甲状腺癌に低線量放射性ヨウ素が有効

キャンサーコンサルタンツ

New England Journal of Medicine誌に掲載された2つの別個の研究結果によると、低線量放射性ヨウ素は甲状腺癌の治療において高線量のものと同様に効果的である。それらの研究結果は、放射線量を現在のレベルの3分の1に減らせる可能性があることを意味している。

甲状腺は、主に体内の代謝過程に関係するホルモンを生成する喉頭部に位置する腺臓である。全体的に、甲状腺癌は治癒の可能性の高い癌であると考えられており、診断後、少なくとも5年間に97%が生存している。高分化型甲状腺癌に対する標準治療は、甲状腺の外科的切除である。手術後、放射性ヨウ素による追加治療を行うことで恩恵を受けるものもいる。放射性ヨウ素は残りの健全な甲状腺組織と同様に、残っている癌細胞も破壊する。

手術の進歩により、より多くの甲状腺組織が取り除かれ、放射線ヨウ素で治療される残りの癌細胞が少なくなっている可能性がある。すなわち、より低線量の治療でも同様に効果的である可能性が出てくる。このことは重要である。なぜなら高線量の放射線は、二次癌などの長期的な合併症を含めて、余分なリスクをもたらすからだ。何より、低線量放射線で治療される患者は、外来で治療できるし、副作用もより少なくてすむ。

HiLo試験では、イギリス全土の29病院の患者438人が対象となり、低線量または高線量の放射性ヨウ素治療を受けるように無作為に割り付けられ、放射線治療前に、甲状腺刺激ホルモンアルファを併用するか、または甲状腺ホルモンを休薬するかのいずれかとそれぞれ併用された。[1] 結果は、単回経口カプセルではるかに低い放射性ヨウ素を受けた患者らが、高線量を受けた患者らと同様の治療結果であり、かつはるかに低い副作用の発生率であった。成功率は、高線量の放射性ヨウ素を投与した群では88.9%だったのに対し、低線量を投与した群では85.0%、甲状腺ホルモン休薬群で86.7%に対し、甲状腺刺激ホルモンアルファ群では87.1%であった。研究者らは、低線量の放射性ヨウ素が等しく効果的であったこと、そのことによって、甲状腺癌の治療へのアプローチが、より安全で、その後の人生での二次癌のリスクを軽減するように変更されるだろうと結論づけた。

別の無作為化第3相試験では、2つの甲状腺刺激法(甲状腺ホルモンの休薬と組換えヒト甲状腺刺激ホルモンの使用)と、2×2のデザインでの2つの放射性ヨウ素(131I)の用量が比較された。[2] 試験は、2007年から2010年の間に登録された患者684人が対象となった。成功率は、2つの放射線の線量と2つの甲状腺刺激ホルモンの刺激方法間で類似しており、研究者らは、ヒト甲状腺刺激ホルモンと低線量の放射性ヨウ素の使用が低リスク甲状腺癌を管理するために十分だろうと結論づけることになった。

これらの研究結果は2つとも、標準的な甲状腺治療を変えうるものであり、結果としてほとんどの患者に対して低線量の放射線治療を行うことになるであろう。

参考文献:
[1] Mallick U, Harmer C, Yap B, et al: Ablation with low-dose radioiodine and thyrotropin alfa in thyroid cancer. New England Journal of Medicine. 2012; 366: 1674-1685.
[2] Schlumberger M, Catargi B, Borget I, et al: Strategies of radioiodine ablation in patients with low-risk thyroid cancer. New England Journal of Medicine. 2012; 366: 1663-1673.


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翻訳担当者 伊藤実花

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院)

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