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たばこ規制研究における今後10年の取り組み

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たばこ規制研究における今後10年の取り組み

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

 

公衆衛生における深刻な健康上の脅威に対し、早々と勝利宣言をしてしまったがゆえに、われわれは最大の危機の一つに直面している。

 

その脅威とは他でもない、喫煙である。

 

過去数十年以上、喫煙率が急激に低下している。これは、たばこ税の引き上げなどのエビデンスに基づいた政策や計画の実施、包括的な禁煙に関する法令の施行、そして禁煙を手助けするさまざまな努力によって達成された、非常に大きな成果である。

 

しかし、依然として4,000万人もの米国人が喫煙するなかで、いまだに禁煙を達成できない人は多い。データでも自明であるが、喫煙が13種類以上ものがんの原因となっており、がん死亡の1/3はたばこが原因とされている。喫煙はまた、心不全や脳卒中、重篤な肺疾患の原因にもなっている。実際に、喫煙によりほぼすべての臓器が悪影響を受ける。

 

生命や疾病に関する費用に加えて、たばこにより膨大な経費が生じている。つまり、米国では年間に、医療にかかる直接経費1,700億ドルに加えて、1,560億ドルにのぼる(労働)生産性の損失が生じている。

 

さらに、電子たばこや水たばこ等、今までなかった新しいたばこ製品が蔓延し消費量が増加している。2014年、中学生や高校生においては、電子たばこがたばこ製品の中で最も多く使われていた(それぞれの電子たばこ喫煙率は4%および13%)。

 

たばこは予防可能ながん死亡原因として最も重要であることから、NCI Acting DirectorのDoug Lowy医師は、著名なたばこ規制の専門家からなる作業部会を昨年立ち上げた。その使命は、NCIの将来のたばこ規制研究の一助となる研究の優先順位を決めることである。

 

Lowy医師は、この作業部会に、NCIたばこ規制研究部門が今後10年以上にわたって取り組むべき最優先の研究を見つけだしこれに焦点を当てる、という役割に特化するよう求めている。つまり、たばこの蔓延やたばこが原因でおこる病気を防止するために最も効果的と考えられる研究領域を明らかにする、ことが特に求められる。

 

現在のたばこ規制の全体像を総合的に見渡すため、作業部会は、たばこ規制に関するの他の連邦機関や非営利団体の指導者らから話を聞き、これらの機関の最優先の研究領域や取組みについてより深く理解しようとした。

 

今春すでに、作業部会は報告書を完成させ、NCIの科学諮問委員会にこれを提出した。

 

報告書では「喫煙およびそれに伴う比類なき悪影響の廃絶は、今われわれの手中にある」が、「この目標を達成させるには、NCI主導による進展など、大きな科学的な進歩が必要である」と述べられている。さらに、研究機関は喫煙の継続を助長する重要な因子、例えば喫煙人口の変化、喫煙パターンの変貌、さまざまな新しいたばこ製品の出現、複雑で急速に変貌する政策環境等、について考慮すべきであるとされている。

 

報告書は、われわれの研究が実り多いものになるのを手助けする包括的な指針を示している。

 

例えば、喫煙防止や禁煙の取り組みは、新規または既存のいずれにしても、もっと利用し易くする、等といったより効率を上げる努力をすることが推奨されている。例をあげれば、スマートフォンのアプリを利用する、救急部門やメンタルヘルスおよび薬物乱用治療施設等の従来とは異なった医療環境での指導、等である。

 

作業部会が指摘したもう一つの優先領域は、(喫煙に対する)誘惑に弱い集団、についてである。

 

作業部会は重要な標的集団として、特に青少年層を挙げた。その理由は最新の研究が示している。例えば、先月NCIが支援する研究で、いわゆる「たばこ」ではなく電子たばこを吸い始めていた高校の2~3年生は、電子たばこを吸ったことのない生徒に比べて、その後16カ月間の追跡中に、「たばこ」を吸い始める傾向がより強くみられた。

 

作業部会はまた、たばこの弊害は人口全体を通じて同じではないことが明白に示されているため、人種や経済格差を是正する研究を最優先事項に認定した。

 

例えば、高等学校およびそれ以下の教育を受けた人々の喫煙率は、大学以上の教育を受けた人々の2倍を超える。また、収入が貧困レベル以下、特定の人種や民族、およびメンタルヘルスや薬物乱用の問題がある人々の喫煙率は非常に高い。

 

既存のNCI支援の研究は、これらの作業部会の推奨に対してNCIが積極的に取り組むための一助として、良い位置付けにある。

 

これらの研究には、The State and Community Tobacco Control research initiative、the Adolescent Brain Cognitive Development Study[州政府ならびに地方自治体によるタバコ規制研究イニシアチブ:青少年における脳の認知機能の発達に関する研究](多数の連邦政府パートナーとの協力による)などがある。そして、新たな助成は、”大規模に拡散可能な“やり方で、低所得者層の間で禁煙を推進すること、に振り向けられる。

 

1960年代半ば、米国では男性の約50%、女性の約33%が喫煙していた。今日では、それぞれ17%、14%である。これは何にせよ大きな飛躍である。

 

しかし、われわれはさらに飛躍できる、またしなければいけない。

 

NCIは、たばこの蔓延をくい止めるための多くのパートナーと共に取り組んでいる。これらの推奨、そしてわれわれの継続する能力は、そうした方向への重要な一歩である。

原文掲載日

翻訳太田奈津美

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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