口腔癌の治療期間中に行う嚥下訓練および経口摂取の重要性

キャンサーコンサルタンツ

JAMA Otolaryngology Head and Neck Surgery誌において、経口摂取・嚥下訓練を行う口腔癌患者は、より快適な食生活を長期間継続することが可能であるとの研究結果が発表された。

口腔咽頭癌は、頭頚部癌の一種である。中咽頭は軟口蓋や舌根、扁桃を含む咽頭の一部である。中咽頭癌は、しばしば口腔癌とも呼ばれる。一般的な咽頭癌治療は放射線療法、あるいは化学療法と放射線療法の併用療法で行うが、これらの治療を受けたことで嚥下障害や嚥下困難をきたすことがある。重症例では、嚥下障害が食餌制限や栄養失調をきたし、長期経管栄養が必要になることがある。

ある研究者らは、嚥下障害への対処方法は、積極的な嚥下訓練が最も有効であると推測している。口腔筋は使わなければ失われてしまうが、嚥下訓練によって口腔筋の衰弱を防ぐことが可能という見解である。

研究者らは、放射線療法または化学療法を受けた中咽頭癌患者497人を対象に、嚥下訓練および継続した経口摂取による効果を評価した。その結果、治療中に経口摂取を継続し、嚥下訓練を厳守した患者は、治療完了後により理想的な食生活を長期間継続可能であった。全体で366人(74%)が治療中に経口摂取を継続した(うち167人(34%)が一部経口摂取を継続、199人(40%)が完全経口摂取を継続)。

言語聴覚士に相談した患者388人のうち286人(または患者数全体の58%)は、嚥下訓練を厳守したと報告。治療完了後、患者の81%が常食を再開した。追跡期間中央値22カ月間で、治療中に完全経口摂取の継続または嚥下訓練のいずれか、あるいは両方を実施した患者では有意に常食を摂取可能であった。

・経口摂取・嚥下訓練ともに実施しなかった患者の65%が、治療後に常食を摂取可能であった。
・一部経口摂取および嚥下訓練の一部を実施した患者の77%から84%が、治療後に常食を摂取可能であった。
・完全経口摂取および嚥下訓練を実施した患者の92%が、治療後に常食を摂取可能であった。

研究者らは、経口摂取・嚥下訓練ともに口腔癌治療後の長期間の理想的な食生活と正の関連を示すと結論づけた。経口摂取もしくは嚥下訓練を実施した患者は、いずれも行わなかった患者と比較してより好結果を得た。さらに、経口摂取・嚥下訓練の両方を実施した患者は最も高い率で常食に戻り、経管栄養への依存期間は最も短かった。

参考文献:
Hutcheson KA, Bhayani MK, Beadle BM, et al. Eat and exercise during radiotherapy or chemoradiotherapy for pharyngeal cancers: Use it or lose it. JAMA Otolaryngology Head and Neck Surgery. Published online September 19, 2013. doi:10.1001/jamaoto.2013.4715.


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翻訳担当者 並木 恵

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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