デノスマブは骨巨細胞腫に有効である

キャンサーコンサルタンツ
2010年2月

デノスマブはほとんどの骨巨細胞腫患者で奏効を示すことが、国際第2相臨床試験に参加する研究者らにより報告された。本試験の詳細は、2010年2月10日付Lancet Oncology誌のオンライン版にて発表された[1]。この結果は先に、昨年6月1日フロリダ州オーランドにて行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、予備結果として発表されている。

デノスマブは、RANKリガンドとして知られるタンパク質を標的とする、臨床試験中の薬剤である。このタンパク質は、破骨細胞の活性を調節する。骨粗鬆症、治療による骨量減少症、関節リウマチ、乳癌や前立腺癌に起因する骨転移、多発性骨髄腫などの疾患を対象に、デノスマブの試験が進行中である。乳癌および前立腺癌患者に投与するためには、米国食品医薬品局(FDA)への申請が現在承認待ちの段階である。

骨巨細胞腫は、比較的まれな溶骨性骨腫瘍である。ほとんどの患者では他の部位に転移することはないが、治療効果が薄いと骨が広範囲に局所破壊される原因となる。腫瘍はRANKリガンドを発現する細胞に富んでいることから、骨巨細胞腫の治療にデノスマブが奏効する可能性が考えられる。

骨巨細胞腫患者でのデノスマブ効果を評価するため、再発もしくは切除不能の巨細胞腫患者37人を対象に、オープン第2相臨床試験を行った。全患者にデノスマブを治療開始月の第8日と第15日に負荷用量を投与して、毎月皮下投与した。

対象の主要評価は腫瘍での奏効とし、少なくとも巨細胞の90%が消失しているか、もしくは第25週まで腫瘍の進行を示す画像所見が認められないことと定義した。腫瘍での奏効は、試験の第25週に評価した。対象の37人のうち、奏効の評価が可能であった患者は35人であった。

  • 患者の86%(20人の組織学的評価のうち20人、15人の画像評価のうち10人)に、腫瘍での奏効エビデンスが認められた。
  • 患者の84%に疼痛の減少、または機能の改善が報告された。

全患者の89%に副作用の報告があった。主な副作用は、四肢、背部、頭部いずれかの疼痛であった。1人のみにグレード3〜5の有害事象があり、これはヒト絨毛性ゴナドトロピン濃度の上昇であった。

コメント:本試験から、骨巨細胞腫患者にデノスマブを投与すると腫瘍に対する高い奏効率が得られることが示唆された。著者らは、骨巨細胞腫の治療のために、デノスマブのさらなる試験を実施することは意義があると結論している。

参考文献:
[1] Thomas D, Henshaw R, Skubitz K, et al. Denosumab in patients with giant-cell tumour of bone: an open-label, phase 2 study. Lancet Oncology [early online publication]. February 10, 2010.


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翻訳担当者 山下 裕子

監修 辻村 信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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