばこ規制に関するこの研究シリーズで、本レポートは他のレポートとどう違うのでしょうか。

 

NCIの「たばこ規制」研究シリーズは、喫煙規制およびたばこの使用規制における新たな公衆衛生上の問題に関し、現在進行中でタイムリーな情報の提供を目的としています。本研究は、シリーズの中で初めて、経済的な観点から見たたばこ規制にのみに焦点を合わせました。さらに、われわれのこれまでの研究シリーズには、主に米国から得たデータと経験に焦点を合わせているものもあるのですが、本レポートは世界保健機構(WHO)と共同で作成しており、世界的な観点を取っています。

 

さまざまな方法で、タバコ規制に経済学手法を適用することができます。たとえば、研究者は、税金と価格がタバコの使用へ及ぼす影響を評価、たばこの使用に関する経済的コストを測定、タバコ製品の製造と取引を特徴づけ、情報政策とタバコ規制政策によりたばこ製品に対する消費者需要に影響を与える方法について考察することができます。

 

世界中でのたばこの使用に関する経済コストとは何でしょうか。

 

このレポートでは、たばこの使用により、医療費と生産性の喪失において、1年あたり1兆ドル超の経済負担がかかっていることが明らかになりました。喫煙者は早期に死亡するだけでなく、消耗性疾患に罹患する可能性が高くなります。この消耗性疾患のために家族や家族以外の介護者に負担をかけるだけでなく、働けなくなる可能性があります。また、貧困世帯では、タバコの使用により、医療費が増大する一方所得は低減し、生産性が低下する中で限られた家計資産を基本的ニーズに充てられないことにより、貧困を増悪させる可能性があることも明らかになりました。

 

たばこ農家の収入低減など、タバコの使用の低減により何かマイナスの経済効果があるでしょうか。

 

このレポートでは、総合すると、たばこ規制は経済に害を及ぼさないことが明らかになりました。大半の国では、主として技術革新のために、たばこに依存している職場はすで減少の一途をたどっています。したがって、大半の国では、現在、タバコ規制手段は雇用にわずかな影響しか及ぼしません。さらに、現在、禁煙政策がバーやレストランなどのホスピタリティ産業に悪影響を与えないことを示す大きな証拠が多くの国から得られています。

 

世界で多くの喫煙者が住む地域はどこでしょうか

 

全世界で、15歳以上の喫煙者は11億人いると推定されており、その80%は低・中所得国に住んでいます。人口が多く、喫煙率が高いために、中国は世界のたばこ消費量の40%を占めています。しかし、ロシア、米国、およびインドネシアも、どちらかと言えばタバコの消費大国です。

 

過去10年間に、タバコの使用は世界的に低減しましたか。

 

本レポートの主な結論の1つに、たばこの世界的な流行に対する規制において進歩が続いているという見解があります。米国などの高所得国では、何十年にもわたりこの進歩が続いています。しかし、近年、WHOのたばこ規制枠組み条約(Framework Convention on Tobacco Control)に従って、多くの低・中所得国も効果的なタバコ規制手段を実施しています。

 

たばこの使用とそれによる有害な影響を低減させる有効な介入法で、現在利用出来るものはありますか。

 

はい。世界中で行われている研究では、たばこの使用を低減させるために、エビデンスに基づいた介入法が有効であることが示されています。その介入法には、大幅なたばこ税の増税とたばこ価格の値上げ、たばこ産業のマーケティングに関する包括的禁止、健康被害を画像で警告する派手なラベル、禁煙政策、および禁煙プログラムなどがあります。さらに、研究では、これらの介入法は極めて費用効果が高いことが示されています。

 

しかし、これらの介入法は依然として十分に活用されていません。2013~2014年に、世界のたばこ消費税により2.69兆ドル近い政府収入が得られましたが、同期間に、政府がたばこ規制に使用したのは10億ドル未満です。

 

本レポートに低・中所得国のデータを組み入れたことで分かったことは何ですか。

 

このレポートの大きな成果の1つは、高所得国から得たデータに加えて、低・中所得国から得た最近のデータを解析したことです。興味深いことに、たばこ製品に対する増税など、特定のたばこ規制手段は、低・中所得国でも高所得国とほぼ同じ効果が得られることが明らかになりました。

 

どの分野の研究を新たにおこなう必要があるでしょうか。

 

たばこの使用を低減させるのに効果的な介入法はあるものの、とりわけ、低・中所得国でのたばこ規制に関する経済的側面をさらに理解するための研究を続けることが必要です。主な優先事項には、たばこに対する課税と価格設定の影響、たばこの使用と貧困との間の相互関係、不法取引、タバコ栽培と製造に変わる経済的に実行可能な選択肢、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control)の実施と評価などに関する研究があります。

 

このレポートで覚えてほしいことはありますか。

 

何よりも本研究で要約されているように、エビデンスに基づくたばこ規制の介入法は、公衆衛生だけでなく経済的な観点からも理にかなっていることを確認したことです。この所見は、たばこ規制が経済に悪影響を及ぼすという懸念を支持しません。たばこの使用による健康上・経済上の大きな転帰、およびタバコの世界市場が急激に変化していることを考慮すると、これまで以上に急いでこれらの介入を行う必要があります。

 

(写真キャプション)

世界中で、2,500万人の若者が喫煙しており、少女の喫煙率が少年の喫煙率に急速に追い付きつつある。#NoTobacco

Mark Parascandola氏[博士、公衆衛生学修士(M.P.H.)]、NCIがん制御・人口学部門・タバコ規制研究プログラム(Tobacco Control Research Program NCI Division of Cancer Control and Population Sciences)
 

原文掲載日

翻訳三浦恵子

監修後藤悌 (呼吸器内科/国立がん研究センター)

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