2012/11/27号◆”科学的根拠に基づくがん検診”特別号-4「大量のデータからがん検診の現実での有益性をモデル化」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/11/27号◆”科学的根拠に基づくがん検診”特別号-4「大量のデータからがん検診の現実での有益性をモデル化」

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2012/11/27号◆”科学的根拠に基づくがん検診”特別号-4「大量のデータからがん検診の現実での有益性をモデル化」

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NCI Cancer Bulletin2012年11月27日号(Volume 9 / Number 23)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 大量のデータからがん検診の現実での有益性をモデル化 ◇◆◇

がん検診が救命手段となるかどうかを決める最良の方法として、ランダム化臨床試験が広く認められている。しかし、試験結果から特定の検診方法が明らかに有益であることが示されても、その結果は一般への推奨には容易につながらない。検診に関する臨床試験の結果は一部の人々に当てはまるにすぎず、その所見は試験期間が長くなるにつれて変わることがある。したがって一般には適用できない、ということである 。

たとえば、全米肺検診臨床試験(NLST)では、現在も重度喫煙者または以前に重度喫煙者であった人を対象に低線量スパイラルCTによる検診を年1回、3年実施すれば、肺癌死のリスクを減少できることが示された。しかし、NLSTに登録したのは、喫煙歴30箱年(1箱/日を30年間)および禁煙して15年未満の55〜74歳のみであった。

「同じような検診内容がこれより若年または高齢の喫煙者にも有効なのか。軽度喫煙者にも同等に有益なのか。そして、検診をいつ始めていつ止めればいいのか」、とNCIの癌介入・調査モデルネットワーク(CISNET)の研究コーディネーターDr. Eric “Rocky” Feuer氏が問いかける。このような質問は、ほぼ間違いなく患者や医師たちからも聞かれるだろう。

CISNETの5つの研究班は、いくつか異なる癌に関してこの種の疑問に答えるためにモデリングを利用している。検診の臨床試験の結果を用いて、一般に対する検診の実益を予測し、医療システム内で検診を実施するための最適な方法を特定しようというのである。

この研究班のきわめて複雑なコンピュータープログラムは、すでにいくつかの癌(乳癌や大腸癌など)に利用されており、この10年ほど常に改良されてきた。プログラムには多種多様な情報が盛り込まれており、臨床試験のデータだけでなく、観察データ、疫学データおよび各癌種の自然経過に関する情報もある。

CISNETに与えられたそもそもの使命の一つとして、この数十年に観察された数種の癌による死亡の減少に検診が果たした役割を引き出すことがあった。2005年、New England Journal of Medicine誌に発表された画期的な論文では、CISNETの研究者らが、1989~2000年に観察された乳癌死亡率の減少24%のうち半分がマンモグラフィ検診に起因する可能性が高いことを明らかにした。

CISNET研究班はそこから、検診ガイドラインに盛り込まれるデータの提供に移行した とFeuer氏は言う。2008年、米国予防医療作業部会(USPSTF)が、大腸癌検診に関する勧告の改訂を裏づけるエビデンスの一部にCISNETモデル研究を用いた。2009年にはUSPSTFの乳癌検診に関する勧告におけるマンモグラフィの推奨の改訂で、同じようなモデル研究が用いられた。CISNET研究班は現在、肺癌、前立腺癌および食道癌の検診の臨床試験から生まれる疑問のいくつかを解決するための支援にあたっている。

一般の経験則に合わせて

CISNET肺癌研究班の主な目標に「NLSTの結果を臨床に統合させる」ことがある、とマサチューセッツ総合病院のDr. Pamela McMahon氏が話す。McMahon氏は、同病院のほか5大学からの研究者らが構成する肺癌研究班の主任研究員である。「われわれはNLSTの限られた内容から推定しなければなりません。この臨床試験は一般人口集団には当てはまらないものですから」(「肺癌検診の画期的試験(NLST)とその後の問題点」を参照)

「考えられる限りの変更できる項目を検討しています。検診開始までの年齢、検診中止までの年齢、喫煙は何箱年か、禁煙から何年経過したか、検診を受ける頻度は」とMcMahon氏は語る。

研究班は、NLSTに登録した全患者の各個人データにアクセスが許されているほか、NCIが助成している前立腺癌、肺癌、大腸癌および卵巣癌検診試験(PLCO)の各患者データにアクセスできることによって助けられている。

結果が揃えば、CISNETの大腸癌研究班が作成した死亡率予測ツールと同じように、それを使って対話型の予測ツールを作りたいと考えている。このツールによって、検診対策者たちには、それぞれの地域で異なる肺癌検診プログラムを実施することによって肺癌の死亡率がいかに変化するのかがわかる。

2つの巨大な試験と2つの異なる結果

CISNET前立腺癌研究班の3つの研究グループは、同じく意欲的であるが全く異なる問題に取り組んでいる。前立腺癌検診の大規模試験2件(米国と欧州各1件)によって、検診が前立腺癌の死亡率にどの程度の影響を及ぼすのかに関する長期データが得られたものの、両試験の結果は異なっていた。

ヨーロッパにおける前立腺癌検診に関するランダム化試験(ERSPC)では、検診を受けた男性の方が未検診の男性よりも前立腺癌で死亡する可能性は少なかった。PLCO試験ではそうではなかった。検診を受けた男性では、未検診の男性よりも前立腺癌で死亡するリスクが低くならなかった。両試験は異なる形で実施されており、それぞれに限界があった。PLCO試験の対照群に(「混入」として扱われた)計画外の検診が多数実施されており、ERSPCには癌の標準治療が設定されていなかった。

「われわれが答えを得ようとしている問題は、両試験の結果と一致する一連の検診の成果があるかどうかである」とCISNET前立腺癌研究班の主任研究員であるフレッド・ハッチンソンがん研究センターのDr. Ruth Etzioni氏が語った。CISNET研究班は、両試験の研究者らから許可を得て、各患者の個人レベルに及ぶ全データを入手することができるようになり、検診によって前立腺癌による死亡を減らせるかどうかを解明しようとしている。

CISNET研究班は前立腺癌の自然経過のモデル化に数年を費やした。Etzioni氏は、「人がいつ発癌するのかはわかりませんが、対象集団で癌がどのように診断されるのか、何歳で診断を受けるのか、どの病期であると診断されるのかを知ることができます。そのいずれも、表面より少し深いところで何が起こっているのかを教えてくれるものです」と説明した。

前立腺モデルグループは、前立腺癌の自然経過に関する知識と米国の男性の健康全般および生活歴を用いて、「その生活歴と病歴のほかにERSPCとPLCOで何が起こったのかを『再現』しようとしています」と同氏は詳細を語った。「この2件の試験を再現すれば、真に有益性があるのかどうかがわかるはずであり、そこに両試験で観察されたものに不完全ながら近い何かが得られます」。

研究班はまた、迅速な治療に比較して治療を延期することによって前立腺癌検診の利益・不利益比がどの程度変わるのか、また、癌転移などの死亡率以外のエンドポイントを改善することで前立腺癌検診の利益・不利益比がどのように変わるのかを検討し始めている。(「前立腺癌におけるPSA検診の利益と不利益」を参照)

対象者限定検診のモデル化

CISNETは当初10年間、米国で最多の癌4種、乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌に集中していた。2010年には、それほど多くない食道癌を加えることになった。食道癌には別の課題がある。食道癌の周知のリスク因子をかかえる集団でどのように癌の検診を実施するのかを決めることである。

「食道癌は集団検診をするほど多くはないが、個人のリスクに基づいて対象者を限定して(医師が)検診しています」と食道癌研究班の主任研究員であるマサチューセッツ総合病院のDr. Chin Hur氏が説明した。

「CISNETの研究に頻度の低い癌を選んだのは、比較的数の少ない食道癌を見つけるための過程が、信じられないほど非効率的なためです」とFeuer氏が話した。胃食道逆流症やその関連疾患であるバレット食道は食道癌のリスク因子として知られているが、どちらを罹患していても比較的少数が食道癌を発症するにすぎない。

しかし、このような疾患のある患者のうち、食道癌を最も発症しやすく、そのため対象者限定検診から恩恵を受けるであろう患者を特定する方法がまだわかっていない。「改善できる可能性がきわめて高い」とFeuer氏は言う。CISNET研究班の目標は「食道癌の罹患率と死亡率を減少させるために、対費用効果の高い戦略を生み出す」ことであるとHur氏が加えた。

食道癌研究班は、現存の臨床試験データを用いてモデル3種を開発中であり、癌を分子レベルで研究するモデル作成者らと共同研究している。このいわゆる「マルチスケールモデリング」によって、研究班が作成したモデルに食道癌の自然経過をさらに正確に組み込むことができる。モデルが完成したら、研究者らはそのモデルを使って、バレット食道患者の内視鏡モニタリングとラジオ波焼灼療法の臨床試験だけでなく、食道癌の進行を予防するための各種新しい戦略の試験を、仮想的に「再実行」して解析する。

バレット食道の内視鏡検診とラジオ波焼灼療法は多数の小規模な臨床試験で検証されてきたが、そのような試験は、乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌の大規模な検診試験の患者数にはほど遠い参加数であり、このため統計的検出力および一般への適用性もほど遠い。

これはモデル作成者にとっても食道癌の研究コミュニティ一般にとっても矛盾を呈するものである。「臨床試験データが少なければ、予測の不確実性が高くなります。それと同時に、臨床での意思決定および方針に使えるデータが少ないため、われわれの成果がさらに重要になります。とすなわち、(モデリングに)不確実性が高いが、その需要も高いということになるのです。」とHur氏はまとめた。

同氏はまた、「われわれはモデリングの限界について隠すことなくきわめて率直になる必要があり、その限界を限りなく追求し、われわれの解析が導く結論を慎重に扱う必要があります」と述べ、「しかし、(モデリングは)誰かが妥当な推測をするよりはよっぽどいい。それは、分野の専門家たちが真摯に評価しながら複数のモデリンググループが協力しあい、そこにあるエビデンスを抽出しようとする系統的な方法」と話した。

— Sharon Reynolds

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ギボンズ京子 訳
斎藤 博 (消化器内科・検診/国立がんセンター がん予防・検診研究センター) 監修
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