治療強度を軽減しても早期ホジキンリンパ腫の治療効果に影響はない | 海外がん医療情報リファレンス

治療強度を軽減しても早期ホジキンリンパ腫の治療効果に影響はない

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

治療強度を軽減しても早期ホジキンリンパ腫の治療効果に影響はない

Reducing Treatment Intensity Doesn’t Compromise Results in Early-Stage Hodgkin Lymphoma

(Posted: 09/27/2010) – New England Journal of Medicine誌2010年8月12日号掲載の研究によると、化学療法の用量および放射線治療の線量を低減しても、早期で低リスクのホジキンリンパ腫の治療効果に影響はなく、副作用が少なくなりました。

要約

早期、低リスク群ホジキン腫の奏効率および治癒率はきわめて高いですが、一般的に治療による急性・晩期性副作用がみられます。欧州で実施された大規模な第3相ランダム化臨床試験では、化学療法と放射線療法の投与量を軽減しても治療効果には影響せず、副作用の低減につながることがわかりました。

出典

New England Journal of Medicine誌 2010年8月12日号(ジャーナル要旨参照)。

背景ホジキンリンパ腫(HL)は、白血球を産生、貯蔵、運搬する組織および臓器であるリンパ器官に発症する稀な癌です。約30%の患者が早期、低リスク群のリンパ腫と診断されます。過去には、このような患者に対しては、放射線治療のみの実施が一般的でした。この治療により多くの患者の治癒がもたらされましたが、心障害、不妊、二次癌といった重症の晩期副作用が出現しました。

HLの発症は30歳代がピークであるので、長年にわたって治療毒性が患者の健康や生活の質に影響を及ぼす可能性があります。長期生存が望まれる予後良好の患者にとって、治療毒性を抑えることはとりわけ重要です。現在米国では早期、低リスク群HL患者のほとんどに対して多剤併用化学療法のみ、もしくは化学療法と浸潤領域への放射線療法(IFRT)を組み合わせた治療が実施されています。IFRT(involved-field radiation therapy)とは、癌であることがわかっているリンパ節領域を標的とする放射線治療です。しかし、研究者らは長期生存の可能性を最大限に確保しつつも晩期副作用を低減できるよりよい治療計画を模索中です。

研究欧州の研究者らは、治療効果に影響せずに早期、低リスク群HLの治療強度を軽減することが可能であるかを確かめるため、本試験(通称HD10)を計画しました。1998~2003年の期間、5カ国の329病院および外来診療施設からこれまで治療を受けたことのない患者1,370人を募りました。患者年齢の中央値は36歳で、61%が男性でした。総勢1,190人の患者が病期ステージ1または2で、その他の予後因子がないこと、すなわち低リスク群であることが確認されました。これらの患者は4つの治療群に無作為に割り付けられました。

•第1群:最も強力な治療を受けた、ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)化学療法を4サイクル投与後に総照射量30GyのIFRTを実施。 •第2群:第1群と同量・同サイクルのABVD化学療法の後に、照射量を20Gyに抑えたIFRTを実施。 •第3群:ABVD化学療法を2サイクル投与後に総照射量30GyのIFRTを実施。 •第4群:ABVD化学療法を2サイクル投与後に照射量20Gyの放射線治療。

研究者らによる患者のフォローアップ期間の中央値は7.5年でした。本試験の主要エンドポイントは、治療不応例をなくすことでした。また、研究者らは全生存期間、無増悪生存期間、完全寛解率に対する評価も行いました。二次癌の発症も含め、急性および晩期性副作用に関してもモニタリングが行われました。ほとんどの分析で、著者らは患者のアウトカムに関して、化学療法では高用量群と低用量群とを、放射線治療では高線量照射群と低線量照射群とを比較できるように、それぞれの治療群をまとめて扱いました。すなわち、ABVD化学療法では4サイクルの第1群と第2群に対して、2サイクルの第3群と第4群を比較しました。そして、放射線照射量では30Gyの第1群と第3群に対して、照射量20Gyの第2群と第4群を比較しました。

HD10臨床試験はドイツホジキン研究グループ(German Hodgkin Study Group)により実施されました。試験総括医師はドイツ・ケルンのケルン大学病院のAndreas Engert医師でした。

すべての治療の奏効率はきわめて高く、1,150人(97%)の患者が完全寛解を得ました。化学療法に関する比較で、治療不応例の割合はABVD化学療法4サイクル投与群と比較して2サイクル投与群では、統計的に有意差はありませんでした。また、その他の評価項目でも統計的に有意な差異は認められませんでした。同様に、放射線治療に関する比較では、照射量を減らしても治療経過は悪化しませんでした。また著者らは第1群(治療強度が最も高い治療計画)と第4群(最も低い治療計画)における治療不応例の比較をしましたが、ここでも統計的に有意な差異は認められませんでした。

しかし、感染、血球障害、脱毛といった急性副作用の発症に関しては、治療群間に差異が認められました。化学療法を4サイクル受けた患者の半数に少なくとも一つの重篤な副作用が認められましたが、2サイクル群では治療を受けた患者の3分の1に認められたにすぎません。治療後に死亡した7人の患者のうち6人が4サイクルの投与を受けていました。照射量を減らした治療を受けていた患者のうち重篤な副作用が1つ以上認められた患者は16人(2.9%)のみですが、照射量30Gy群では46人(8.7%)でした。7.5年間のフォローアップ期間に二次癌を発症した総勢55人では、治療群の間に統計的に有意な差異は認められませんでした。

コメント

放射線治療は二次性固形腫瘍の発症につながるため、多くの専門医はできるかぎり実施すべきでないと感じています。「放射線治療はすべての患者に必要なわけではなく、後の人生でホジキンリンパ腫の治癒後に現れる晩期性の健康障害の大きな原因となります」とNCIの癌治療・診断部門の臨床試験支部の上級試験研究者であるRichard Little医師は述べました。20歳代や30歳代で診断される患者がとても多いため最初の治療から20年以上も経った後の晩期障害が、40~50歳になって影響を及ぼすということは、「人生の明暗がくっきりと分かれ、生涯のうち最も生産的で幸せな時期が幾分もぎとられた形となってしまうのですから」。

また、臨床試験で認められた高い生存率(8年後の生存率は95%であった)から、なかには実際に必要とされる以上の治療を受けていた患者もいるということが示唆されます。しかし、著者らは今回設定された予後因子ではどの患者が治療強度を軽減しても治癒可能な患者であったかを特定することはできないと指摘しています。Little医師も同意見であり、「治癒の可能性に影響することなく、放射線治療などのより強度の強い治療が省略可能かどうかを決定するために、フルオロデオキシグルコース-PET(陽電子放射断層撮影)を治療のごく初期に実施するバイオマーカーとして再定義する」臨床試験の計画が現在進行中であり、「このような方法によって、放射線治療などのより強度の高い治療を必要とするホジキンリンパ腫患者を特定できる可能性があります」と付言しました。また、「このような研究によって、ホジキン腫治療の一般的な治療法が変わるかもしれません」とも述べました。

制限事項本試験では、早期の患者の大部分で化学療法と放射線療法の強度軽減によっても治療効果が劣ることはないと示されましたが、「化学療法のみによる治癒可能性を考える試験デザインは認められていません」とLittle医師はおっしゃいました。照射量がどれほどであれ、放射線治療の実施は晩期合併症のリスクを高めるものであり、試験で用いられた治療に関連するより長期の悪影響に関して十分な情報を得るためには、さらに長期間のフォローアップが必要となってくることが指摘されました。

付随するレビュー記事で、オマハのネブラスカ大学医療センターのJames O. Armitage医師は「照射量を減らし照射野を狭めることにより二次癌の発生率が抑えられるだろうということは直感的に明白であるとみられる。(中略)大多数の試験ではフォローアップ期間が比較的短く、照射量と二次癌発生率との関連性について確実性を欠くため、はっきりとした結論を導き出すことはできない」と述べています。

また、治療効果に統計的有意な差異が認められないとしても、著者らは試験デザインにより「より治療強度の高い治療群での6.3%は有効な差異であるかもしれないことは否めない」と指摘しています。しかし、このような利点は、「急性および晩期毒性や治療費を抑えたり、治療期間の短縮や治療強度を低減することによってもたらされるより良いQOLといった点に照らし合わせて鑑みなければならない」と書かれています。

******

窪田美穂 訳

井上進常(小児科/首都医校講師)

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward