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遺伝子組換T細胞が血液腫瘍の治療に奏効―2つの新たな臨床試験結果

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日:2013年12月9日

 

今月開催された米国血液学会(ASH)年次総会で、James Kochenderfer医師(NCI試験的移植・免疫部門 研究員)は血液腫瘍の治療における遺伝子組換T細胞の使用評価を目的とした2つの臨床試験の結果を報告した。これらの研究は、NCI外科部門長であるSteven A. Rosenberg医学博士との緊密な連携のもと実施された。(Rosenberg氏は最初の臨床研究で主任研究者を務めている。)これらの研究報告は、進行した血液腫瘍に対する遺伝子治療の理解に重要な進展をもたらすものである。最初の研究(化学療法不応びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する有効な治療-抗CD19キメラ抗原受容体を発現するよう遺伝子組換を行った自己T細胞による治療[#62867])では、15人の成人患者より自己T細胞を採取し化学療法を行った後、遺伝子組換え後の自己T細胞を投与した。リンパ腫における同種の治療の成功例は、2010年のKochenderferとRosenbergによる報告が最初である。これは治療後42カ月以上進行が見られなかった1人の患者に関する報告であった。今回同チームは、最も患者数が多い非ホジキンリンパ腫であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で同じ方法が有効であることを示した。臨床試験に参加した患者のうち、完全寛解を達成したのは6人、部分的寛解は6人であった。この方法は、その他の造血幹細胞移植が適さないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者の治療選択となり得る。CD19キメラ抗原受容体技術は、共同研究開発契約のもとカイト・ファーマ(Kite Pharma Inc.)とNCI外科部門が開発している。

 

2つ目の研究(T細胞を発現するドナー由来の抗CD19キメラ抗原受容体により、同種造血幹細胞移植不応の腫瘍が退縮[#59886])では、ドナーからの幹細胞移植では十分な効果が得られなかった白血病やリンパ腫のようなB細胞腫瘍の治療に遺伝子組換T細胞が用いられた。この研究では、血縁者または非血縁者から採取した遺伝子組換T細胞注射1回以外は、治療を行わなかった患者10人が登録された。この10人のうち3人では顕著な病状の軽減が見られ、そのうち1人は完全寛解に至った。いずれの患者にも移植片対宿主病(GVHD)が生じなかったことは特に重要な点である。毒性は軽度であり、2週間以内に消失した。少量の遺伝子組換T細胞で、GVHDを起こすことなく治療抵抗性の高いB細胞腫瘍の退縮が可能であることを示したという点で、この研究結果は有望といえる。今回の発見は、前述の腫瘍の進行期でドナーからの幹細胞移植等、他の治療が奏功しない患者にとって遺伝子組換T細胞が新たな治療選択となりうる可能性を示唆している。

 

原文

翻訳 遠藤豊子

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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