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ロミデプシンは、既治療の皮膚T細胞リンパ腫において疾患と皮膚症状を軽減した

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ロミデプシンは、既治療の皮膚T細胞リンパ腫において疾患と皮膚症状を軽減した

Romidepsin Reduces Disease Burden and Skin Symptoms in Patients with Previously Treated Cutaneous T-Cell Lymphoma (Posted: 11/08/2010)

– Journal of Clinical Oncology誌2010年10月10日の臨床試験結果報告によると、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と呼ばれる分子標的治療薬romidepsin (Istodax®)が、進行した皮膚T細胞リンパ腫の多くの患者において症状を軽減し、腫瘍量を減らした。

要約
臨床試験では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と呼ばれる標的治療薬ロミデプシン (Istodax®)が、進行した皮膚T細胞リンパ腫の多くの患者において症状と腫瘍量を軽減しました。また、この薬剤は治療に奏効を示さず腫瘍が縮小しなかった患者においても皮膚のかゆみと不快感を減少させました。

出典
The Journal of Clinical Oncology, October 10, 2010 (ジャーナル要旨参照)

背景
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は非ホジキンリンパ腫でまれなタイプです 。初期段階では、疾患は主に皮膚に限局 し、パッチやプラーク、腫瘍そして紅皮症(発赤とかゆみ)を引き起こします。疾患が進行するにつれて、症状は血液やリンパ節 、内臓へ広がることがあります。

初期段階のCTCLの治療は通常皮膚を対象とし、光線力学的治療やステロイド軟膏 、体内深部に浸透しない電子ビームを使用した放射線治療などがあります。

CTCLの治療 はたとえ初期段階で発見されたとしても治療は困 難であり、通常最初 の治療後に疾患が再発します。進行型CTCL または再発したCTCLの治療の目的は症状の減少と延命です。治療選択肢には化学療法、denileukin diftitox(デニロイキン・ディフティトックス)として知られる標的療法、癌細胞分裂を遅延させる生物学的療法であるinterferon-alpha(インターフェロンアルファ)などがあります。

近年研究者が薬剤ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤にCTCLを妨害する活性があることを発見しています。米国国立癌研究所の研究者が実施し2009年に出版したHDAC阻害剤ロミデプシンの##第2相臨床試験では、この薬剤は初期あるいは 進行したCTCLの患者両方において腫瘍量を減少し、一部の患者で腫瘍の進行を停止させました。

試験
CTCLにおけるロミデプシンの活性を確認するために、8カ国33治療施設の研究者は患者96人を単群第2相臨床試験に登録しました。単群試験では、試験対象の薬剤は他の薬剤やプラセボと比較されません。

全ての患者は18歳以上で1回以上の全身療法(化学療法などの全身に影響する治療)後に再発経験がありました。初期の研究ではロミデプシンが不整脈を引き起こす可能性を示唆しているため、心疾患既往の患者は除外されました。血中のカリウム値とマグネシウム値の低さとCTCLには関連が考えられるため、ロミデプシン投与前にこれらの電解質の値が正常範囲にあることが確認されました。

参加者は28日間サイクルの1日目、8日目、15日目に4時間の点滴静注でロミデプシンを投与されました。参加者は6サイクルまでのロミデプシン投与を受けることができました。疾患が安定または軽減した患者は試験終了後も続けてロミデプシンの投与を受けることができました。

研究者は皮膚、リンパ節 、末梢血といった疾患箇所におけるロミデプシンの効果を各治療サイクルの初日と最終サイクルの30日後に評価しました。また患者はそう痒(皮膚のかゆみの程度)を毎月報告しました。

この試験はSt. Thomas HospitalのSean J. Whittaker医師が主導し、ロミデプシンの製造業者であるGloucester Pharmaceuticals社の協力を受けました。

結果
96人の患者が過去に受けた全身治療の中央値は3回であり、68人(71%)は進行したCTCL患者でした。全患者は少なくとも1回以上のロミデプシン投与を受けましたが、61人(64%)の患者は6サイクル終了前に治療を中止しました。主な理由 は病態 の進行(21人)、試験参加中止を決断(21人)、または副作用 (17人、そのうち14人は薬剤関連の副作用を経験)でした。

患者全体のうち 33人(34%)がロミデプシン治療に対して部分的奏効(28%)または完全奏効(6%)を示しました。進行したCTCL患者68人では26人(38%)が奏効を示しました。奏効期間の中央値は15ヵ月でした。38人(40%)の患者において少なくとも50%の皮膚症状スコアの向上がみられました。試験開始時に中程度から重度のそう痒を報告した65人の患者のほとんど(92%)は症状の軽減を経験し、軽減期間の中央値は6カ月でした。

最もよくみられた治療副作用は悪心や嘔吐のような胃腸障害と倦怠感でした 。ほとんどの患者は軽度から中程度の副作用のみを経験しました。

NCI試験でロミデプシンを71人の患者で検査した場合にも非常に類似した結果が得られました。この試験では、34%の患者が部分的奏効(28%)または完全奏効(6%)を示し、奏効期間の中央値は13.7カ月でした。 2009年11月には、両方の試験の結果に基づき、米国食品医薬品局は1回以上の全身治療を受けた患者のCTCL治療におけるロミデプシンの使用を承認しました。

制限事項
Bates博士はロミデプシンの投与と疾患経過におけるいくつかの課題について明らかにしています。

ロミデプシンを非常に長期間投与し(NCIの研究では1人の患者に対して5年間以上)重大な副作用がなかった患者がいる一方で、この薬剤に起因する吐き気と易疲労感 に非常に敏感に反応する患者もいます。副作用がある患者とない患者がいる原因はまだ明らかになっていませんが、吐き気止めの処方は副作用がある患者にとり有効です。

さらに、血中のカリウム値とマグネシウム値の低さとCTCLには関連が考えられ、不整脈を悪化させる可能性があります。このため、患者のこれらの電解質の値をロミデプシン治療開始前に正常化するべきです。しかし、入念な研究からもロミデプシンが累積的な心臓への影響を引き起こす証拠は示されていません。いずれにせよ、心障害既往の患者はこの試験から除外されていたため、「われわれはロミデプシンが心障害の患者にとって安全であるとは確信できません。心障害の患者に対するこの薬剤の投与は注意深い監視のもと行われる必要があります」とNCI試験を実施したグループのNCI癌研究センターの分子治療部門長Susan Bates博士は、述べています。

さらに、CTCLの患者は皮膚常在菌 数値が高く、感染には特別に脆弱です。そのため、病原性菌が経皮的に 体内に侵入するリスクを減らすためには、疾患の活性がある間はどの種類の留置性カテーテルも使用 するべきではないとBates博士は述べています。患者は、感染リスクを減らすために常時抗菌性石鹸を使用して入浴するべきです。

コメント
この試験はロミデプシンが全生存期間を延長するかを検証するために計画されたものではありませんが、「皮膚T細胞リンパ腫の症状は患者にとって非常に苦しい ものであり、たとえもし生存期間に変化がないとしても、再現可能な奏効をもたらす薬剤が患者にとって明らかな利益です。」とBates博士は述べています。「ロミデプシンは有効な薬です。この研究で奏効期間の中央値は15カ月でした。これはCTCLの治療に使用可能な他の多くの薬よりも良い結果です」と彼女は続けています。

この研究の著者はロミデプシンの最適な使用方法を判断するためにはより多くの研究が必要であることを指摘しています。「この新しい治療にもかかわらず、CTCLは慢性疾患であることに変わりなく、進行段階ではかなり定常性の治療を必要とします。ロミデプシンと他の薬剤とを併用することにより、さらにより有意で持続可能な奏効をもたらす療法を見つけられるかもしれません」と彼らは結論しています。

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上田佐知子 訳

井上 進常(小児腫瘍科) 監修

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