最新ゲノム検査を用いた白血病(AML)治療で生存転帰が大幅に改善

最新のゲノム検査を受けた急性骨髄性白血病(AML)患者では治療成績と生存率が優れているとの研究結果

白血病・リンパ腫協会(LLS)が実施するプレシジョン医療を用いた臨床試験「Beat AML Master Clinical Trial」に参加した患者では、標準化学療法を選択した急性骨髄性白血病(AML)患者と比較して治療成績と生存期間が優れていたことが、本日発行されたNature Medicine誌で発表された。

Beat AML試験は白血病のトップ研究者、バイオ製薬会社、大手ゲノミクス情報企業による共同研究であり、急性骨髄性白血病(AML)治療の進展を目的として、2016年に開始された。AMLは、毎年2万人以上の米国人が罹患しているにもかかわらず、過去40年間、治療法がほぼ改善されていない、命に関わる疾患である。

今回の新たな報告で、白血病細胞のAMLタイプを特定するゲノム解析が7日以内に完了可能であることを実証するデータがBeat AML研究チームにより示された。

「この方法は画期的で、臨床医療に変化をもたらすものです。なぜならば、患者の生存可能性を危険にさらすことなく、より個別化された治療法を決定する際に重要な情報が得られるからです。過去には、この種の解析は単に利用できなかったか、数カ月を要することもあり、危険を伴う治療遅延が生じていました」と、オハイオ州立大学総合がんセンター のアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)所属のJohn C. Byrd医師(血液学研究者)は述べる。Byrd氏は、Beat AML試験の試験責任医師、Nature Medicine誌掲載論文の連絡担当著者であり、オハイオ州立大学医学部 でD. Warren Brown Chair of Leukemia Researchを務める。

今回の新データは、AMLと診断された患者の治療方法はどうあるべきかに関するパラダイムシフトを示すものであり、遺伝子情報を利用して患者に最適な標的治療法を選ぶことにより従来の画一的な治療アプローチと比べて生存率が上昇することを示していると研究者らは述べる。

数十年にもわたり、AML患者の標準治療は、シタラビンおよびダウノルビシンという2種類の抗がん剤の併用静注による治療、または、がん細胞を死滅させるシグナルを放出する、いわゆる脱メチル化薬(メチル化阻害剤)を用いる治療のいずれかであった。しかし、これらの治療法はがんを長期的にコントロールするには有効性が限られていることがわかっていた。

「本研究は、治療を最長7日間遅らせることが可能かつ安全であること、そして、プレシジョン医療に基づいた治療を選択した患者は、標準治療を選択した患者と比較して早期死亡率が低く、また、全生存率も優れていたことを示しています」とByrd氏は付け加える。「今回の患者中心の研究は、化学療法が奏効しない患者や、40年前から変わっていない化学療法の苦しい副作用に耐えられない患者に対して、化学療法治療から離れて個々の症例に適した治療法を選択できることを示しています」。

Byrd氏と共同でBeat AML 試験を主導しているのは、Amy Burd医学博士(白血病&リンパ腫協会 研究戦略副部長、論文筆頭共著者)、Brian Druker医師(オレゴン健康科学大学Knight Cancer Institute所長)、Ross L. Levine医師(スローン ケタリング記念がんセンター造血器腫瘍センター長)である。今も継続中の本試験では、現在まで16のがんセンターにて1,000人以上の患者をスクリーニングしてきた。本日付けNature Medicine誌で発表されたデータは、2016年11月17日から2018年1月30日までの期間に登録された患者に関するものである。

説得力のある知見データ

急性骨髄性白血病(AML)が疑われ、上記期間中に試験参加に同意した患者487人のうち、395人が試験適格とされた。スクリーニングおよび解析が7日間のスケジュール内で完了した適格患者は374人(94.7%)であった。最終的に、その患者のうち224人が、上記期間中に実施される11の試験群のいずれかに参加することを選択した。この試験に参加しないことを選択した患者は、標準治療、緩和ケア、または別の臨床試験のいずれかを選択した。

Beat AML試験患者の全生存期間中央値は12.8カ月であったのに対し、標準治療を選択した患者の全生存期間は3.9カ月であった。

OSUCCC-JamesでBeat AML試験群の治験責任医師を務めるAlice Mims医師は、2017年以降、新規診断AML患者に対して新薬5種類が単剤あるいは他の化学療法薬との併用で承認されているが、特に高齢患者(60歳以上)においては、治癒効果があると言えるものは一つもないと指摘している。

「新たに診断された高齢患者で遺伝子配列結果が出るのを待つことは、患者の大多数にとって安全であり、初期治療、先行治療を選択する際に有用であることがBeat AML試験から判明しました。そうした個別化治療アプローチによって、患者は確実に、最適な時期に最適な治療を受けられるのです。かつてはAML治療に対して包括的アプローチが取られ、AML患者全員が同様の治療を受けていたために全体の長期治療成績もよくありませんでした」とMims氏は述べる。

「この基準研究は、臨床試験を通じて本疾患に対する科学的理解や新たな治療選択肢の可能性を広げており、AML患者は若年者も高齢者も、治癒を目的とした、より有効で毒性の低い治療アプローチの効果が期待できるようになるでしょう」。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 北尾章人(腫瘍・血液内科/神戸大学大学院医学研究科)

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