貧血は肺癌および胃癌手術の転帰*に予後不良因子
Anemia is a Poor Prognostic Factor for Outcomes in Surgery for Lung and Gastric
Cancer. 2005/8
Cancer Consultants
メリーランド大学の研究者の報告によると、手術のみの治療を受けたステージⅠ~Ⅱの非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存率は、貧血患者の方が貧血でない患者よりも低い。[1]韓国の研究者も術前の貧血と、手術を受けたステージⅠ~Ⅱの胃癌患者の生存率の低さの関連性を明らかにしている。[2]
貧血は数種の癌患者の悪い結果と関連付けられてきた。しかしこれらの研究に含まれた癌の大半は進行癌で、化学療法または放射線療法、あるいはその両方で併用治療されていた。貧血と、手術で治療した癌の転帰との関連性はそれほど十分には研究されていない。
貧血は低酸素症を引き起こし、それにより化学療法および放射抵抗を引き起こすとされてきた。仮にそうだとすれば、治療に先立ちAranesp(darbepoetin alfa)、epoetin alfa(エリスロポエチン)、または輸血による貧血改善が奏効率の向上に有効なはずであるが、現時点でこれを裏付けるデータはない。よって貧血はより深刻な悪性腫瘍の兆候で、治療の失敗と貧血改善とは関係ないと説明することも出来る。
最初に取り上げた試験では手術のみの治療を受けたステージⅠ~ⅡのNSCLC患者82例の転帰を観察した。患者の平均無再発生存率は、ヘモグロビン値が12g/dL以上の患者では34.9ヶ月であったのに対し、同値が12g/dL未満の場合26.6ヶ月間であった。病期ステージI-Aの患者の2年全生存率は、ヘモグロビン値が12g/dL以上の患者では90.9%であったのに対し、同値が12g/dL未満の場合65.6%であった。貧血は再発と生存の最も重要な予測因子であった。多変量解析では、ヘモグロビン値が12g/dL未満の患者の再発の可能性は4倍、死亡の可能性は3倍増大した。貧血は、疾患がより深刻な兆候であるとこの研究の著者は考えた。
2番目の試験では、1991年から1995年の間に手術のみの治療を受けた胃癌患者1688例を対象とした。貧血の定義はヘモグロビン値12g/dL未満とした。研究者の報告によると、10年生存率は貧血患者が48.2%、貧血でない患者が62.6%であった。ステージIの患者の10年生存率は、貧血でない患者は83.5%であったのに対し、貧血の場合76.1%であった。ステージⅡの患者の10年生存率は、貧血でない患者は67.2%であったのに対し、貧血の場合55.1%であった。多変量解析では、貧血は独立した生存予測因子であった。
コメント
以上2つの試験から、貧血が手術のみの治療を受けた肺癌および胃癌患者の生存率の低さと関連していることは明らかである。しかし貧血が転帰不良をまねくメカニズムは全く分かっていない。より深刻な悪性腫瘍ほど赤血球の産生を抑えるペプチドやサイトカインを産生することもあり得るが、いずれの研究でも血液試験をしていない。貧血改善が手術の転帰に何らかの影響を及ぼすかどうかを判断するため、ランダム化試験をすると興味深いであろう。
References
[1] An association between preoperative
anemia and decreased survival in early-stage non-small cell lung cancer patients
treated by surgery alone. International Journal of Radiation Oncology Biology
Physics. 2005;62:1438-1443.
[2] Shen JG, Cheong JH, Hyung WJ, et al. Pretreatment
anemia is associated with poorer survival in patients with stage I and II gastric
cancer. Journalof Surgical Oncology . 2005;91:126-130.
*注 転機 – 結果、結末の意
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