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2007/02/20号◆特集記事「1p36欠損と癌の関連性が明らかになる」

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2007/02/20号◆特集記事「1p36欠損と癌の関連性が明らかになる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年02月20日号(Volume 4 / Number 8)
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特集記事

1p36欠損と癌の関連性が明らかになる

コールド・スプリング・ハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory)とスタンフォード大学の科学者チームは、ヒト染色体の1p36領域に位置するクロマチン再構築タンパク(CHD)ファミリーのメンバーであるChd5の腫瘍抑制機能を発見した。この結果はCell誌2月9日号に掲載されている。

1p36の変異は、神経系腫瘍、メラノーマ、血液腫瘍、甲状腺上皮性腫瘍、子宮頸癌、大腸癌、乳癌などの多くの疾患に共通している。通常、これらの変異は欠損であり、この失われた連鎖による腫瘍抑制について広範な調査が行われている。

この関連性を見つけることが究極のゴールであると、筆頭著者であるコールド・スプリング・ハーバー研究所のDr. Alea A. Mills氏は述べる。「リスクはありました。たとえば、もし、ハプロ不全(注:一対の相同染色体の一方の遺伝子の不活性化で起こる表現型の変異である)の遺伝子に当たった場合、われわれはこれらのモデルでは癌の研究はできなかったでしょう。しかし、そのプロセスの中で、他に興味深い遺伝子を発見したかも知れません。この種の染色体工学プロジェクトを完了まで見届けるのは大変な作業でした。」と、彼女は語った。

Dr.Mills氏のチームは、ES細胞を用いて,欠損、または複製されたヒト1p36に対応する部位をもつマウスモデルを作った。これにより、その部位が喪失した(ヒトの癌と同じく)場合、または余剰なコピーが行われた場合にどうなるかを研究することが可能になった。

彼らの発見によると、その部位の余剰なコピーをもつ細胞は増殖力が弱く、老化の一途をたどるが、同部位の欠損は不死に関与することが判明した。

In vivoで、欠損をもつマウスは正常で癌になりやすい傾向がみられたのに対し、複製があるマウスでは過剰なアポトーシスがみられる。

1p36に相当する重要な腫瘍抑制部位が正確に示されたため、Dr.Mills氏のチームは、RNAiによって機能を失わせた時に、その部位の過剰コピーをもつ細胞の脆弱な増殖能を矯正するものはなにかを探すことにより、その領域内のどの遺伝子が腫瘍抑制遺伝子であるかを調べた。たった一つ、Chd5のみが肯定的な結果を示した。重要なことは、Chd5が正常細胞で欠損していると、結果はその領域全体が欠損しているのと同じになった。このように、Chd5だけがその部位の腫瘍抑制遺伝子であった。

Chd5はクロマチン再構築因子として知られるタンパク質ファミリーに属する。このタンパク質は、DNAを解きほぐし、遺伝子が細胞内の転写機構によって読み込まれやすくなるよう働きかけるものである。

「クロマチン再構築因子であるChd5の役割は、純粋に他のChdファミリーへの相同性にのみ基づいており、これまで機能に関するなデータは存在しなかった。」と、Dr.Mills氏は述べる。「このことが、どのように腫瘍形成に影響するかはよくわかっていないが、この領域でさらに解明が進めば、より効果的な抗癌治療を設計するための革新的な方法がもたらされるだろう。」

この調査研究の背景となった方法が重要な貢献を果たし、マウスモデルと癌の密接な関連性を顕著に示すものであるだろうと、Center for Cancer Research(癌研究センター)内Genomic Variation Section of NCI’s Pediatric Oncology Branch (NCIの小児腫瘍科のゲノム変異セクション)とDivision of Cancer Genetics and Epidemiology(癌遺伝子学・疫学部門)およびCore Genotyping Facilityを統率するDr. Stephen Chanock氏は語る。

「ヒト1p36に位置する機能的に重要な意味をもつ新規の腫瘍抑制因子を同定しただけでなく、他の同様の遺伝子が作用した後に、どこへ、どのように作用するかを示す有用な道路地図(road map)を提供したのだ。しかも、これを達成するのに技術的に賢明で興味深い方法を用いた」と、Dr. Chanock氏は述べる。

Oncogenomics Section of NCI’s Pediatric Oncology Branch (NCIの小児腫瘍科の腫瘍ゲノミクスセクション)長であるDr. Javed Khan氏にとって、この研究の重要な観点は単一の遺伝子であるChd5のヘテロ接合性(片方しか機能していない)によって細胞が悪性腫瘍を形成しやすくなり、自然発生癌と同様に不死化細胞の中に野生型遺伝子座が保持されているいう発見である。この知見からは、遺伝子の1コピーが不完全な場合、癌が発生するためには他方のコピーが欠失または不活性化しなければならないとされる『two-hit hypothesis』という仮説は、一部の癌における腫瘍形成には必須条件ではないことが示唆される。「この研究は、単一遺伝子のハプロ不全は特定の癌を生じさせるとの十分なエビデンスを提供するものであり、このことはパラダイムシフトを呈している。」と、Dr. Khan氏は語る。

— Brittany Moya del Pino

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野中 希 訳

瀬戸山 修(薬学) 監修

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