ページが見つかりませんでした - がん治療・癌の最新情報 | リファレンス https://www.cancerit.jp 海外のがん治療最新情報をお届けするサイトです。がん患者とご家族、医療者の方々に米国国立がん研究所(NCI)の治療法・検査技術研究・治験や米国食品医薬品局(FDA)抗癌剤新薬承認ニュース、他、信頼性の高い情報を翻訳、配信しています。 Thu, 28 Mar 2024 01:38:43 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.7.5 https://www.cancerit.jp/wp-content/uploads/2022/12/cropped-index-32x32.png ページが見つかりませんでした - がん治療・癌の最新情報 | リファレンス https://www.cancerit.jp 32 32 大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/syoukakigann/post-27558.html Thu, 28 Mar 2024 01:38:41 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27558 フレッドハッチンソンがん研究センター

Nature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に有用である可能性が示唆された。

フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者らは、口腔内で一般的に認められる微生物の特定の亜型が腸まで移動し、大腸がん腫瘍内で増殖することを発見した。この微生物はがんの進行を促進し、がん治療後の患者の転帰を悪化させる原因ともなる。

3月20日にNature誌で発表された同研究結果によって、大腸がんの治療方法および早期スクリーニングの改善に役立つ可能性がある。アメリカがん協会によると、米国において大腸がんは成人のがん死亡原因の2位である。

フレッドハッチンソンがん研究センターの研究チームは、200人の患者から摘出した大腸がん腫瘍を検査し、Fusobacterium nucleatumのレベルを計測した。症例の約50%において、腫瘍内に微生物の特定の亜型を認め、健常組織と比較して上昇していることを同研究者らは発見した。

研究者らはまた、健常者の便サンプルと比較して、大腸がん患者の便サンプルにこの微生物が多く含まれていることも発見した。

Fusobacterium nucleatumを保有する大腸腫瘍の患者は、微生物を含まない患者と比較して生存率が低く、予後も不良であることが一貫して示されている」 とフレッドハッチンソンがん研究センターのがん微生物叢研究者であり、共同研究著者であるSusan Bullman博士は説明した。「現在、この微生物の特定の亜型が腫瘍の増殖に関与していることがわかってきました。微生物叢内のこの亜型を標的とする治療法およびスクリーニングは、より悪性度の高い大腸がんリスクの高い人に有用であることが示唆されている」。

本試験では、Bullman博士とフレッドハッチンソンがん研究センターの分子微生物学者である共同著者Christopher D. Johnston博士が、Washington Research Foundationのフェロー兼Johnston研究所のスタッフサイエンティストである筆頭著者Martha Zepeda-Rivera博士と共に、この微生物が、通常の環境である口腔から離れた下部消化管にどのように移動し、がんの増殖にどのように寄与するかを明らかにしようとした。

彼らはまず、将来の治療法にとって重要な発見をした。大腸がん腫瘍におけるFusobacterium nucleatumの優勢群は単一の亜種と考えられていたが、実際には "クレード "と呼ばれる2つの異なる系統群から構成されていたのである。

「この発見は、遺伝学のロゼッタストーンに出くわしたようなものです」とJohnston医学博士はのべた。「系統学的に非常に近い細菌株を持っているので、同じものだと考えていたのですが、腫瘍と口腔内の相対的な存在量に大きな違いがあることがわかりました」。 

これらのクレード間の遺伝的差異を分離することにより、腫瘍浸潤性FnaC2型は、口から胃を通って移動し胃酸に耐え、その後、下部消化管で増殖出来ることを示唆する明確な遺伝的特徴を獲得していることを同研究者らは発見した。解析はクレード間の195の遺伝的差異を明らかにした。

次に、大腸がん患者の腫瘍組織と健康な組織を比較したところ、FnaC2亜型のみが大腸がん腫瘍組織に有意に豊富であり、大腸がんの増殖に関与していることを同研究者らは発見した。

200例以上の大腸腫瘍を含む2つの患者群のさらなる分子解析により、症例の約50%にこのFnaC2系統群が存在することが明らかになった。

研究者らはまた、大腸がんのある人とない人の数百の便サンプルで、大腸がんではFnaC2レベルが一貫して高いことも発見した。

「我々は、大腸がんに関連する正確な細菌の系統を特定し、その知識は効果的な予防法と治療法を開発するために重要である」とJohnston博士は述べた。

彼とBullman博士は、この試験が、細菌株を改良したものを用いて腫瘍に直接治療薬を届ける微生物細胞療法の開発に大きな可能性をもたらすと考えている。

本試験は、国立衛生研究所の国立歯科・頭蓋顔面研究所、国立がん研究所、W.M. Keck Research FoundationおよびWashington Research Foundation Fellowshipの支援を受けた。

  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 三宅久美子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/03/20

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腎がんを皮下注射型ニボルマブで治療、点滴より簡便になる可能性 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/hinyoukigann/jinzougann/post-27543.html Wed, 27 Mar 2024 01:50:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27543

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

進行した腎がんの患者にとって、皮下注射投与型ニボルマブ(販売名:オプジーボ)は、本来の静脈内投与の適切な代替方法であることが、臨床試験の初期結果で示された。この皮下注射剤によって患者はより迅速かつ容易に治療を受けられるようになると専門家は言う。

その結果、「患者の治療経験は著しく改善されるでしょう」と、本臨床試験のリーダーであるSaby George医学博士(ニューヨーク州バッファロー、ロズウェルパーク総合がんセンター)は述べた。

本臨床試験には、進行または転移性腎がん患者500人近くが参加した。すべての参加者は、皮下注射投与型の新しいニボルマブ製剤または静脈内投与型のニボルマブ製剤のいずれかに無作為に割り付けられた。

本研究から、ニボルマブ皮下注射投与型は腎がんに対する効果と副作用において静脈内投与型と同様であることがわかった。また、皮下注射投与型は治療時間を30分から5分未満に短縮した。George医師は1月27日の米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器がんシンポジウムでこの研究結果を発表した。

「皮下免疫療法は多くの面で胸が躍ります」と、腎がんを専門とするMark Ball医師(NCIがん研究センター。本試験には関与していない)は言う。例えば、治療時間の短縮、治療の利便性の向上、より多くの人々への治療機会の提供などをBall医師は挙げる。

Ball医師は「あまりに期待しすぎないことも大切だと思います。これが大変革となるかどうかはまだわかりません」と注意を促しつつ、「しかし、可能性をもっていることは確かです」と述べた。

ニボルマブ皮下注射:より速く、より楽な治療

ニボルマブは免疫チェックポイント阻害薬で、免疫細胞ががんを攻撃するのを助ける免疫療法の一種である。10種類以上のがんの治療に使用されている。

「現在、転移性腎がんに対する初回治療の多くは、チェックポイント阻害薬の静脈内投与で、点滴センターに通わなければなりません」とBall医師は説明した。点滴は通常、2週間または4週間ごとに2年間行われる。

しかし、多くの人々は点滴センターの近くには住んでおらず、そこに通う余裕もない。これは特に地方や発展途上国でみられる問題であるとBall医師は指摘する。また、点滴センターまで行ける人でも、予約が取れるまでに時間がかかることがよくある。

ニボルマブ皮下注射剤が最終的に米国食品医薬品局(FDA)から承認されれば、ニボルマブ皮下注射を自宅近くの医院で受けられるようになるため、患者にとって治療がより楽になるとGeorge医師は言う。

ニボルマブ皮下注射が可能になれば、患者にとって点滴センターへ頻繁に出向く時間、費用、ストレスが減るだけでなく、「必要とする人が多いために予約待ちが常に長期化している点滴センターにも余裕ができる可能性がある」とのことである。

また、ニボルマブ皮下注射投与は、静脈内投与ほど時間がかからず、外科的にポートを埋め込む必要がないため、ポートの埋め込みや維持に伴う合併症を避けることができる。

「患者さんにとって心理的なメリットも少しはあると思います」とBall医師は付け加えた。「点滴を受けるとなると、深刻な状況という感じがします」。しかし、皮下注射であれば、患者はより大きな力を得たように感じるかもしれないとのことである。

患者は「[がん治療を]通常の生活に適合させて仕事と生活のバランスをとろうとすでに奮闘している状態です」とBall医師は言う。そのため、多くのがんの治療に使用される薬剤が皮下注射剤になれば、患者のQOLが向上する可能性があると同医師は言う。

腎がんでは同様の効果

ニボルマブを製造するBristol Myers Squibb社が治験を依頼している本臨床試験には、進行または転移性腎がん患者500人近くが参加した。

この皮下注射剤は、ニボルマブをヒアルロニダーゼという天然酵素と結合させて製剤したもので、ヒアルロニダーゼは皮下注射後の薬剤の吸収を促進する。

本試験の主な目的は、皮下注射投与型ニボルマブが患者の体内での挙動(薬物動態)において、静脈内投与型ニボルマブより悪くない(非劣性)かどうかを確認することであった。

複数の指標によれば、ニボルマブの両投与型は類似した薬物動態を示した。例えば、治療開始後28日間のニボルマブの平均血中濃度は、皮下注射投与群と静脈内投与群で同様であった。

この試験では、腎がん増殖に対するニボルマブの皮下注射投与と静脈内投与の効果も比較された。がんが部分的または完全に縮小した患者の割合(客観的奏効率)は、皮下注射投与群で24%、静脈内投与群で18%であった。

さらに、がんが悪化せずに生存した期間(無増悪生存期間)は両群ともほぼ同じで、中央値は皮下注射投与群で7カ月、静脈内投与群で6カ月であった。

これらの結果は、「[皮下注射型ニボルマブの]臨床的有効性は静脈内投与型ニボルマブと少なくとも同等に良好であることを示しています」とGeorge医師は説明した。

皮下注射型ニボルマブは安全性に関しても静脈内投与型ニボルマブと同様であるとみられた。治療に関連した重度の副作用を経験した患者の割合は、皮下注射投与群では10%、静脈内投与群では15%であった。
ニボルマブ皮下注射投与群のほうが注射部位の発赤、腫れ、痛みを経験した患者が多かったとGeorge医師は述べた。しかし、これらの反応はすべて短期間であり、治療をしなくても消失したとのことである。

George医師によれば、両群間で唯一みられた大きな違いは、患者の血液中のニボルマブに対する抗体のレベルであった。この抗薬物抗体のレベルは、皮下注射投与群の方が静脈内投与群よりも高かった(23%対7%)。
免疫系は薬剤、特にニボルマブのようにヒトや動物のタンパク質から作られる薬剤に対して抗体を産生する可能性がある。抗薬物抗体は薬剤の機能を阻害したり、その血中濃度を変化させたりすることがあるが、皮下注射投与型ニボルマブに対する抗体は薬剤の薬物動態、有効性、安全性に影響を及ぼさないようであったとGeorge医師は述べている。

皮下注射投与型ニボルマブについてさらに知るべきこと

皮下注射投与型ニボルマブについて知るべきことはまだあるとBall医師は言う。例えば、他のがん種に対する効果においては、静脈内投与型ニボルマブと同等であるかどうかはわかっていない。

しかし、George医師によれば、薬物動態データは腎がんに特異的なものではないので、FDAが腎がんへの皮下注射投与型ニボルマブの使用を承認すれば、その承認が他のがんにも及ぶ可能性はある。

「しかし、それはFDAが決めることです」と同医師は言う。

ニボルマブ皮下注射製剤の費用も大きな問題であり、特に皮下注射投与によって節約できる時間が見込み費用を上回るかどうかが重要であると専門家らは言う。

また、免疫療法薬が皮下注射あるいは静注点滴のどちらで投与されるかによって、活性化される免疫系の部分が異なることが複数研究で示されているとBall医師は説明した。ニボルマブの投与方法によって、「腫瘍内の免疫細胞の種類や免疫プロファイルに違いがあるかどうかに興味があります」と話す。

他の免疫チェックポイント阻害薬の皮下注射剤も近い将来開発されるかもしれない、とBall医師は付け加えた。

「本研究の良好な結果から考えて、他[の企業]が同様の試験を行わないとしたら、大変驚きます」。

  • 監訳 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)
  • 翻訳担当者 山田登志子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/03/13

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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小児がんサバイバーでは、遺伝的要因が二次がんリスクに影響 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/syounigann/post-27540.html Wed, 27 Mar 2024 00:11:32 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27540

米国国立がん研究所(NCI)ニュースリリース

高頻度でみられる遺伝的要因は、一般集団においてがんリスクを予測できるが、小児がんサバイバーにおける二次がんのリスク上昇も予測できる可能性があることが、米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立がん研究所(NCI)の研究者らが主導した研究によって示された。2024年3月7日にNature Medicine 誌に発表された本知見は、小児がんサバイバーにおける二次がんの発生に遺伝学が重要な役割を果たす可能性があることを示す新たな証拠となり、受け継がれたコモンバリアント(集団全体のおよそ1%以上の頻度でみられる遺伝子変異)が非常にリスクが高いサバイバーの検診や長期的なフォローアップに影響を与える可能性があることを示唆している。

小児がんサバイバーは、がん治療の副作用やまれな遺伝的要因(レアバリアント:集団全体の1%以下の頻度でみられる遺伝子変異)により、後に二次がんを発症するリスクが高いことが知られている。今回の新たな研究で、研究者らはコモンバリアントと放射線治療歴の複合影響を評価した結果、がんのリスク上昇は、治療歴と遺伝的要因のそれぞれ単独での関連の合計より影響が大きいことを発見した。

「対象患者の遺伝子構造に関する知識は、二次がんのリスク管理に役立つ可能性があります」とNCIのがん疫学・遺伝学部門の臨床試験責任医師、Todd M. Gibson 医学博士は述べる。「将来的には、治療歴やその他の危険因子とともに遺伝的因子を組み入れることで、サバイバーのその後のがんリスクをより完全に把握し、長期的なフォローアップケアの指針とすることができればと思います」。

研究チームは、小児がんサバイバーの二次がんのリスクに対する、高頻度の先天的な遺伝的変異の役割を評価するために、健康な人の大規模集団で実施されたゲノムワイド関連解析(GWAS)のデータを用いた。そのような研究により、さまざまながんのリスクに関連する数千のコモンバリアントが同定されている。一つのコモンバリアントに関連するリスクは通常小さいが、多数のバリアント(変異)の影響は、ある個人の遺伝的リスクをより包括的に評価する要約スコア、もしくは多遺伝子リスクスコア(ポリジェニックリスクスコア)に一般化することができる。

多遺伝子リスクスコアは、一般集団におけるがんリスクの予測に有望であるが、そのスコアが小児がんサバイバーにおける二次がんのリスクとも関連しているかどうかは不明であった。

それを明らかにするために、研究者らは、2つの大規模コホート研究における小児がんサバイバー11,220人を対象に、多遺伝子リスクスコアと基底細胞がん、女性の乳がん、甲状腺がん、扁平上皮がん、メラノーマ、大腸がんのリスクとの関連を調べた。大腸がん以外のこれらすべてのがんについて、一般集団におけるGWASから得られた多遺伝子リスクスコアは、小児がんサバイバーにおける同種のがんのリスクと関連していた。

次に研究者らは、基底細胞がん、女性の乳がん、甲状腺がん(複合データの集合体において高頻度で発生し、放射線療法と強く関連している悪性腫瘍)を考察し、多遺伝子リスクスコアと治療歴の複合効果を検討した。その結果、高線量放射線被曝と高い多遺伝子リスクスコアの組み合わせに関連するリスクは、個々のリスク因子のリスクの関連性を単純に合計した場合に予想されるよりも大きいことを発見した。

基底細胞がんに関して、多遺伝子リスクスコアが高いと、小児がんサバイバーの場合、多遺伝子リスクスコアが低い場合と比較してリスクが2.7倍に上昇した。皮膚への高い放射線被曝歴は、皮膚への低い放射線被曝と比較してリスクが12倍に上昇した。一方、多遺伝子リスクスコアが高く皮膚への放射線被曝量が高い小児がんサバイバーでは、皮膚への放射線被曝量が低く多遺伝子リスクスコアの低い小児がんサバイバーと比較して、基底細胞がんのリスクが18.3倍に上昇した。

さらに、50才までで、多遺伝子リスクスコアが高く放射線被曝が多いサバイバーは、多遺伝子リスクスコアが低く放射線被爆の低いサバイバーと比較して、基底細胞がん、女性の乳がん、甲状腺がんの累積罹患率が高かった。たとえば、胸部への放射線照射を受けた女性サバイバーにおいて、50才までに乳がんと診断された割合は多遺伝子リスクスコアが高い人では33.9%であったのに対し、多遺伝子リスクスコアが低い人では21.4%であった。

本研究のひとつの限界は、解析の対象となった集団が主にヨーロッパ系人種であったことである。そのため、多様な集団におけるさらなる研究が必要とされる。さらに、多遺伝子リスクスコアは、将来的に検診のアプローチやその他の臨床判断に影響を与える可能性はあるが、まだ臨床で日常的に使用されていない。

「これらの結果は、多遺伝子リスクスコアが、放射線被曝した小児がんサバイバーの長期的なフォローアップのガイドラインを改善する役割を果たす可能性を示唆していますが、現時点では、それだけでは既存のガイドラインを変更するには十分ではありません」とGibson医学博士は述べた。

  • 監訳 河村光栄(放射線科/京都桂病院)
  • 翻訳担当者 山口みどり
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/03/07

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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がん性T細胞から得た戦略でCAR-T細胞療法が強化される可能性 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/gann-tiryou/post-27523.html Wed, 27 Mar 2024 01:27:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27523

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

白血病やリンパ腫のような血液腫瘍患者の一部では、CAR-T細胞療法が画期的な治療法であることが証明されてきた。しかし、がん患者の約90%を占める乳がん、大腸がん、膵臓がんなどの固形がんでは、T細胞療法による成功はなかなか得られていない。

その大きな理由のひとつは、感染細胞や病変細胞に対する免疫系の主要な防御手段であるT細胞が、固形腫瘍内やその周囲にみられる有毒な環境下でしばしば弱体化、無力化することである。研究者たちは、CAR-T細胞やその他の実験的T細胞療法が、腫瘍微小環境という、このような厳しい環境下で生き残るのを助ける方法を多数模索している。

NCIが資金提供した研究チームは、ある新しい研究でそのような戦術のひとつの可能性を示した。着目したのは、 がん性T細胞が生存と増殖のために利用している自らの遺伝子変化である。この遺伝子変化をT細胞治療に取り入れることで、より優れた抗腫瘍効果が得られる可能性があることを研究チームは発見した。

マウスで実験したところ、研究チームががん性T細胞で発見したある特定の遺伝子変化を備えるよう操作されたT細胞は「スーパーパワー」を発揮したと、この研究の共同責任者であるノースウェスタン大学のJaehyuk Choi医学博士が語った。

2つの遺伝子の一部を融合させた遺伝的変化を加えることで、改変されたT細胞はより速く分裂し、より多くの腫瘍細胞を殺し、投与されたマウスの体内で1年以上生存した。2月7日付けNature誌の研究者報告によると、重要なことに、この遺伝子組み換えによってT細胞ががん細胞のように振舞うことはなかったということである。

「[この]突然変異を1つ追加した際、[がんにみられるような]無制限な[T細胞の]増殖は認められず、[改変された]T細胞には元来備わっていない能力が付与された」 と、この研究のもう一人の主導者であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のKole Royba博士は説明した。

NCIのがん研究センターで細胞療法を研究しているが、この研究には関与していないRosa Nguyen医学博士によると、T細胞療法研究の最初の20年間は基本的な領域に集中していたという。その研究とは、T細胞ががん細胞上のどの分子を標的にできるのか、またCAR-T細胞療法で行われているように、T細胞をどのように変化させればそのような標的をより正確に特定できるのかを明らかにすることであった。

Nguyen博士は話した。「これらの細胞の機能を強化させるためにさまざまなものを[加える]ということの研究が今非常に盛り上がっている。それが今、この分野が目指しているものである」。

自然の生存戦略を利用する

体内のあらゆる種類の細胞は、免疫細胞でさえも、がん化する可能性がある。T細胞リンパ腫と呼ばれる血液腫瘍は、その名の通りT細胞から発生する。

これらのがん性T細胞は、多くの正常T細胞に欠けているもの、すなわち腫瘍という厳しい環境で増殖する能力を備えている。このような環境には、T細胞の働きを鈍化または無効化する他の免疫細胞や、T細胞を機能させにくくする他の細胞や分子が含まれる。

Choi博士の研究室では、T細胞リンパ腫の生存特性を10年以上研究してきた。「これらのがん性T細胞が発達させた、自分自身を守る方法は驚異的だ」と彼は説明した。

T細胞を用いた治療法の開発という観点からみると、がん化したT細胞にみられる変異の多くは、さらなる利点をもたらす、とChoi 博士は説明した。これらのどれかが単独で細胞をがん化させるようには考えられない。

彼らの長年の研究によって、「自然はすでに[がん性]T細胞をより強くするための大規模な実験を行ってきた」ことを明確に示している、と彼は説明した。T細胞療法を改善する方法を「[自然が]示してくれるかもしれないと考えた」。

より良く、より速く、より安全なT細胞

T細胞工学を専門とするRoybal博士の研究室協力のもと、研究者たちはまず、T細胞リンパ腫から採取した広範囲に渡るがん性T細胞を注意深く分析し、腫瘍微小環境での生存を助けると考えられる遺伝子変化を探した。

まずは候補となる変化が71個見つかった。さらに実験室での研究で、最も有望な候補変化のいくつかを備えるようにCAR-T細胞を操作した。その結果、CAR-T細胞のがん細胞に対する殺傷能力が向上し、より多くのCAR-T細胞を作り続けることができたのである。

さらに研究を進めた結果、最も有望と思われる変化、すなわちCARD11とPIK3R3という2つの遺伝子の一部の融合が判明した。

「このたった一つの(融合)遺伝子が、T細胞治療の改善に役立つと人々が予測していた多くのことを活性化した」とChoi 博士は説明した。マウスを使った実験では、この融合遺伝子を発現するように操作したCAR-T細胞を投与すると、T細胞が生存し機能するために必要な分子の産生が増加した。

そして、これらの改善は、T細胞の特殊な受容体であるキメラ抗原受容体が認識する特定のタンパク質が存在する場合にのみ発生した。つまり、これらの特別に設計されたCAR-T細胞は、腫瘍の内部で必要な時に必要な場所でだけ強化されるのである。

固形がんにおけるT細胞の生存と持続性の改善

研究チームは、中皮腫やメラノーマのような固形がんを含むさまざまながんモデルのマウスで、遺伝子融合を発現するように操作したCAR-T細胞をテストした。その結果、融合遺伝子を持たないCAR- T細胞よりも、腫瘍を縮小させる効果が高く、また腫瘍を長期間抑制できることがわかった。

「持続性、つまり腫瘍微小環境に留まる能力が、[この細胞が]解決した最大の問題であった」とChoi博士は語った。融合していないT細胞は数日以内に死滅するが、融合したT細胞は「腫瘍の周りに必要なだけ長くとどまるようだった」とChoi博士は語った。

Choi博士が指摘した、マウスが化学療法を受けていないにもかかわらずこの治療法は非常に有効であったという点は重要である。なぜなら、現在、「(T細胞治療を受ける)ほとんどの人は、事前に条件付け化学療法と呼ばれる治療を受ける必要がある」とChoi博士は説明した。しかし、この化学療法は副作用を引き起こす可能性があり、その重篤度は多くの場合、患者がT細胞治療を受けるのに長時間待たなければならないほど、あるいはまったく受けられないほどである。

「このような治療法を、専門性がさほど高くない施設で、あるいは外来でも受けられるようにするためには、(条件付け化学療法のような)患者に毒性のある面倒な技術を取り除く必要がある」とRoybal博士は付け加えた。

研究者らはTCRと呼ばれる別のタイプのT細胞ベースの免疫療法にもこの融合体を組み込み、同様の結果を得た。

例えば、メラノーマのマウスモデルでは、融合遺伝子があるTCR T細胞は、融合遺伝子がないTCR T細胞よりもはるかに多く腫瘍内に流入し、腫瘍細胞を効果的に殺傷した。融合遺伝子があるTCR T細胞は、融合遺伝子がないTCR T細胞より20倍から100倍低い投与開始用量でもこの優位性を示した。

T細胞療法を低用量で行えるようになれば、患者にとってもう一つの安全上の利点となるとRoybal博士は説明した。大量に投与される現在のCAR-T細胞療法は、サイトカイン放出症候群と呼ばれる危険な、あるいは致命的にさえなりうる免疫系の過剰反応を引き起こす可能性がある。このようなリスクは、時間をかけて活性を増強する少量投与の方が低くなる可能性が高い、と博士は付け加えた。

研究者たちはまた、治療後400日以上に渡りマウスのT細胞を追跡した。その結果、T細胞数は最初は腫瘍を殺すために急速に増殖したが、その後減少し、がん化する兆候はみられなかった。

人における強化T細胞の研究

研究者たちは、この遺伝子融合によるCAR-T細胞療法をヒト臨床試験に移行させるため、バイオテクノロジーのベンチャー企業を立ち上げた。 Roybal博士の説明によると、これらの研究が開始されるのは2~3年先とのことだ。

最終的には、研究者たちはT細胞を活性化させるさまざまな方法を組み合わせて試してみたがるだろう、とNguyen博士は言う。しかし、これらのアプローチは、まず一つずつテストし、それぞれがどのように作用するかをよりよく理解する必要がある。「段階的なアプローチを取らなければならない」と彼女は言った。

Roybal博士とChoi博士も、彼らの研究で最初に発見された数十の他の有望な変異の探索を続けたいと考えている。

Roybal博士は、「さまざまな種類のがんを治療するためのT細胞療法に使用できる可能性のある多様な変異を発見した」と語った。

「[CARD11-PIK3R3]融合タンパク質は、ある種の固形がんと闘うのに適しているのだろう。そして、われわれが発見した他の変異の一つは、別の種類のがんに対して意義のあるものだろう。これは[この研究の]始まりであって、終わりではないのだ」 彼は話した。

  • 監訳 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)
  • 翻訳担当者 大澤朋子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/03/24

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HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/nyuugann/post-27333.html Tue, 19 Mar 2024 01:20:20 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27333

ジョンズホプキンス大学

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによる新たな研究によると、新規の3剤併用療法がHER2陰性進行乳がん患者において顕著な奏効を示した。この治療では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬(化学変化を起こして腫瘍細胞の分裂を停止させる薬剤)と、チェックポイント阻害薬として知られる2種類の免疫療法薬を併用した。チェックポイント阻害薬には、がんに対する免疫反応の力を解放する作用がある。

本試験は第IB相多施設共同試験であり、腫瘍微小環境に感作することで、チェックポイント阻害薬への反応を向上させることを目的として行われた。同試験の併用療法の結果、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)陰性進行乳がんの女性において25%の奏効率(ORR)が得られた。これは、この治療を受けた女性の25%において、がんが消滅したか、有意に縮小したことを意味する。他の乳がん患者よりも治療の選択肢が少ないトリプルネガティブの乳がん患者では、奏効率は40%であった。これらの結果は2月14日付のNature Cancer誌に掲載された。

「今回の結果は、HDAC阻害薬エンチノスタット(entinostat)による治療後の免疫チェックポイント阻害薬2剤の併用が、転移性乳がんに対する安全で有望な戦略であることを示しています。これは第2相試験でさらなる臨床評価を行う根拠となるものです 」と、筆頭著者であるEvanthia Roussos Torres医学博士(南カリフォルニア大学ケック校医学部助教。研究実施当時はジョンズ・ホプキンス大学医学部と同大学キンメルがんセンターに在籍)は言う。「これらの結果は、転移性乳がんにおいてチェックポイント阻害薬への反応を改善できるという我々の仮説と完全に一致するものでした」。

米国国立がん研究所から資金提供を受けたこの研究は、4つの臨床施設で実施され、24人のHER2陰性転移性乳がんの女性を対象として行われた。12人はホルモン受容体陽性、12人はトリプルネガティブ乳がんであった。全員がエンチノスタットと2種類の免疫療法薬(PD-1/PD-L1阻害薬ニボルマブ[販売名:オプジーボ]とCTLA-4阻害薬イピリムマブ[販売名:ヤーボイ])の併用療法を受けた。

本試験では想定内の忍容可能な毒性のみが認められ、治療中止が必要となった患者はいなかったため、主要評価項目に定めた安全性が達成された。平均無増悪生存期間(PFS)は6カ月で50%であり、これは試験参加者の半数において最低6カ月間、病状が悪化しなかったことを意味する。この治療法の有効性は、今後の研究でさらに検討されるであろう。

「われわれの知る限り、今回の試験は進行乳がん患者を対象にHDAC阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬2剤の併用療法を調査して発表された、初の研究です」と、共著者であるダナ&アルバート  "カビー " ブロッコリの基金により任命を受けた腫瘍学教授でジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター副所長のElizabeth Jaffee医師は言う。「治療を多数受けた後の進行乳がんは、依然として患者のニーズに応えられていない分野ですから、このような奏効率と無増悪生存期間をもたらした今回の併用療法は興味深いものです」。

免疫チェックポイント阻害薬は、さまざまな種類の免疫細胞の抑制機能を解除し、患者の免疫系によるがん細胞への攻撃を可能にすることから、多くの固形がん患者の治療に欠かせないものとなっている。しかし、ほとんどの乳がんにおいては、これまでこの治療法から効果が得られなかった。

これに対し、乳がんを対象としては、腫瘍微小環境における免疫反応を変化させるため、がんの発生に関する遺伝子の発現を抑制するエピジェネティック薬が単剤の免疫チェックポイント阻害薬と併用して研究されてきた。一方で、2剤の免疫チェックポイント阻害薬併用はさまざまな々ながんにおいて安全であることが示されている。

「実際、われわれは非常に良好な結果を得ることができましたが、それが腫瘍微小環境の変化によるものかどうかという疑問に、今回の研究からは答えることができません」。「今回の研究は、腫瘍微小環境への感作が免疫チェックポイント阻害薬による治療に与える役割を明らかにするために、骨髄系(免疫)細胞集団の変化に焦点を当て、乳がん腫瘍微小環境をより深く調査する必要性を示唆しています」と、Roussos Torres博士は言う。

「この臨床試験は、大胆な仮説を研究室から臨床に持ち込むための学際的協力の重要性を浮き彫りにするとともに、HER2陰性進行乳がん患者を対象とした新しい治療のアプローチについて調査する今後の臨床試験の足がかりとなるものです」と、Vered Stearns医師と共にこの臨床試験の主任研究者であったRoisin Connolly医師(M.B.B.Ch.)は言う。現在、Connolly医師はアイルランド国立大学コーク校、Stearns医師はニューヨークのウェイルコーネル医科大学に在籍している。

米国では毎年約30万人が乳がんの診断を受けており、皮膚がんを除いて米国女性で最も多く見られるがんである。このうち約70%はホルモン受容体陽性HER2陰性で、腫瘍細胞がエストロゲンまたはプロゲステロンの受容体を含むが、HER2というタンパク質のレベルは低い。

トリプルネガティブと呼ばれるタイプの乳がんは全体の10%から15%程度で、これは腫瘍細胞がホルモン受容体を持たず、HER2レベルも低いことを意味し、他のタイプの乳がんよりも治療が困難である。

共著者および他詳細は原文をご参照ください。

  • 監訳 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 翻訳担当者 高橋多恵
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/14

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進行腎がんに対する免疫療法薬+グアデシタビン新治療の可能性を示す研究 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/hinyoukigann/jinzougann/post-27312.html Sun, 17 Mar 2024 00:37:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27312

オハイオ州立大学総合がんセンター

進行淡明型腎細胞がん(ccRCC)の一部の患者に対する2剤併用療法はさらなる研究に値することが、Big Ten Cancer Research Consortium(ビッグテンがん研究共同事業)の初めての腎がん臨床試験で示されている。

この試験結果は、最近Nature Communications誌に掲載された。オハイオ州立大学総合がんセンターの アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロベ研究所泌尿器腫瘍学部長、兼トランスレーショナル治療プログラムのメンバーであるEric A. Singer医師が本共同事業の研究を主導した。

「進行した腎臓がんは依然として治療が困難です」とSinger医師は語る。「われわれは、腎細胞がん患者の延命と生活の質の改善の両方を実現するため、新たな薬剤や薬剤併用療法を必要としています。免疫チェックポイント阻害薬の治療歴のない患者にみられたこのレジメンの忍容性と無増悪生存期間はさらに研究するに値すると考えられます」。

免疫チェックポイントとは、ウイルスや細菌に対する身体の免疫反応が健康な細胞も破壊するのを防ぐ免疫システムの自然な要素である。しかし、このようなチェックポイントは免疫系ががん細胞を破壊する能力を阻害することもある。免疫チェックポイント阻害薬は、チェックポイント活性を破壊し、免疫系ががんと闘う能力を高める。

本臨床試験では、グアデシタビン(guadecitabine)と呼ばれる実験的薬剤と免疫系を刺激するデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)を併用した。本臨床試験の第1b相で本薬剤の併用が安全で、副作用も許容範囲内であることが患者6人で確認された。

第2相では、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けていない患者36人と免疫チェックポイント阻害薬による治療を1ライン以上受けたことのある患者15人の2群を試験した。

前者の群の奏効率(治療により腫瘍が破壊または縮小した患者)は22%であった。この群の無増悪生存期間は14カ月であった。

後者の群で患者の60%は病勢が安定したが、無増悪生存期間は4カ月未満に過ぎなかった。

この結果に基づき、この実験的併用療法は副作用が管理可能で、特にCPIによる治療歴のない患者において有望な抗がん効果を示したとSinger医師は語った。この併用療法を患者の一次治療と二次治療として検討するにはさらなる研究が必要であると語る。

  • 監訳 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 松長愛美
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/27

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大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/syoukakigann/daityougann/post-27295.html Sat, 16 Mar 2024 00:20:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27295

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

転移が始まった大腸がんに対する手術の後、多くの人はそのまま化学療法を受ける。この術後(アジュバント)治療の背景にある考え方は、がんが体内の他の場所で再発する可能性を減らし、結果的により多くの人のがんが治癒することである。

しかし、誰が本当にこの術後治療を必要としているか、誰が安全にこの治療を省略し、治療に伴う副作用を避けることができるか、それらを予測する方法はこれまでなかった。

新たな研究では、術後化学療法を必要としている人と、そうでない人を識別する有望な方法が示された。

この研究では、腫瘍から血液中に漏れ出た遺伝物質の断片、つまり血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の存在によって、化学療法が有益となるかどうかを予測できる可能性があることがわかった。ctDNA陽性の患者のうち化学療法を受けた患者は、受けなかった患者よりも、がんが再発することなく長く生存した。

重要なポイントは、ctDNA検査が陰性の場合は、術直後に化学療法が不要だと思われる人が特定されたということである。つまり、化学療法によって再発せず長生きできたという証拠はなかったのである。

BESPOKE CRCと呼ばれるこの試験は、試験で使用されたctDNA検査を開発したNatera社から資金援助を受けており、1月20日、ASCO消化器がんシンポジウムで発表された。日本の研究チームがシンポジウムで発表した同じ検査を用いた別の研究結果でも、大腸がんにおけるctDNA検査の同様の有用性が示された。

この試験では、リキッドバイオプシーと呼ばれる検査でctDNAの測定を行ったが、患者が最初に治療を選択する時には実施していない。リキッドバイオプシーの結果は、患者とそのケアチームにフィードバックされ、その結果によって既に決めてある治療計画が変更となるかどうかを検証した、とBESPOKE CRC試験の代表研究者の一人であるワイル・コーネル医科大学のPashtoon Murtaza Kasi医師・理学修士は説明した。

しかし、ctDNAに基づいて術後化学療法の実施を決めることについて検討する現在進行中の臨床試験は、安全であり、実施が極めて妥当であることが、BESPOKE試験と日本の研究結果によって十分に裏付けられた、とKasi氏は述べた。

「(この種の大腸がんの)約60%は手術で治癒することがわかっています」「必要がないのに、こういった患者さんを化学療法やその副作用にさらしたくないのです」と、NCIがん治療・診断部門の消化器がん治療学特別顧問であるCarmen Allegra医師は述べる。

しかしctDNAは、術後さらに強力な治療により利益を得られる人や、実験的治療の臨床試験に参加したい人を特定できる可能性がある、とKasi氏は述べた。

2つのctDNA検査がすでに大腸がんの再発モニタリング用として販売されており、一部のクリニックでは使用されている。「問題は、その使い方がまだよくわかっていないことです」と、Allegra氏は言う。

ctDNA検査で陽性であっても、画像検査で再発した徴候がない場合、すぐに追加治療を開始するべきかどうかについては今のところ不明である、とAllegra氏は説明する。

患者の治療決定のためにctDNA検査の結果をどう利用するのが一番良いのか、それを解明するために必要な指針が現在進行中の臨床試験により得られることを期待したい、とAllegra氏は付け加えた。

隠れたがん細胞の徴候を追跡

ctDNAを測定するというリキッドバイオプシーの発想は新しいものではない。この技術は、がん患者をモニターし、一部のがんを症状が出る前に早期発見できる可能性があるとして、広く検証されてる。

このような技術は、治療決定の指針という点で、予後予測テストと治療効果予測テストの2つの用途が考えられる。予後予測テストでは、治療後にがんが再発する可能性を測定することができる。治療効果予測テストは、特定の治療がその人のがんに有効かどうかを知るのに役立つ。

これら2つの情報を組み合わせることで、大腸がんの治療をより適切に調整できる可能性がある。研究者たちは、ctDNA検査がこういった役割を果たすことを期待してきたが、予後や治療効果を予測する実際の能力は不明のままであった。

2020年に開始されて以来、Kasi氏が主導する研究チームは、約1,800人をBESPOKE CRC試験に登録した。 最初の参加者623人の結果は、2024年のASCOシンポジウムで発表された。

BESPOKE試験の参加者は全員、ステージ2またはステージ3の大腸がんであった。これらのステージでは、がんが結腸や直腸の壁の中、あるいは壁の外に広がっており、場合によっては近くのリンパ節に転移していることがあるが、体内の離れた部位には転移していない。

これは、参加者を無作為に異なるグループに割り付ける臨床試験ではなかった。参加者全員が手術を受け、ケアチームで決定した場合は化学療法を受けた。

試験参加者は、画像検査やCEAと呼ばれるタンパク質の血液検査などの標準的な再発モニタリングに加え、手術の1カ月後、その後1年間は3カ月ごと、その後は試験終了または再発まで6カ月ごとにctDNA検査を受けた。

化学療法の有用性に明らかな差

手術で摘出したがん細胞での顕微鏡で認められた異常の程度、あるいは、その他の危険因子に基づいて、623人の参加者のうち381人が手術の約3カ月後に化学療法を開始した。

化学療法を受けた参加者のうち85人は、ctDNA検査が少なくとも1回以上陽性であった。化学療法を受けた参加者のうち残りの296人は、ctDNA検査が陰性であった。

ctDNA検査が陽性の人にとって、化学療法は明らかに有益であった。病気が再発することなく生存した期間(無病生存期間)は、ctDNA検査陽性の患者で中央値がほぼ18カ月間であったが、ctDNA検査が陽性の患者で術後化学療法を受けなかった場合は、約7カ月だった。

しかし、ctDNA検査が陰性であった人には、化学療法による差異はみられなかった。測定可能なctDNAが認められなかった90%以上の人が、術後化学療法を受けたかどうかに関係なく、中央値で2年以上再発しなかった。

最初ctDNA検査が陰性であった500人以上の参加者のうち、最終的に陽性となったのは14人であった。こういった患者では、陰性のままであった患者よりも再発が多くみられた。しかし、術後15カ月までに、ctDNA陰性から陽性になる可能性は急激に低下した。

追跡調査中に他の臓器にがんが再発した患者101人のうち、40人は少数転移と呼ばれるものであった。これは、少数で、通常は小さな転移である。これらの腫瘍の大部分は、試験中、ctDNA検査によって最初に検出された、とKasi氏は説明した。

少数転移がみられる人では、転移部位の手術や放射線照射といった治療法を選択できる人もいる、と同氏は続ける。「(そのような治療が)生存率の向上に役立つことは、これまでの経験からわかっています。ですから、ctDNA(検査)は、このような手段によって利益を受ける可能性のある人を増やすのに役立つかもしれません」。

ctDNA検査について、患者はどう感じているか?

研究チームはまた、BESPOKE CRC試験の一環として、ctDNA検査が精神衛生にどのような影響を与えたか、つまり安心感をもたらしたか、あるいはストレスが増えたかについて、患者に尋ねた。

全体的に、参加者は検査に満足していると報告した。不安や抑うつのテストでは、陰性でも陽性でもスコアに差はみられなかった。ほぼ4分の3が、検査によって再発に対する不安が軽減されたと答えた。また、90%以上が今後も再発をチェックするためにctDNA検査を継続したいと回答した。

「これはおそらく、たとえ望んでいなかった検査結果であったとしても、情報を得ることによって自分が受けている治療に自信を持てる、ということだと思います」と、Kasi医師は語る。

ctDNA検査は最初から治療の指針となり得るか?

治療開始時に、ctDNA検査が治療の指針になるかどうかを検証する複数の試験が、現在進行中である。

初期の大腸がん患者を対象とした、こういった試験のうちの1つで、NCIが資金提供するNCI臨床試験ネットワークで実施されている試験では、術後にctDNA陽性であった患者を、標準的な化学療法レジメンを受ける群と、通常より強力な化学療法レジメンを受ける群に無作為に割り付けた。「この患者さんたちは、がんが再発する可能性が高いからです」とAllegra氏は説明する。

対照的に、ctDNA検査が陰性であった試験参加者は、術後経過観察のみを受けるか、標準的な化学療法を受けるかに無作為に割り付けられた。この試験結果によって、どのような人が術後化学療法を安全に省略できるか、より明確になることが期待される、と同氏は付け加えた。

BESPOKEの結果は、こういった臨床試験が安全であることを裏付けた、とKasi氏は説明する。

「この研究が数年前に計画された当時は、術後化学療法の指針としてctDNAの使用を検討することにさえ、多くの偏った意見がありました。BESPOKEの結果は、現在進行中の臨床試験の基盤となるものです」。

現時点で、BESPOKE試験の研究者たちは、参加者の追跡調査を続け、医師がctDNA検査の情報を使って都度治療方針を変更するかどうか、また、それが再発リスクに影響を与えたかどうかを調べていく予定である。

より良い治療の高まる必要性

ここで問題となるのは、ステージ2または3の大腸がん患者の約4分の1は、術後化学療法を行っても治癒しないという事実である、とAllegra氏は言う。標準的な治療をすべて受けたにも関わらず、血液中にctDNAが検出された場合、「その患者さんに何ができますか?」と、Allegra氏は問う。

このような状況で治療成績を改善する方法として、異なる化学療法薬の使用、二次化学療法の早期開始、特定の遺伝的特徴を持つ腫瘍に対する免疫療法、などが現在臨床試験で検討されている、とAllegra氏は説明した。

しかし、BESPOKE試験の患者報告アウトカムの結果は、たとえctDNA検査の結果が悪いものであったとしても、人は自分の身体で何が起こっているのかをできるだけ早く知りたがっていることを示唆している、とKasi氏は言う。そして、彼らは自分の将来のケアについて、皆で決定することを望んでいる、と同氏は付け加えた。

「ctDNA検査は、次に行う治療や臨床試験の選択肢を早めに検討すべきかどうかについて、有用な指針を与えてくれます」「また、画像で発見される6~9カ月前に(再発)がんを発見することもできます。  ctDNA検査は、私たちが持つツールボックスに不可欠なツールであり、これからも必要なものです」と、Kasi氏は述べた。

  • 監訳 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 翻訳担当者 平沢沙枝
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/28

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/syoukakigann/daityougann/post-27293.html Thu, 14 Mar 2024 20:37:33 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27293

オハイオ州立大学総合がんセンター

仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増えつつあるが予防可能ながん)のリスクが増減しうることを知らない人が多い。

このことは、大腸内視鏡検査のおかげで高齢者の大腸がんは減少しているにもかかわらず、50歳未満の罹患率が上昇し続けているため、非常に懸念される点である、とオハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームスがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(​​OSUCCC - James)の専門家は言う。

「大腸内視鏡検査は、極初期のがん、時に前がん状態を検出して救命しますが、45歳以前で平均的リスクの人には推奨されていません」とOSUCCC - Jamesの大腸外科主任でオハイオ州立大学医学部教授のMatthew Kalady医師は言う。

アルコール、肥満、食事が大腸がんのリスクを高める

OSUCCC - Jamesが委託した最近の調査によると、米国成人の多くは、大腸がんの危険因子として家族歴(DNAにより家系に受け継がれるリスク)を認識している一方で、アルコール摂取、身体活動の不足、脂肪分や加工食品の多いアメリカ型の食事など、その他の要因についてはあまり知られていないことがわかった。

今回の消費者調査では、18歳以上の成人約1,000人を対象に、大腸がんの危険因子についての知識を尋ねた。
その結果、
・アルコール摂取が危険因子であることを知っている回答者は半数以下(49%)
・5人に2人は、身体活動の不足が危険因子であることを知らない(42%)
・3分の1以上は、肥満やアメリカ型食事(高脂肪、加工食品)が危険因子であることを知らない(38%、37%)
・5人に4人は、家族歴が危険因子であることを知っている。

リスク増加傾向の黒人とヒスパニック系は危険因子についてあまり知らない

大腸がんの危険因子に関する知識不足は、白人に比べて黒人とヒスパニック系で最も高かった。アメリカがん協会によると、黒人アメリカ人は大腸がんを発症し死亡する確率が他より高く、また、ヒスパニック系アメリカ人の大腸がん罹患率は、他のどの人種・民族グループよりも急速に上昇しているという。危険因子に対する認識が高まれば、検診を受けたり、大腸がんになる可能性を減らすように生活習慣を改めたりするようになるかもしれない。

大腸がんは20年前から50歳未満で増加している

米国国立がん研究所のデータによると、大腸がんの罹患率は1990年代から50歳未満で上昇している。これは大きな懸念事項であり、米国予防医療専門委員会(USPSTF)はつい最近、検診の推奨年齢を50歳から45歳に引き下げた。つまり、スクリーニングの推奨年齢以前にがんを発症する人が多いということである。

「大腸がんリスクには多くの要因があることを理解してもらうことが大事です。がんのリスクを減らすことができるのであればその努力をすべきです。そのような努力はがんリスクに影響を与えるだけでなく、全体的な健康状態を改善する可能性が高いのです」とKalady氏は言う。

Kalady氏によれば、健康的な生活習慣の力を軽視すべきではない。これには、食物繊維が多く、脂肪分が少なく、赤肉(牛や豚肉など動物の肉)は控えめで、果物と野菜を毎日4〜6皿(※英語ではサービング。1サービング70g~100g程度)食べることが含まれる。そうすることで、健康的な体重を維持し、炎症を抑えることができる。

「理想体重より体重が増えれば増えるほど、大腸がんを発症するリスクが高くなります。ですから、健康的な食事や定期的な適度な運動など、簡単ですが重要なステップを踏むことは、健康全般に大いに役立ちます」とKalady氏は言う。

「遺伝的リスクはあまり一般的ではありませんが、大腸がんの生涯リスクを大きく高める可能性があるので、適宜遺伝カウンセリングを受けることが重要です」と彼は注意した。

年齢に関係なく症状があれば受診

「『正しい』ことを全部やってもがんにかかる時はかかります。ですから、大腸がんの症状がある人は、年齢に関係なく、すぐに医師の診断を受けることが重要です。早期がんは治療可能性が高く、完治することも少なくありません。進行すると治る可能性は低くなります」とKalady氏は言う。

調査方法

この消費者調査は、オハイオ州立大学総合がんセンターのためにSSRS社のOpinion Panel Omnibusで実施した。SSRS Opinion Panel Omnibusは、全国規模で月2回行われる、確率的方法に基づく調査である。データ収集は2024年2月2日から4日に1,006人の回答者を対象として行われた。調査はウェブ(976名)と電話(30名)で実施され、英語で行われた。全回答者の誤差は95%信頼水準で±3.5%である。すべてのSSRSOpinion Panel Omnibusのデータは、対象母集団である18歳以上の米国成人を代表するように加重されている。

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/26

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進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/hihugann/post-27253-2.html Thu, 14 Mar 2024 00:20:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27253

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte:TIL)を用いる初のがん治療薬であるリフィレウセル(販売名:アムタグビ)を承認した。2月16日に発表されたFDAの決定により、リフィレウセルは固形皮膚がんである悪性黒色腫(メラノーマ)に対して承認された最初の細胞療法にもなった。

FDAによる迅速承認は、一部の免疫療法薬や分子標的薬による治療後に増悪した進行メラノーマ患者に対するリフィレウセルの使用を対象とするものである。

別の細胞療法であるCAR-T細胞療法と同様に、リフィレウセルも患者自身のT細胞を用いて作製される。いずれの治療法でも、患者が治療を受けている病院で採取された細胞は、製造施設へ送られ、最終的に患者投与用に調整・製品化される。

ただし、TILとCAR-T細胞療法の間には重要な違いがある。

承認済みのCAR-T細胞療法では、T細胞は患者の循環血液から採取される。一方、TIL療法では、T細胞は患者の腫瘍から採取される。

リフィレウセルの承認は、Iovance Biotherapeutics社(以下、Iovance社)が主導した臨床試験の結果に基づくものである。FDAが最終的に承認した用量のリフィレウセルが投与された参加患者70人以上のうち、ほぼ3分の1は少なくとも腫瘍の大きさがある程度縮小し(腫瘍反応)、一部の患者では腫瘍が完全に消失した(完全奏効)。

また、リフィレウセルが奏効したメラノーマ患者の約40%では、1回限りの点滴治療を受けた1年後もがんの増悪が認められなかった。

TIL療法は、Steven Rosenberg医師ら(NCI外科部門)によって先駆けて開発された。1980年代後半、Rosenberg氏はTIL療法の史上初の臨床試験を主導し、非常に進行したメラノーマ患者の腫瘍を縮小できることを示した(Rosenberg氏は最近、TIL療法の開発などの免疫療法に関する業績が認められ、免疫療法に関する業績が認められ、技術革新に対する米国最高の賞を授与された)。

その後、数年にわたり、NCIの研究者らはTIL療法を製造・投与する工程をさらに改良した。2011年、NCIはIovance社と共同研究契約を締結し、より大規模な臨床試験の実施や製造基盤の整備などのこの特殊なTIL療法の開発をさらに進め、FDA承認への道を開いた。

長い時間がかかったことをRosenberg氏は認めた。この新規承認は「大きな一歩」で、「細胞療法ががん治療の主流に加わりつつある」ことを示すものであるとRosenberg氏は述べた。

TILには、ほんの少しの助けが必要

6種類のCAR-T細胞療法がFDAによる承認を受けており、いずれも白血病やリンパ腫などの血液腫瘍の治療に使用される。

CAR-T細胞療法の場合、採取した免疫細胞は細胞調製室で遺伝子操作を受けることでがん細胞を認識する能力を得て、その殺傷能力を高める。次に、CAR-T細胞を数億個に拡大培養させ、患者に点滴静脈注射する。

リフィレウセルの場合には、採取したT細胞は拡大培養される前に、遺伝子操作を受けることはない。というのも、T細胞は腫瘍組織検体から採取されたものであり、腫瘍を認識し、そこに移動できることがすでに証明されているからであるとRosenberg氏は解説した。こうした認識は、腫瘍細胞の表面に存在する特定の異常タンパク質(抗原)の存在に依存している。

しかし、銀行に忍び込む強盗が金庫を開ける道具を持っていないのと同じで、採取TILには仕事を完遂するために必要な能力や支援が不足している。TILに必要なものは、多くの援軍といくらかの激励である。

そのため、患者の腫瘍から採取されたTILは遺伝子操作を受けていないが、インターロイキン-2(IL-2)製剤との混合などの製造工程で、TILを数十億個の抗腫瘍免疫細胞に拡大培養させるための段階が踏まれている。

さらに、リフィレウセル療法の一環として、点滴静脈注射されたTILの抗腫瘍能力と全体的な効力を高めるために2つの措置がとられる。1つ目は、リフィレウセル投与の数日前に、患者が高用量「リンパ球除去」化学療法を数回受けることである。そして、2つ目は、リフィレウセル投与直後におけるIL-2の数回投与である。

リフィレウセルによる腫瘍反応は長期間持続する

FDAによる承認は、PD-1/PD-L1標的免疫チェックポイント阻害薬またはBRAF阻害薬による治療にもかかわらずがんが増悪し、リフィレウセル投与量が細胞75億個(薬剤承認用量)以上であった臨床試験参加患者73人から得られたデータに基づいている。

2023年12月に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の免疫腫瘍学会2023で、本臨床試験参加患者153人から得られた長期結果が報告されたが、これは主に上記の患者73人の結果を反映している。

メラノーマがリフィレウセルによる治療に反応した48人(31.5%)のうち、半数以上はがんが増悪した所見もなく、1年以上生存している。こうした奏効の約10%は持続している。つまり、がんが増悪している証拠がない状態が続いており、ほぼ全員が数年間持続している。

この奏効期間が最も長い事例では5年近く持続したと、本臨床試験の主任研究者の1人である Martin Wermke医学博士(ドレスデン大学、ドイツ)はESMO総会で発表した。

本研究では、全参加患者をリフィレウセル投与から5年間追跡調査する計画であるとWermke氏は述べた。これまでの結果から、奏効が続いている参加患者ではがんが増悪したり再発したりすることはないと予想されると同氏は続けた。

リフィレウセルが奏効する人は?副作用は?

より大規模な臨床試験の参加患者から得た結果から、リフィレウセルに反応する可能性が最も高い人の特定に役立つ手掛かりがいくつか存在するとWermke氏は解説した。

例えば、がんが脳や肝臓に転移している患者(参加患者153人の約半数)は、ほとんど反応しなかった。腫瘍負荷が大きい、すなわち、体内に相当量のがんがある人の場合も、反応する可能性は低かった。

これらの所見から、リフィレウセルは、がんが体内の他の多くの部位に転移したり、個々の腫瘍がかなり大きくなったりする前に投与すれば最も効果的である可能性が示唆されるとWermke氏は指摘した。

本臨床試験の参加患者全員に治療による副作用が認められたとWermke氏は報告した。しかし、そのほとんどは危険なものではなく、リフィレウセル投与前に実施された化学療法薬と、投与後に実施されたIL-2が主な原因であった。最も多く認められた副作用は、貧血、高熱、および、血小板や一部の白血球の大幅な減少などであった。

TIL療法は、サイトカイン放出症候群や神経学的影響など、CAR-T細胞療法を受けた人に高頻度で認められる重篤な免疫関連副作用は引き起こさないようであるとWermke氏は述べた。

本臨床試験で認められた副作用の特徴は一貫していて、よくみられるものであったともWermke氏は強調した。

「副作用はすべて、治療を受けてから最初の2、3週間の間に起こっています。長期的には、新たな副作用はほとんどありません」とWermke氏は述べた。

TIL利用を臨床試験から日常がん治療に

Iovance社は、リフィレウセルを製造して患者に最終治療を実施することを目的に腫瘍検体を採取する治療施設を全米で30カ所以上承認したと発表した。こうした施設は5月末までに50カ所になる予定である。

最初は、すべてのTILはフィラデルフィア市内の同社の施設や委託施設で製造される。

同社によると、リフィレウセルの1回投与の治療費は、515,000ドル(約7,560万円)である。承認後に配信された同社のウェブキャストで同社関係者は、多くの保険会社が、同様に数十万ドル(数千万円)掛かるCAR-T細胞療法と同じ基準でTIL療法を保険適用とすることを期待していると述べた。同社は、患者を対象とする資金援助プログラムも設けている。

William Sharfman医師(ジョンズ・ホプキンス大学 シドニー・キンメル総合がんセンター、メラノーマ・プログラム共同責任者)は、今回の承認は進行メラノーマ患者にとって「非常に素晴らしい」知らせだと述べた。

しかし、リフィレウセルを患者に使用するには「いくつかの制限がある」とSharfman氏は戒めた。

その一つとして、患者が治療を受けるには、比較的健康な状態でなければならないとのことで、他の治療を受けている進行がん患者は必ずしもそういう状態にあるわけではない。 

「患者さんは、心肺機能が必ず正常でなければなりません」とSharfman氏は述べた。

Alexander Shoushtari医師(スローンケタリング記念がんセンター、細胞治療研究者)は、実施上の配慮点がリフィレウセルの使用を制限する可能性があることに同意見である。

「治療前に比較的高用量の化学療法を行い、(リフィレウセル)投与後に高用量のIL-2を投与するため、現在のところ、TIL療法を受けられる人は限られています」とShoushtari医師は述べた。

リフィレウセル承認後、次に来るものは?

メラノーマに対するFDAの承認は、リフィレウセルにとって最初の段階に過ぎない。Iovance社はすでに、進行メラノーマの初期治療として、リフィレウセル+免疫療法薬ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の併用療法の大規模臨床試験の参加患者の登録を開始している。

リフィレウセルは、卵巣がんや頭頸部がん患者だけでなく、進行肺がん患者においても有望な腫瘍反応を示すことなど、他のがんの治療薬としての検証も順調に進んでいる。

Rosenberg氏の研究室や他の研究室は、メラノーマだけでなく、他の固形がんに対しても、TILに基づく新規治療法を臨床試験で検証している。

「TIL療法が(他の固形)腫瘍を退縮させた明らかな実例があります」とRosenberg氏は述べた。これには、NIH臨床センターでの臨床試験で治療を受けた進行結腸がんや進行乳がんの患者の腫瘍が完全に消失した例が含まれる。

「この『画期的な承認』を得られたことで、TIL療法と細胞療法を取り巻く環境は概ね楽観的になっています」とShoushtari医師は述べ、「今回[の承認]は、固形がんに対する細胞免疫療法の氷山の一角であると期待しています」と言い添えた。

「リフィレウセルなどの第1世代TILは、こうした治療法が非常に有効であることを示す『重要な進展かつ概念実証』です。しかし、他のがん種やより広範なメラノーマ患者へ拡大適応には、まだ多くの課題が残っています」とShoushtari医師は述べた。

「より優れたTILの設計こそが課題です」とSharfman氏も同意した。

研究者らは既にこの課題に取り組んでおり、多様な固形がんに使用できる、より強力なTILの作製方法を模索している。例えば、NCIのRosenberg氏らは、腫瘍を強く認識し、攻撃する可能性が最も高いTILを同定する工程を開発した。

研究者らはTILの遺伝子操作にも着手しており、治療に反応する人の数を増やしたり、投与前化学療法や投与後IL-2の必要性をなくしたりすることを目標としている。

Rosenberg氏や他の研究者らががん細胞療法の研究に数十年にわたり取り組んできた結果、急速な進歩への道が拓かれたとRosenberg氏は強調した。

「私達は現在、腫瘍、特にがん死因の大部分を占める固形がんを免疫系が標的とするのを促す方法を知っています。世界には多くのチャンスがあるのです」とRosenberg氏は述べた。

  • 監訳 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター )
  • 翻訳担当者 渡邊 岳
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/03/05

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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免疫療法抵抗性肺がんにデュルバルマブ+セララセルチブ療法が有望 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/kokyuukigann/haigann/post-27233.html Mon, 11 Mar 2024 13:10:08 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27233

MDアンダーソンがんセンター

デュルバルマブ+セララセルチブが肺がん患者の免疫反応を高め、予後を改善することが第2相試験で明らかに

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が主導した最新の研究によると、標的療法と免疫療法の特定の組み合わせは、非小細胞肺がん(NSCLC)患者に特有の免疫抵抗性を克服し、抗腫瘍活性を再活性化するのに有効である可能性がある。

第2相アンブレラ試験であるHUDSON試験の結果は、本日付けのNature Medicine誌に発表され、抗PD-L1抗体デュルバルマブとATR阻害薬セララセルチブの組み合わせが、評価された4つの組み合わせの中で最大の臨床的利益をもたらすことを証明した。

この組み合わせによる客観的奏効率(ORR)は13.9%であったのに対し、試験された他の組み合わせではわずか2.6%であった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は5.8カ月対2.7カ月、全生存期間(OS)中央値は17.4カ月対9.4カ月であった。ATR阻害薬に対して腫瘍が反応しやすいことを示すATM異常を有する患者では、ORRは26.1%に上昇した。デュルバルマブ+セララセルチブの安全性プロファイルは、管理可能なものであった。

「進行非小細胞肺がん患者は、標準治療が奏効しない場合、大変な困難に直面します」と責任著者のJohn Heymach医学博士(胸部/頭頸部腫瘍内科科長)は述べた。「このような患者さんにとって選択肢は限られており、革新的なアプローチが早急に必要とされています。私たちの研究は、この満たされていないニーズに対処するための有望な進歩であり、このような患者さんの転帰を改善する、より効果的な治療戦略を提供する可能性を秘めています」。

本試験には、標準治療後に進行を認めた進行NSCLC患者268人が登録された。参加者の年齢中央値は63〜64歳で、58%が男性であった。

本試験の患者は、デュルバルマブと併用して、セララセルチブ(ATRキナーゼ阻害薬)、オラパリブ(PARP阻害薬)、ダンバチルセン(STAT3アンチセンスオリゴヌクレオチド)、オレクルマブ(抗CD73モノクローナル抗体)の4つの標的治療薬から1つを投与された。

治療に先立って腫瘍の分子的特徴が解析され、患者は、ATM異常、相同組換え修復欠損、STK11/LKB1異常、CD73高発現に基づいて、バイオマーカーが一致する治療コホートと一致しない治療コホートに分類された。

この結果に基づき、デュルバルマブ+セララセルチブは現在、免疫療法抵抗性のNSCLC患者を対象としたランダム化第3相試験が進められている。 

本試験はアストラゼネカ社の支援を受けた。著者および開示情報の一覧はこちらの論文を参照のこと。

  • 監訳 吉松由貴(呼吸器内科/University of Greenwich, Queen Elizabeth Hospital)
  • 翻訳担当者 工藤章子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/13

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英国、BRCA陽性の進行乳がんに初の標的薬タラゾパリブ https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/nyuugann/post-27212.html Tue, 05 Mar 2024 07:36:34 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27212

キャンサーリサーチUK

タラゾパリブ(販売名:ターゼナ(Talzenna))が、英国国立医療技術評価機構(NICE)による推奨を受け、国民保健サービス(NHS)がBRCA遺伝子変異による進行乳がんの治療に用いるはじめての標的治療薬となる。

NICEでは、化学療法の代わりに本治療薬を用いることで、英国で約300人が恩恵を受けると推定している。臨床試験の結果、本治療薬によりがんの増殖をより遅延させることが示唆されている。

本決定は、タラゾパリブを製造しているファイザー社が、本薬剤をNHSに割引価格で提供した後に下された。NICEは当初、コスト面の懸念から本薬剤を推奨しないとしていた。

BRCA変異を有する人々のための新たな選択肢

乳がん患者の約50人中1人は、(米俳優のアンジェリーナ・ジョリーが有していた)BRCA1およびBRCA2の遺伝子変化に関連していると推定されており、この遺伝子変化は家系に遺伝する可能性がある。

BRCA遺伝子とは何か?

すべての人はBRCA(乳がん)遺伝子を有しており、通常この遺伝子はがんを引き起こす可能性がある細胞増殖を抑制する働きをする。ごく少数の人(450人中1人程度)が、本遺伝子と異なるバージョンの遺伝子を有している。この変化は遺伝する可能性があり、細胞の暴走を抑制できないBRCA遺伝子となって、特定のがんリスクを高めてしまう。

1990年代にわれわれの研究者らはBRCA遺伝子発見を助け、医師らはBRCA遺伝子変異によって引き起こされるがんに共通する特徴を標的とする、タラゾパリブのような治療薬を利用できるようになった。初のパープ(PARP)阻害薬であるオラパリブ(販売名:リムパーザ)も、われわれの科学者チームによって開発された。

オラパリブのような薬剤は、早期乳がんではすでに利用可能である。タラゾパリブに関するNICEの決定は、これらの飛躍的な進歩のおかげで、今後はより進行した乳がん患者をも助けることが可能になったことを意味している。

進行乳がんの標的薬

タラゾパリブは、他剤が効果的に標的にしうるHER2タンパクの受容体をもたない細胞を有する進行乳がんへの使用が推奨されている。トリプルネガティブ乳がんなどのHER2陰性乳がんには、それほど多くの治療選択肢がない。

進行乳がんは、治癒が不可能な程度まで増殖または転移しているため、治療の目的は、良いQOL(生活の質)を保ちながらの延命である。HER2陰性乳がんのサブタイプによって治療法は異なるが、化学療法薬剤を直接静脈内に投与することが多い。
 
患者専門家は、この治療法は困難でありかつ患者を疲弊させてしまう、とNICEに述べた。さらに、化学療法を受ける人は多くの時間を病院で過ごす必要があり、通常の生活を送ることが難しくなると説明した。

対照的に、進行したHER2陰性乳がんでBRCA遺伝子変異を有する患者は、タラゾパリブ1日1錠を自宅で服用することが可能である。

タラゾパリブの有効性は?

NICE委員会は、タラゾパリブを各国医師の選択した代替薬と比較したEMBRACA試験のエビデンスに基づいて推奨した。全生存期間は改善しなかったものの、タラゾパリブは他の治療薬よりも長期間、試験参加者のがんの増殖および健康上の大きな問題の発生を抑制した。

医師や患者らは、本試験結果はタラゾパリブが「できるだけ長く、できるだけ普通の生活」を送ることに役立つことが示されているとNICEに述べた。

多くの場合、NHSはタラゾパリブを、別の一種類以上の乳がん治療薬で既に治療を受けている人々に提供することとなる。タラゾパリブは、他の利用可能な選択肢が適切でない場合の最初の治療薬として使用可能となる。

NICEの決定はイングランドに適用され、通常ウェールズと北アイルランドでも採用される。スコットランドでは、NHSで使用できる薬剤を決定するプロセスが異なる。

  • 監訳 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 翻訳担当者 平 千鶴
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/01/25

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ROS1陽性肺がんでレポトレクチニブが新たな治療選択肢に https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/kokyuukigann/haigann/post-27202.html Thu, 29 Feb 2024 23:45:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27202

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

2023年11月、食品医薬品局(FDA)は、ROS1遺伝子融合と呼ばれる遺伝子変化を有する一部の進行肺がんの治療薬としてrepotrectinib[レポトレクチニブ](Augtyro)を承認した。

このたび、レポトレクチニブの承認につながった臨床試験の全結果が発表された。
 
この臨床試験で、ROS1標的薬の投与歴のない非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約80%で奏効が認められた、つまり腫瘍が縮小したことが、1月11日付のNew England Journal of Medicine誌に報告された。

クリゾチニブ(ザーコリ)やエヌトレクチニブ(ロズリートレク)など、別のROS1標的薬による治療歴のあるNSCLC患者では約40%に奏効が認められた。

ROS1融合遺伝子陽性の進行または転移性NSCLCに対するレポトレクチニブのFDA承認には、初回治療およびROS1標的薬による治療歴のある患者に対する2次治療としての使用が含まれる。
 
TRIDENT-1と呼ばれるこの試験では、ROS1融合遺伝子陽性の肺がん患者127人を含む進行固形がん患者を対象にレポトレクチニブを評価した。

これらの患者の多くで、レポトレクチニブの効果は数年間持続した。

「レポトレクチニブはROS1融合遺伝子陽性の肺がん患者に長期にわたる奏効をもたらすことが可能で、対象には分子標的療法歴のある患者もない患者も含まれます」と、TRIDENT-1試験を主導したスローンケタリング記念がんセンターのAlexander Drilon医師は述べた。

レポトレクチニブによる治療により、肺がんの転移が多い部位である脳に転移した腫瘍も縮小したと、研究者らは報告した。 

レポトレクチニブは薬剤耐性を引き起こす一部のROS1遺伝子変異を克服できる

一部の肺腫瘍ではROS1に遺伝子変異が生じ、クリゾチニブやエヌトレクチニブが効かなくなることがある。レポトレクチニブは、G2032Rと呼ばれる変異など、これらの耐性変異のある腫瘍に効果があるようにデザインされた。

TRIDENT-1試験では、腫瘍にG2032R変異のある17人中10人(59%)でレポトレクチニブの効果が認められた。この試験はレポトレクチニブのメーカーであるブリストル・マイヤーズ スクイブ社から資金提供を受けた。

「レポトレクチニブは他のROS1阻害薬では克服できない耐性変異を克服することができますが、他のROS1標的薬よりも副作用が多いということはなさそうです」と、フロリダのMemorial Cancer Instituteで胸部腫瘍学プログラムを指導し、この試験に関与したLuis Raez医師は述べた。

次のステップとして重要なことは、個々の患者での異なるROS1標的薬の最適な使用法について、医師が決定する際に役立つ研究を行うことであると、複数の専門家は述べた。

ROS1融合遺伝子陽性の進行肺がんの治療選択肢を広げる

ROS1遺伝子の融合は、ROS1遺伝子の一部が切断され、別の遺伝子に結合することで起こる。ROS1融合遺伝子陽性の肺がん細胞では、遺伝子融合の結果として産生されるROS1タンパク質が過剰に活性化し、制御不能な細胞増殖や腫瘍を引き起こす。ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者の最大2%に認められる。

この融合遺伝子は通常、喫煙歴がほとんどないか、まったくない人に認められるが、ヘビースモーカーでも検出されている。

レポトレクチニブはROS1融合タンパク質の活性を阻害する。クリゾチニブとエヌトレクチニブはROS1融合遺伝子陽性の一部の肺腫瘍を縮小させるが、タンパク質を過剰に活性化させる他の特定のROS1遺伝子変異陽性腫瘍には効果がない。新しい治療法の必要性から、研究者らは次世代のROS1標的治療を開発した。

患者がカプセルとして服用するレポトレクチニブは、この研究から生まれた最初の承認薬である。レポトレクチニブは、ROS1に加えて、ALKや複数種のNTRKタンパク質など、がん細胞の増殖を促進する他のタンパク質も標的とする。

レポトレクチニブの持続する抗腫瘍効果

TRIDENT-1試験では、ROS1標的薬の投与歴のない71人中56人(79%)に少なくとも18カ月間の奏効が認められた。無増悪生存期間(病状が悪化するまでの期間)の中央値は約36カ月であった。 

ROS1標的薬の投与歴のある患者では、56人中21人(38%)に奏効が認められた。この群の無増悪生存期間中央値は9カ月であった。

いずれの群の患者にも、少数ではあるが完全奏効(がんの完全消失)が認められた。

レポトレクチニブは脳に転移した肺腫瘍に対しても効果があるようであった。脳転移を有する患者のうち、ROS1標的薬の投与歴のない患者では9人中8人(89%)で脳腫瘍が縮小した。ROS1標的薬の投与歴のある患者では13人中5人(38%)で脳腫瘍が縮小した。

これらの患者の多くで、治療効果は少なくとも1年間持続した。

レポトレクチニブの主な治療に関連した副作用は浮動性めまいであった。この副作用は、薬剤の投与量を減らすか、投与スケジュールを一時的に中断することで管理可能であったと研究者らは記している。

その他の副作用としては、口内に不快な味がする味覚異常、および外部刺激なしに生じる灼熱感やチクチク感などの異常な触覚がみられる感覚異常があった。患者の3%が治療に関連した副作用のためにレポトレクチニブの服用を中止した。

TRIDENT-1臨床試験の限界

TRIDENT-1試験の限界は、レポトレクチニブが第3相ランダム化臨床試験で他のROS1標的薬と直接比較されなかったことであると、Raez医師は述べた。さらに、ROS1 融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんはまれであるため、TRIDENT-1試験の患者数は比較的少なかったと加えた。

利用可能なROS1標的薬を患者で直接比較した試験がない以上、腫瘍内科医は治療法を選択する際に効果の持続性や安全性などの因子を考慮すべきであるとDrilon医師は述べた。

「レポトレクチニブは、承認された3つのROS1標的薬の中で最も無増悪生存期間が長いようです」と同医師は述べた。そして、すでにROS1阻害薬の投与を受けた患者では、レポトレクチニブが現在承認されている唯一の選択肢であると、同医師は付け加えた。

  • 監訳 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)
  • 翻訳担当者 坂下美保子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/2/16

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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軟部肉腫に術前ニボ/ニボ+イピ療法で長期生存が期待 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/nikusyu/post-27184.html Thu, 29 Feb 2024 01:55:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27184

MDアンダーソンがんセンター

軟部肉腫患者にとって術前免疫療法は安全で有効な選択肢となる可能性が、MDアンダーソン主導の第2相試験で示された

術前(ネオアジュバント)免疫療法を受けた軟部肉腫患者は、手術時に残存腫瘍がほとんどなく、長期生存が期待できることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターによる第2相試験から明らかになった。本試験結果は、2月13日Nature Cancer誌に掲載された。

免疫療法と放射線療法を併用した後に残存腫瘍を外科的に切除すると、未分化多形肉腫(UPS)患者の90%で、増殖しうる残存腫瘍細胞が15%以下となり、これまでの放射線療法単独よりも良好な結果が得られた。初回治療から2年後の全生存率(OS)は、切除可能な後腹膜脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)で82%、UPSで90%であった。

「今回の結果は、軟部肉腫に対して免疫療法が果たしうる役割と、術前治療のプラットフォームが、患者さんの新たな治療選択肢の同定に役立つことを示しています」と共同研究者である外科腫瘍学准教授のChristina Roland医師は述べた。「肉腫患者の全身治療の選択肢は限られていますが、この試験データは免疫療法が利用可能であることを裏付けています」。

毎年、米国では約13,000例の軟部肉腫が新たに診断されている。軟部肉腫の中で多いのは、DDLPSとUPSの2つのタイプである。現在、切除可能な軟部肉腫の多くの患者にとって、手術は治癒の可能性がある唯一の治療法であるが、多くの患者で5年以内に再発する。

Roland氏によると、軟部肉腫患者に対する、根治を目的とした手術の前に行う免疫療法について検討された研究は、今回が初めてであった。再発リスクを減らすための現在の治療選択肢は、手術前の放射線療法と化学療法である。

本試験では、成人DDLPS患者17人と、成人UPS患者10人を対象に、ニボルマブ(販売名:オプジーボ)単独またはニボルマブとイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の併用による術前療法を評価した。免疫療法終了後、全員が腫瘍の外科的切除を受けた。サンプルを採取し、患者にとって臨床的に意味のある奏効基準の特定と定義を行い、これを試験の主要評価項目とした。これらのサンプルは、転帰に影響し得る腫瘍因子の検討にも使用された。研究者らは、腫瘍内のB細胞の存在が生存率改善と関連していることを発見した。

「B細胞を評価、検査するために、さまざまな段階で試験参加者の生検を行いました」と、共同研究者で肉腫腫瘍内科准教授のNeeta Somaiah医師は述べた。「これまでの研究で、免疫療法の反応予測には腫瘍内のB細胞の存在が重要であることはわかっていました。今回の研究では、腫瘍内のB細胞が高レベルで発現している患者ほど、奏効する可能性が高いことがわかりました」。

参加者に、手術合併症のリスク増加は認められず、新たな副作用も確認されなかった。観察された副作用は予想されたものであり、対処可能なものであった。よくみられた副作用は発疹、疲労、下痢であった。

この試験の過去の初期データは、2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。本試験は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社の資金提供を受けた。共著者の全リストと開示情報は論文に記載されている。

  • 監訳 遠藤誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院)
  • 翻訳担当者 平沢沙枝
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/02/13

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子宮頸がん治療の画期的進歩ー導入化学療法で死亡率35%低下 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/josei-gann/sikyuugann/post-27183.html Wed, 28 Feb 2024 23:34:17 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27183

キャンサーリサーチUK

(「2023年重大ニュース」より)
キャンサーリサーチUKの助成を受けた研究者らは、既存薬の使用方法を変えることで、過去20年以上の間に子宮頸がん治療に最大の改善をもたらした。

子宮頸がん患者に対して標準治療開始前に化学療法を短期間行うことで、子宮頸がんによる死亡または再発のリスクが35%低下することが、INTERLACE試験結果で示された。

英国では年間約3,300人の女性が子宮頸がんと診断されている(2017〜2019年)。

悲しいことに、英国では年間約860人がこの疾患で死亡している(2018〜2019、2021年)。1999年以来、医師らは化学療法および放射線療法の併用である化学放射線療法(CRT)の方法で、子宮頸がん治療を行ってきた。新たな研究は、化学放射線療法の前に6週間の導入化学療法を行うことにより、より多くの人が、がんを再発せずに生存できることを示した。

5年後、導入化学療法後に化学放射線療法を受けた試験参加者のうち生存していたのは80%、再発または転移が認められなかったのは73%であった。一方、標準治療を受けた試験参加者の場合、それぞれの割合は72%、64%であった。

「がんの治療はタイミングがすべてです」と、Iain Foulkes医師(キャンサーリサーチUK、研究・革新担当理事)は言う。「子宮頸がんの化学放射線治療開始前に導入化学療法を追加するという単純な行為が、この試験で驚くべき結果をもたらしたのです」 。

また、導入療法に使用された2種類の化学療法薬は安価で入手しやすく、すでに使用が承認されているため、新たな標準治療になるのは比較的早いのではないか、と専門家は語る。

「この疾患における転帰がこれほど大きく改善したのは、20年以上ぶりのことです」と、試験責任医師であるMary McCormack医師(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンがん研究所、ユニヴァ―シティ・カレッジ・ロンドン病院)は語る。「私は、この試験に参加した患者全員を大変誇りに思います。彼女たちのおかげで、あらゆる場所での子宮頸がん患者の治療改善に必要なエビデンスを収集することができました」。

この治療法は他のがんにも同様の画期的進歩をもたらす可能性がある。「他のいくつかのがん種でも、手術や放射線治療の前に化学療法を追加することが有効であること示すエビデンスが増えてきています。再発リスクを低下させるだけでなく、すでに世界中で入手可能な薬剤を用いて迅速に運用することができるのです」と、 Foulkes医師は述べた。

  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 佐藤美奈子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/10/31

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リンパ腫様肉芽腫症 免疫療法で生存期間が10倍に延長:NCIミニット https://www.cancerit.jp/douga/post-27172.html Wed, 28 Feb 2024 11:32:40 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27172

免疫療法によって低悪性度疾患から高悪性度疾患への進行が予防できることを示唆する最近の知見について説明しています。
◆──────────────────────────◆
米国国立がん研究所(NCI)が制作した動画に、一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT/ジャムティ)が日本語字幕を付けたものです。

海外がんリファレンス関連記事
https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/rinpasyu/post-12273.html



  • 字幕:平沢沙枝
  • 監修:吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫兵庫医科大学)
  • 原語動画URL:https://youtu.be/ucKM6JxzljM?si=oLvw4snrHRY5TzCT
  • 原語動画公開日:2023/12/9
  • 日本語版公開日:2024/2/28



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抗がん剤不足の危機的状況をASCO副会長が議会で証言 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/gann-iryou/post-27161.html Tue, 27 Feb 2024 05:06:28 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27161

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)副会長および最高医学責任者Julie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は、本日、下院歳入委員会において、抗がん剤不足の危機的現状について証言する。

米国食品医薬品局(FDA)の医薬品不足リストには15種類以上の抗がん剤が掲載され続けており、そのうち数種類は追加供給が不可能となっている。Gralow医師は、深刻な医薬品不足に直面しながら治療を工夫しているASCO会員の実体験を紹介する。また、同氏はこの問題を緩和するための対応策を講じるよう、議会に働きかける。

「連日、私たちは米国中の腫瘍内科医から、がん患者やその医療提供者が、これまでで最悪のがん治療薬不足に直面しているという課題について、報告を受けています」とGralow医師は語る。「この危機は、医療提供者に難しい選択を迫っています。例えば、どの患者が救命や延命のための抗がん剤をスケジュール通りに決められた用量で投与され、どの患者が投与されないかを決めなければならないのです」。

新たにがんと診断された患者の約半数は65歳以上であり、メディケア(米国の高齢者および障害者向け公的医療保険制度)は米国内最大のがん医療費負担制度となっている。そのため、ASCOは議会に対し、以下の3つの分野で早急な対策を講じるよう求めている。

1.支払い
議会は、人為的に低く設定されたジェネリック医薬品の償還率を緩和する(価格を上げる)といった代替的な支払い設定を検討し、それによって医薬品の安定供給をより促進することができるのではないか。医薬品費の支払改革は、品質と供給の安定性を考慮するべきである。

2.製造
議会は、例えば重要な医薬品の連続生産など、先進技術の採用を奨励できるのではないか。また、税額控除や政府との契約など、米国での製造を増やすための刺激策も可能ではないか。

3.品質
議会は、医薬品リスク管理計画書の要件強化や、購入者が品質と安定供給の提供能力を示すメーカーと契約するための刺激策を検討することが可能ではないか。

「この深刻な抗がん剤不足は危機的状況にあります。私たちは行動を起こさなければなりません。がん患者とその家族は、必要な治療を遅滞なくかつ必要な期間受けられると言われて然るべきです」とGralow医師は述べる。「ASCOは、がん患者が必要な救命・延命治療を受けることを保証する包括的な解決策を促進するため、議会と協働してゆく準備があります」。

  • 監訳 高濱隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
  • 翻訳担当者 山口みどり
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  • 原文掲載日 2024/02/06

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進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/hinyoukigann/zenritusengann/post-27149.html Sun, 25 Feb 2024 23:45:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27149

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCO専門家の見解

「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)との併用療法は、臨床的相乗効果のある特異的な作用機序をもちます。これにより、患者の治療選択肢の幅が広がる可能性があります。最も重要かつ目新しいことに、この併用療法は治療が最も困難な患者の一部集団、例えば、内臓の腫瘍転移など、急速に進行する疾患の患者集団で有効でした。CONTACT-02の最初の結果を大変嬉しく思います」とASCOの専門家であるMark T. Fleming 医師は述べた。

試験要旨

目的 骨盤外リンパ節または内臓への転移を伴う転移去勢抵抗性前立腺がん
対象者 新規ホルモン療法で進行したがん患者507人
主な結果 新規ホルモン療法での治療歴がある転移を有する去勢抵抗性前立腺がんで、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者は、新規ホルモン療法の2回目の治療を受けた患者と比較して、画像診断に基づく無増悪生存期間が良好であった。
意義 ・新規ホルモン療法で進行した、骨盤外リンパ節または内臓への転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者は、予後不良であり治療の選択肢も限られている。
・本試験は、内臓転移を有する患者の割合が高い進行した前立腺がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の第3相試験として唯一、画像診断に基づく無増悪生存期間が有意に、かつ臨床的に意義のある改善を示したものである。

骨盤外リンパ節または内臓への転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者で、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者は、ホルモン療法を受けた患者に比べ、病勢進行までの期間が有意に改善した。本研究は、1月25日から27日までカリフォルニア州サンフランシスコで開催される2024年ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムで発表される。

試験について

「転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)は依然として致命的な疾患であり、リアルワールドエビデンス(実臨床で得られるエビデンス)によると、新規ホルモン療法による治療にもかかわらず進行したmCRPC患者の全生存期間中央値は2年未満です。その上、内臓への転移を有するmCRPC患者の中央値はさらに悪く、特に肝臓への転移を有する患者の全生存期間中央値は14カ月未満です。この患者集団はCONTACT-02の患者集団の約4分の1を占め、全体の試験集団で認められたものと同等の有益性が確認されました」と、本研究の筆頭著者であるユタ大学Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal医師は述べた。

CONTACT-02試験では、治療歴のある507人の患者が無作為に割り付けられ、チロシンキナーゼ阻害薬であるカボザンチニブとプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)阻害薬であるアテゾリズマブの併用療法(n=253)またはホルモン療法(n=254)のいずれかの治療法を受けた。チロシンキナーゼ阻害薬は標的療法の一種で、チロシンキナーゼ酵素を阻害してがん細胞の増殖を止める。PD-L1阻害薬は免疫療法薬の一種で、T細胞の表面に存在するタンパク質であるPD-1を標的とし、免疫系がより効果的に病気を排除できるようにするものである。

患者の年齢中央値は71歳で、ベースラインの前立腺特異抗原(PSA)スコアの中央値は25~34 ng/mLであった。患者の約5人に4人が骨転移を有し、4人に3人がリンパ節腫大を有していた。また、患者の約40%が内臓転移を有するがんであった。本試験の主要評価項目は、無作為化された最初の400人の患者の画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)および無作為化された全患者の生存期間(OS)であった。副次的評価項目は全奏効率であった。

主な知見

追跡期間中央値14.3カ月後、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者では、ホルモン療法を受けた患者と比較して、進行または死亡のリスクが35%減少したことが明らかとなり、無増悪生存期間に統計学的に有意な改善が認められた。(無増悪生存期間中央値 6.3カ月対4.2カ月、HR(ハザード比): 0.65、p値(実験の整合性を示す指標):0.0007)。

肝転移を有する患者において、画像診断に基づく無増悪生存期間は併用療法群で6カ月であったのに対し、ホルモン療法群では2.1カ月であった。

ドセタキセル療法による治療歴のある患者において、画像診断に基づく無増悪生存期間は併用療法群で8.8カ月であったのに対し、ホルモン療法群では4.1カ月であった。

6カ月以上の追跡調査後、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者では、ホルモン療法を受けた患者に比べて全奏効率も高かった(それぞれ 13.6%[23/169]対4.2%[7/165])。

グレード3および4の有害事象は、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法群では48%、ホルモン療法群では23%に発現し、グレード5の有害事象はそれぞれ9%対12%に発現した。治療に関連したグレード3~4の有害事象で最も発現頻度が高かったのは高血圧で7%、次いで貧血6%(コントロール群より少なかった)、下痢4%、倦怠感4%であった。

次のステップ

CONTACT-02試験は全生存期間データを収集するために継続中であり、研究者らは患者から報告された治療効果の分析も計画している。

本試験はExelixis,Inc.社から資金提供を受けた。

  • 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
  • 翻訳担当者 山口みどり
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/01/22

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【JAMT Café】喫煙について② 政治的に解決が可能 Dr.イアンウォーカー https://www.cancerit.jp/douga/post-27142.html Wed, 21 Feb 2024 12:57:32 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27142

喫煙について② 政治的に解決が可能 Dr.イアンウォーカー

【JAMT Café】(ジャムティ・カフェ) 
『海外がん医療情報リファレンス』の記事を取り上げ、専門家がわかりやすく解説します。

■■今回ご紹介する動画・記事■■■■
記事「政治的に解決が可能」ーDr.イアン・ウォーカー」
https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/kituenn/post-12242.html

■■解説■■■■■■■■■■■■■■
久保田馨先生(日本医科大学呼吸ケアクリニック 副所長/臨床腫瘍部門長、JAMT理事長)

■■目次■■■■■■■■■■■■■■
00:13 今日の記事
01:50 喫煙と経済格差の関係
02:32 タバコと肺がん
04:33 喫煙の影響
06:31 社会的・経済的損失

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一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT・ジャムティ) は、信頼性の高いがんの最新情報をお届けする非営利団体です。 『海外がん医療情報リファレンス』( https://www.cancerit.jp/
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がん検診を受ける人が増えるとどうなる? https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/gann-kensinn/post-27116.html Tue, 20 Feb 2024 23:45:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27116

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

このモデリング研究を開始した理由は?

NCIが出資するCancer Intervention and Surveillance Modeling Network (CISNET)は、私たちのような研究チームが、シミュレーションモデルを使用して、がんの検診や予防方法、ならびにがんの制御方法が変わることによる影響について質問に答えられるよう支援しています。

バイデン政権は、今後25年間でがんによる死亡率を50%以上低下させるというキャンサー・ムーンショットという目標を掲げています。私たちのチームは検診の普及がこの目標にどれだけ貢献できるかを考えました。

モデリング研究でわかったことは?

2021年の検診対象となる米国居住者において、USPSTFが推奨する検診受診率が10%ポイント増加した場合について、検診対象者がUSPSTF推奨開始年齢で検診を受け、かつ検診を生涯にわたって継続すると仮定して検討しました。

この10%ポイントの増加により、肺がんによる死亡数を1,010人(2021年の検診対象者45万4,000人中)、大腸がんによる死亡数を1万1,070人(対象者391万人中)、乳がんによる死亡数を1,790人(対象者218万人中)、子宮頸がんによる死亡数を1,710人(対象者213万人中)予防できることが判明しました。

研究の前提として検診の10%ポイント増加を選んだ理由は?

検診受診率はがん種によってさまざまです。現在、肺がん検診対象者の約13%が肺がん検診を受けており、大腸がん検診対象者の69%、子宮頸がん検診対象者の73%、乳がん検診対象者の76%が、それぞれ検診を受けています。

私たちは、がん検診のベースライン時の状態にかかわらず、すべてのがん検診で増加の程度が同じになるように、検診受診率が10%ポイント増加した場合の影響を評価することにしました。

例えば、10%ポイント増加すれば、肺がん検診受診率は23%、大腸がん検診受診率は79%になります。もちろん、USPSTFが最近推奨した肺がん検診は、他の種類のがん検診よりもはるかに改善の余地があります。

これらの解析が、検診の有益性に相対するリスク/有害性の理解に及ぼす影響は?

私たちの解析では、推奨されるがん検診の受診率が10%ポイント増加すれば、検診受診者の生涯にわたり、肺のスキャンによる推定10万件の偽陽性判定、大腸内視鏡による6,000件の合併症(出血など)、マンモグラフィ検査による30万件の偽陽性判定、34万8,000件の子宮頸部生検などの不利益が発生することが示されました。

意思決定者は、個人であっても医師であっても医療制度であっても、検診の有益性がリスクを上回るかどうかを考慮しなければなりません。これは、まだ厳密な評価の対象となっていない新しい検査において特に重要です。

研究で得られた意外な知見や、特に強調したい発見は?

私たちの論文の中でも特に興味深い知見の一つは、USPSTFが推奨する検診戦略の普及率が10%ポイント増加すれば、現在の検診と治療の傾向が継続した場合の予測数と比較して、2021年に新たに検診の対象となった人の生涯における肺がん死亡は1%、大腸がん死亡は21%、乳がん死亡は4%、子宮頸がん死亡は40%減少する可能性があるということです。

大腸がんと子宮頸がんの死亡者数が大幅に減少したことは、当初は驚きでしたが、この結果は理にかなっています。肺がんや乳がんの検診とは異なり、大腸がんや子宮頸がんの検診では、これらのがんの前駆病変も発見し治療することができます。つまり、これらの推定減少率は、大腸がん検診と子宮頸がん検診の予防と早期発見能力の複合効果を表しています。

肺がん検診の受診率増加による肺がん死亡の減少がわずかであったことも、当初は意外でした。大腸がん検診、乳がん検診、子宮頸がん検診の推奨が年齢のみに基づいているのに対し、肺がん検診の対象者は一定の喫煙歴のある人だけであるからと解釈しています。

また、肺の検診と禁煙プログラムを併用することで、肺がんによる死亡をさらに予防できることも明らかになりました。もちろん、禁煙は他のタバコ関連の死因も防ぐことになります。

研究の限界に関する注意点は?

当然ながら、モデルは現実を完全に反映することはできませんが、十分に検証されたモデルは、帰結を改善する上で可能性のある手段を明らかにすることができます。私たちのモデルはそれができると考えています。

研究の限界の一つは、10%ポイント増加した受診者は、USPSTFが推奨する通りにきちんと検診を受けると仮定したことです。すなわち、推奨された年齢で検診を開始し、その後推奨された間隔で検診を反復して受け、検診で異常結果が出た場合には推奨されたすべての検査と処置を受けると仮定しました。残念ながら、現実の世界はこの理想とは異なるため、この結果は最善のシナリオと見なされるべきです。

また、推奨通りに検診を実施しなかった場合に結果がどのように変化するかを示しました。例えば、45歳から10年ごとに大腸内視鏡検査の実施するのではなく、50歳で大腸内視鏡検査を1回しか実施しなかった場合、検診受診率10%ポイント増加によって免れる大腸がん死亡数は32%減少すると推定されました。

検診率が低い理由は? その対処方法は?

検診受診率が国の目標を下回っているのには多くの理由があります。これらの理由のいくつかは、制度的な偏見、医療サービスへのアクセスの欠如、システムの複雑さなど、米国の医療システムの性質を反映しています。

さらに、すべての臨床医が現在の検診推奨事項を認識しているわけではなく、認識していても患者に検診を推奨していない臨床医もいます。検診受診率を高めるためのさらなる努力ががんによる死亡の減少につながることを、私たちの研究で証明できればよいと願っています。

この試験から得られた課題は?

推奨される検診の受診率が増加すれば、米国におけるがんの負担軽減に役立つでしょう。しかし、乳がん、子宮頸がん、大腸がんおよび肺がんの検診受診率の全体的な向上だけに焦点を当てれば、25年以内にがん死亡を50%減少させるというバイデン政権の目標は達成されない可能性が高いことが、今回の結果から示唆されました。

予防と治療の進歩とともに、がん死亡リスクの高い人々の検診受診率を高めるように的を絞った取り組みが必要でしょう。

  • 監訳 斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)
  • 翻訳担当者 三宅久美子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/1/26

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/kotuzuisyu/post-27101.html Tue, 20 Feb 2024 01:20:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27101

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCO専門家の見解

「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、ボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)、デキサメタゾン(DVd)の併用療法は FDA の承認を受けており、1回以上の治療後に再発した多発性骨髄腫患者に広く使用されています。DREAMM-7 試験で得られた知見は、臨床の現場を変えるものであり、BVd が再発・難治性多発性骨髄腫に対する新たな標準治療となる可能性があることを示唆しています」。
ー Oreofe O. Odejide医師、公衆衛生学修士、ASCO血液腫瘍専門医

belantamab mafodotin[belamaf、ベランタマブ マホドチン]とボルテゾミブ、デキサメタゾンの 3 剤併用療法(BVd)は、再発/難治性多発性骨髄腫患者において、現在の標準治療と比較して、無増悪生存期間を有意に改善することが、BVd療法とDVd療法の3剤併用療法同士を直接比較した試験で証明された。これらの結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの 2024 年 2 月のセッションで発表される。

多発性骨髄腫の初回治療中または治療後に再発した患者に対する現在の治療選択肢には、ダ ラツムマブ、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの 3 剤併用療法(DVd)がある。これまでの研究では、再発または難治性(がんが治療に反応しないことを意味する)の多発性骨髄腫患者の治療に、BCMA 標的抗体薬物複合体であるベランタマブ マホドチンを標準治療と併用することが支持されている。

DREAMM-7試験では、過去に1回以上の治療を受けた患者494人が、BVd群(243人)とDVd群(251人)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値28.2カ月後、無増悪生存期間(がんが進行しなかった期間)中央値はBVd群で36.6カ月、DVd群で13.4カ月であった。重篤な副作用はBVd群では半数が経験したのに対し、DVd群では37%であった。眼の副作用はBVd群の79%、DVd群の29%が経験したが、対処可能であった。

「DREAMM-7 試験の結果は、BVd 療法が再発・難治性多発性骨髄腫患者の転帰を改善し、同時に管理可能な安全性プロファイルを有することを示しています。こうした結果は、BVd3剤併用療法がこれらの患者に対する新たな標準治療の選択肢となる可能性を支持するものです」と筆頭著者であるサラマンカ大学病院(スペイン、サラマンカ)のMaria-Victoria Mateos博士は述べている。

演題と発表は、2024年2月6日午後3時(米国東部標準時)より、こちらでご覧いただけます。

  • 監訳 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/02/05

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進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/hihugann/post-27093.html Tue, 20 Feb 2024 01:30:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27093

米国がん学会(AACR)

ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メラノーマ患者の腫瘍に対し、標準的な約3カ月後ではなく、わずか1週間後に画像検査をしたところ、治療効果および無増悪生存期間(PFS)と一致する代謝変化が確認されたことが、米国がん学会(AACR)の学術誌Clinical Cancer Researchで発表された。

がん免疫療法は、多くの悪性腫瘍の標準治療を一変させてきたが、すべての患者に対して治療が奏効するわけではなく、治療により重篤な有害事象が発生することもある。免疫療法を受けた患者は一般的に、治療開始後3カ月前後で経過を観察するために画像検査を受けるが、より最近の臨床試験では3〜6週間後、場合によっては2週間程度で画像検査を行うことの有用性が検討されている。しかし、ペンシルバニア大学病院の放射線科准教授であるMichael D. Farwell医師は、さらに結果を早く観察できるかどうかを調べる研究を計画した。目標は、これらの治療を受けている患者の管理の指針となり、効果が期待できない患者の毒性を回避するための非侵襲的画像バイオマーカーを同定することだった。

Farwell氏らは、がんの検査法として最も一般的で容易に利用可能な18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET/CTを用いて、治療開始1週間後に腫瘍に代謝の変化が見られるかどうかで確認できるという仮説を立てた。患者に免疫療法が奏効すれば、活性化した免疫細胞が腫瘍に浸潤するため、スキャン画像では最初にFDG活性の上昇が見られると予想される。Farwell医師はこれを代謝フレア(MF)と呼んでいる。その後、腫瘍が治療に反応するにつれ、腫瘍細胞は死滅して安定した代謝段階に戻り、最後はFDG活性の低下を示す代謝的奏効(MR)で終わる。対照的に、治療に反応しない腫瘍を有する患者は、安定した代謝を維持したままと予想される。

「免疫療法に対する反応は非常に早く、3週間後に画像を撮ってもこのフレアを確認することは難しく、場合によっては既に終わっています。腫瘍が残っていないのです」とFarwell氏は説明した。「1週間後に画像検査を行うもう一つの利点は、かなり短い間隔で反応曲線を観察できることです。もっと長い間隔での経過観察では、非奏効例において腫瘍が成長する時間も長くなり、解析が複雑になります」

この仮説を検証するため、研究者らはペムブロリズマブ投与開始予定の進行メラノーマ患者21人を募集した。本試験では、患者は少なくとも1つの測定可能な病変を有し、抗PD-1療法または抗PD-L1療法による治療歴がないことが条件とされた。FDG PET/CT画像検査は、各患者の治療開始前4週間以内と、ペムブロリズマブ初回投与後約1週間に実施された。2人の患者が両方のスキャンを完了しなかったため、その結果は除外された。

各病変のFDG活性は、最大標準取り込み値(SUVMAX)を用いて測定された。本試験では、腫瘍のSUVMAXが70%を超えて増加したものをMFと定義し、腫瘍のSUVMAXが30%を超えて減少したものをMRと定義した。MFまたはMRは、治療が奏効した患者の55%(11人中6人)、および奏効しなかった患者の0%(8人中0人)で確認された。MFまたはMRは生存期間の延長とも相関し、MF-MR群では83%が全生存期間3年であったのに対し、代謝安定群では62%であった。さらに、PFSの中央値はMF-MR群で38カ月以上だったが、代謝安定群で2.8カ月だった。

Farwell氏らは、患者間で奏効の速度に不均一性があること、さらに同一患者においても病変間で不均一性があることを観察した。これはFarwell氏が今後の研究で取り組みを考えている課題である。さらに腫瘍はMF反応とMR反応の間に安定した代謝段階を通過するため、安定した代謝を示す腫瘍が実際には反応しているが、反応段階の間にあるのかどうかを識別することが鍵となる。Farwell氏によれば、その解決策として血液検査、CD8 PETスキャン、連続FDG PET/CT画像検査などを併用して研究に含めることで、経時的変化をより明確にすることが考えられるという。

「この結果は検証の必要がありますが、広く適用できる可能性があり、奏効している患者には治療の漸減や手術の回避、治療の漸増が必要な非奏効者の同定、治療が有効かどうかを検証するための第I相臨床試験に使用できる可能性があります」とFarwell氏は説明した。

本研究の限界としては、1施設での比較的小規模なサンプルであり、病勢が安定している患者が含まれていないことが挙げられる。また、治療前の患者の最初の画像検査から治療開始後の画像検査までの間隔にばらつきがあった。さらにPET/CTにおいて4つの異なるスキャナーが使用されており、SUV測定にばらつきがでた可能性もある。

本研究は以下の団体より資金提供を受けた。the Investigator Studies Program of Merck Sharp & Dohme LLC, ImaginAb, the National Cancer Institute of the National Institutes of Health (including the Specialized Program of Research Excellence (SPORE) in Skin Cancer), the RSNA Resident/Fellow Research Grant, the Tara Miller Melanoma Foundation, the Melanoma Research Alliance, the David and Hallee Adelman Immunotherapy Research Fund, the Parker Institute for Cancer Immunotherapy Bridge Scholar Award。Farwell氏はまた、Bristol Myers Squibb及び Carisma Therapeutics、Abcuro, Inc. から、本研究以外での個人への助成を受けたことを報告している。

  • 監訳 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)
  • 翻訳担当者 片瀬ケイ
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/01/24

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若年成人の大腸がん罹患率増加に肥満とアルコールが関与 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/syoukakigann/daityougann/post-27071.html Mon, 19 Feb 2024 01:30:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27071

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

2024年におけるEUと英国のあらゆるがんによる死亡率を専門家が予測

欧州連合(EU)と英国における25〜49歳の大腸がんによる死亡率の上昇には、過体重と肥満が関与しているが、この種のがんによる死亡率は欧州全体で減少している。

これらの知見は、1月29日(月曜日)、有力ながん専門誌Annals of Oncology誌 [1]に掲載された新たな研究から得られたもので、2024年におけるEUと英国のがんによる死亡率を予測したものである。EUの一部の国々で若年成人の大腸がんによる死亡率の増加が予測されたのは初めてのことであり、研究者らが2021年に初めて指摘した英国の傾向を裏付けるものである。

ミラノ大学(イタリア)の医療統計・疫学教授であるCarlo La Vecchia教授(医師)が率いる研究者らは、若年層の大腸がんによる死亡率が最も上昇するのは英国で、2018年と比較して、2024年には男性で26%、女性で39%近く上昇すると予測している。イタリア(男性で1.5%増、女性で2.6%増)、スペイン人男性(5.5%増)、ポーランド人男性(5.9%増)、ドイツ人女性(7.2%増)でも増加が見られる。

「若年層の大腸がん発生率上昇の主な要因には、過体重、肥満と、それに関連する高血糖や糖尿病などの健康状態が含まれます」とLa Vecchia教授は言う。

「その他の理由としては、欧州の中部や北部および英国における長期にわたる飲酒量の増加と、身体活動の低下が挙げられます。アルコール摂取は早期発症の大腸がんと関連しており、フランスやイタリアなどアルコール摂取量が減少した国では、このがんによる死亡率がそれほど顕著に上昇していません。早期発症の大腸がんは、高齢者で診断される大腸がんと比較して悪性度が高く生存率が低い傾向があります」。

「各国政府は、身体活動の増加、過体重や肥満の人の減少、アルコール消費量の減少を奨励する政策の強化を検討すべきです」。

「予防の観点から、政府は大腸がん検診を45歳以上の若い年齢層にも拡大することを検討すべきです。検診プログラムはヨーロッパ各地で異なりますが、米国では若年層の大腸がん罹患率が増加していることから、米国予防医学専門委員会(US has prompted the US Preventive Service Task Force)は検診の開始年齢を45歳に引き下げるよう勧告しています」。

研究者らは、EU27加盟国[2]全体と英国でのがん死亡率を分析した。EU加盟国のうち最も人口の多い5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン)を対象に、男女別に胃、腸、膵臓、肺、乳房、子宮(子宮頸部を含む)、卵巣、前立腺、膀胱、白血病について調べた[3]。La Vecchia教授らは、1970年から2018年までのEU27カ国と英国の死亡データを、世界保健機関(WHO)とユーロスタットのデータベースから収集した。研究者たちがこれらの予測を発表するのは今年で14年連続となる。

すべてのがん
EU27カ国では、すべてのがんの年齢標準化死亡率[4]が、男性では2018年の人口10万人当たり132人から2024年には123人へと6.5%低下し、女性では10万人当たり82.5人から79人へと4%低下すると予測している。EUでは合計約1,270,800人が、がんにより死亡することになる。

英国では、2024年にすべてのがんによる年齢標準化死亡率が、男性では10万人当たり120人から104人へと14%近く低下し、女性では10万人当たり92.5人から83人へと10%低下すると予測されている。

しかし、高齢者人口が増加しているため、EUにおける実際のがん死亡者数は、2024年には男性で2018年の675,265人から705,100人以上に、女性では535,291人から565,700人以上に増加し、また英国では、死亡者数は男性で91,059人から92,000人に、女性で79,631人から80,900人へと、合計約172,900人増加すると予測されている。

1989年から2024年までの36年間で、研究者らは、がんによる死亡率が1988年の割合で一定であると仮定して、回避されたがんによる死亡者数を計算した。その結果、EUでは合計6,183,000人(男性4,244,000人、女性1,939,000人)、英国では合計1,325,000人(男性899,000人、女性426,000人)のがんによる死亡が回避されたと推定している。

肺がん
肺がんによる死亡率は男性で低下しているが、EUでも英国でも男女ともに最も死亡率の高いがんであることに変わりはない。研究者らは、EUにおける2024年の死亡率を10万人当たり男性28人、女性13.6人と予測している。これは、男性では2018年から15%減少しているが、女性では減少していないことを表している。英国では、肺がんによる死亡率は10万人当たり男性19人、女性16人となり、男性では22%、女性では17%減少することになる。

大腸がん
EUでも英国でも、大腸がんは現在、男性では肺がんに次ぐ2番目に多い死因であり、女性では乳がん、肺がんに次ぐ3番目に多い死因となっている。非喫煙者では、EUと英国で男女を合わせたがん死亡原因の第1位である。

2018年と比較して、EUにおける大腸がんによる死亡率は、2024年には5%低下して10万人当たり男性15人、女性では9%低下して10万人当たり8人になると予測されている。英国では、男性は10万人当たり3%減の14人と予測されるが、女性では10万人当たり約10人と横ばいである。

「このような全体的に好ましい傾向は、大腸がんの診断と治療の改善によって説明できます。死亡率は、検診や早期診断へのアクセスが改善された国々で低下する傾向にありますが、若年層における死亡率の増加が懸念されます」とLa Vecchia教授は述べている。

乳がん
欧州と英国では乳がんの死亡率が改善し続けている。2024年には、EUの女性は10万人当たり2018年の14人から13人に6%低下し、英国では10万人当たり15人から13人に11%低下すると研究者らは予測している。

この研究の共同リーダーであるボローニャ大学(イタリア)のEva Negri教授によれば、「乳がんの診断の進歩は死亡率の大幅な低下に寄与していますが、治療と管理の改善がより多くの人々が生存している主な理由です」。

膵臓がん
膵臓がんは、発見も治療も非常に困難であり、EU(英国を除く)では男女ともに死亡率の改善が見込まれない唯一の主要ながんである。欧州では、膵臓がんは新規がん診断の3%以上を占めるが、がん死亡の約7%を占め、あらゆるがんによる死亡原因の第4位である。

EUでは、死亡率は男性で1.6%、女性で4%上昇すると予測されている。英国では、男性で7%、女性で2%低下すると予測されるなど良い傾向が見られる。

「喫煙は膵臓がんの主な危険因子ですが、経時的な死亡率の上昇を説明する一部でしかありません。過体重、肥満、糖尿病、アルコールの大量摂取も一役買っているかもしれません」とNegri教授は述べている。

「これらの予測は、タバコの使用をコントロールし、最終的には排除することの重要性を強調しています。EUでは依然として、男性のがんによる死亡全体の25%、女性の15%がタバコに起因しています。タバコは肺がんだけでなく、膵臓がんなど他のいくつかのがんによる死亡の主な危険因子でもあります。欧州の中部や北部における大量飲酒の増加を抑制することはさらなる課題です」とLa Vecchia教授は結論付けている。

「この予測はがんの診断と治療に関して欧州各国間の格差をなくすことの重要性も強調しています。ポーランドやその他の中欧・東欧諸国では死亡率が依然として高く、その一因として、乳がん、子宮頸がん、大腸がんなどのがんを発見するための検診プログラムが不十分であることや、最新の治療法を利用できないことが挙げられています」。


[1] 「大腸がんを中心とした2024年の欧州がん死亡率予測」、 C. Santucci氏他著、 Annals of Oncology、 doi: 10.1016/j.annonc. 2023.12.003
[2] この分析の時点では、EUには27カ国が加盟しており、英国は2020年に離脱する。キプロスを分析から除外したのは、入手可能な長期データが十分でなかったからである。その他の国々はすべて、少なくとも1970年までさかのぼるデータを有していた。
[3] この論文には、6カ国それぞれのがん死亡率の表が掲載されている。
[4] 人口10万人当たりの年齢標準化死亡率は、人口の年齢分布を反映するように調整された年間死亡確率を反映している。

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/01/29

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多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果 https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/kotuzuisyu/post-27069.html Mon, 19 Feb 2024 01:50:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27069

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象とした大規模ランダム化臨床試験で、標準治療レジメンにダラツムマブ(販売名:ダラキューロ配合皮下注)を追加することで、標準治療レジメン単独よりも高い効果が得られることが明らかになった。

ダラツムマブの治療を受けた試験参加者では、標準治療のみを受けた参加者に比べて、がんが悪化あるいは死亡することなく生存する期間が大幅に延長していた。

中央値4年後において、ダラツムマブ+標準治療を受けた患者の84%、ボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)、レナリドミド(販売名:レブラミド)、デキサメタゾンを併用する標準治療を受けた患者の68%が、がんが悪化することなく生存していた。

「これは無増悪生存期間における顕著な利益なのです」と、マイアミ大学シルベスター骨髄腫研究所所長C.Ola Landgren医学博士(この臨床試験には関与していない)は述べた。

ダラツムマブの治療を受けた患者ではまた、治療後にがんの徴候(微小残存病変、MRDと呼ばれる)が検出されない傾向がみられた。PERSEUSと呼ばれるこの試験の結果は、New England Journal of Medicine誌に掲載されるとともに、米国血液学会年次総会において12月12日に発表された。

2020年、小規模な臨床試験において、この標準治療レジメンへのダラツムマブの追加が、新たに多発性骨髄腫と診断された患者に大きな利益をもたらすことが示された。

この薬剤の併用処方をすぐに開始した医師がいる一方で、より確かなデータが得られるのを待ち続けた医師もいると、スタンフォード大学血液腫瘍医Surbhi Sidana医師は説明した。

「新たな試験から得られた結果は、第3相試験の無増悪生存期間のデータを期待していた人々にとって、この問題に決着をつける非常に重要な確認データとなります。待ち望んでいた患者においては、これで治療法が変わることになります」とSidana医師は米国血液学会年次総会で述べた。

ダラツムマブは他の薬剤の組み合わせとの併用が米国食品医薬品局(FDA)により承認されているが、新規に診断された多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンとの併用は、まだ承認されていない。

ダラツムマブの静脈内投与と皮下投与

多発性骨髄腫と診断された多くの若年者に対する初期治療には、薬剤の組み合わせによる治療、幹細胞移植など複数の段階がある。

この治療方法は10年以上前から実施されていると、PERSEUS試験のリーダーであり、オランダにあるエラスムスMCがん研究所のPieter Sonneveld医学博士は述べた。

研究者らはこの10年間、薬剤の組み合わせの微調整や、新しい薬剤との入れ替えや追加による新たな組み合わせにより、がんを根絶できるか、再発を遅らせることができるかどうかを調べてきた。

「PERSEUS試験では、ダラツムマブを追加することで標準治療の改善を試みました」とSonneveld医師は述べた。

ダラツムマブは標的がん治療薬であり、多発性骨髄腫細胞を死滅させると同時に、免疫細胞にがん細胞を死滅させるように働きかける。投与方法は、血管からの注入(静脈内投与)と皮膚の下への注射(皮下投与)がある。

どちらの投与経路でも多発性骨髄腫に対する効果は同程度であるが、ダラツムマブの皮下投与では副作用が少なく、患者への時間的な負担がはるかに軽い。静脈内投与は数時間かけて行われるが、皮下投与は数分しかかからないとLandgren医師は説明した。

2020年の試験では、ダラツムマブは静脈内投与された。しかし、それ以降は皮下投与が好まれるようになったとLandgren医師は述べた。PERSEUS試験では、ダラツムマブは皮下投与された。

PERSEUS試験

新たに多発性骨髄腫と診断された患者700人以上が参加した本試験は、ヨーロッパとオーストラリアの14カ国で実施され、ダラツムマブを製造するJanssen社より一部資金の提供を受けた。

参加者は全員、幹細胞移植を受けられる患者、すなわち一般的に年齢が若く、全身状態が良好な患者であった。すべての参加者は、以下の標準治療に加えて、ダラツムマブの皮下投与を行う群あるいは行わない群に無作為に割り付けられた。

  • ボルテゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンによる導入療法
  • 幹細胞移植
  • ボルテゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンによる地固め療法
  • レナリドミドによる維持療法

ダラツムマブ投与群の患者には、導入療法、地固め療法、維持療法の一環としてダラツムマブが投与された。

研究者らは中央値で約4年間、複数の指標を用いて患者の転帰を追跡調査した。すべての指標において、標準治療レジメン+ダラツムマブは標準治療レジメン単独よりも有効であった。

例えば、ダラツムマブ投与群では、完全奏効または厳格な完全奏効(従来の血液検査などでがんの徴候が認められない)、MRD陰性(高感度のDNA検査でがんの徴候が認められない)などの深い奏効が得られる割合が高かった。

ダラツムマブ+標準治療 標準治療
4年後の無増悪生存率 84% 68%
完全奏効または厳格な完全奏効 88% 70%
MRD陰性 75% 48%
少なくとも1年間MRD陰性 65% 30%

ダラツムマブ投与群で少なくとも1年間MRD陰性が続いた患者では、維持療法としてのダラツムマブの投与を中止可能とし、がんのない状態が維持された。維持療法のために長期的に服用する薬剤の量を減らすことが、幸福感や生活の質(QOL)の向上につながることが多いため、これは重要なことであるとSonneveld医師は述べた。

標準治療にダラツムマブを追加することで、がんの増悪または死亡のリスクが60%近く低下した(ハザード比0.42)と研究者らは結論づけた。

「この変化の大きさは、多発性骨髄腫を対象としたこのような第3相試験では前例がありません」とSonneveld医師は述べた。

ダラツムマブにより患者の生存期間がどれだけ延長するかについては、まだ十分な追跡調査が行われていない。試験は進行中であり、引き続き全生存期間を追跡調査する予定であると研究者らは述べた。

ダラツムマブ上乗せによる副作用

ダラツムマブ投与群の患者では、感染症、好中球減少症や血小板減少症などの副作用が多くみられた。

ダラツムマブ投与群では、重篤な副作用を経験した患者の割合が標準治療群よりも高かった(57%対49%)。しかしながら、副作用のために治療を中止した患者は、ダラツムマブ投与群では少なかった(9%対22%)。

ダラツムマブ投与群の11%、標準治療群の7%の患者が、2種類目のがん、つまり多発性骨髄腫ではないがんを発症した。幹細胞移植を受けられた患者は、ダラツムマブ投与群の方が標準治療群よりわずかに多かった(90%対87%)。幹細胞移植の重篤な副作用は、さらなるがんを発症するリスクがあることである。

副作用に関連した合併症で死亡した患者の割合は、両群とも同程度であった(ダラツムマブ投与群4%、標準治療群5%)。

治療選択肢の中のひとつ

PERSEUS試験で得られた結果から、多発性骨髄腫患者の治療法に新たな選択肢が加えられることになるだろうとLandgren医師は述べた。

新たに多発性骨髄腫と診断された患者に対して、ダラツムマブを別の薬剤の組み合わせと併用することは、既にFDAにより承認されている。その一つとして、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、サリドマイド(サロミド)の組み合わせがある。

さらに、その他の選択肢も出てくる可能性がある。現在進行中のADVANCE試験では、新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象に、ダラツムマブ+別の3剤併用療法(カルフィルゾミブ[カイプロリス]、レナリドミド、デキサメタゾン)を、3剤併用療法単独と比較している。

また、別の臨床試験では、ダラツムマブと同じタンパク質を標的とするイサツキシマブ(サークリサ)を、カルフィルゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンに追加した場合の効果を検討している。米国血液学会年次総会でも発表された本試験の予備結果から、新たに診断された多発性骨髄腫に対してこの併用療法が有望であることが示唆された。

現時点で明らかになってないことは、ダラツムマブの有効性を得るために、移植前後のすべての治療段階でダラツムマブを患者に投与する必要があるかどうかであるとLandgren医師は述べた。

現在進行中のある臨床試験では、この疑問について検討がなされている。この試験では、ダラツムマブがボルテゾミブ、サリドマイドおよびデキサメタゾンに追加された。この臨床試験の初期の結果で、ダラツムマブは標準治療レジメンの3段階すべてに追加された場合に最も効果的である可能性が示唆されている。

  • 監訳 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)
  • 翻訳担当者 田村克代
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/1/19

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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胞巣状軟部肉腫 免疫療法薬アテゾリズマブの承認:NCIミニット https://www.cancerit.jp/douga/post-27055.html Fri, 16 Feb 2024 12:57:00 +0000 https://www.cancerit.jp/?p=27055

胞巣状軟部肉腫 免疫療法薬アテゾリズマブの承認:NCIミニット

NCIミニットビデオシリーズは、米国国立がん研究所(NCI)のジェームズ・アレキサンダー報道部長のデスクから、最先端のがん研究成果を紹介するものです。この動画では、進行性胞巣状軟部肉腫に対する免疫療法薬アテゾリズマブの承認について説明しています。
本承認に関する情報はこちら

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米国国立がん研究所(NCI)が制作した動画に、一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT/ジャムティ)が日本語字幕を付けたものです。
海外がんリファレンス関連記事
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