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致死性前立腺癌に関与する5つの遺伝性遺伝子変異を発見
シアトルからスウェーデンへ:親から受け継がれた遺伝子変異が前立腺癌進行・癌死に関与することを示す初の住民ベース研究
シアトル(2011年8月16日)ー フレッド・ハッチンソンがん研究センターが主導する国際共同研究によって、高悪性度の致死性前立腺癌と強く関連する5カ所の遺伝性遺伝子変異が同定された。この発見をもとに、いずれは、診断時に実施して、どの患者がより保存的な待機療法ではなく積極的治療を受けるべきかを決定できる簡便な血液検査が開発される可能性がある。
ハッチンソンがん研究センターの前立腺癌研究プログラム副責任者で同センター公衆衛生科学部門に所属するJanet L. Stanford博士によるこの研究は、Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention誌9月号の発行に先立って、8月16日にオンライン版で公表された。
治療が必要な致死的前立腺癌にまで進行する可能性が低い低リスクの腫瘍をもつ患者が過剰治療を受け、その結果、勃起不全や尿失禁などの副作用に苦しむことは少なくない。個人レベルの損失に加え、低リスク前立腺癌の過剰治療は、初期治療だけに限っても、全米で年間平均20-30億ドルという大きな経済的負担を伴っている。
「おとなしい腫瘍の患者とより悪性度の高い腫瘍の患者を区別することができるバイオマーカーの必要性は、喫緊のものです」とStanford氏は言う。「われわれが同定した一連のマーカー候補は、親から受け継がれた遺伝子変異が前立腺癌の進行と死亡率に一定の役割を果たすことを示す、妥当性が検証された初のエビデンスです。最終的には、たとえばGleasonスコアが高いことなど、腫瘍の悪性度を評価する既知の予測指標と合わせて、これらのマーカーを臨床で用いて、高リスクのプロフィールをもつ患者を同定することができるでしょう」
候補とされた5カ所の一塩基多型つまりSNP(「スニップ」と発音)は、〔A, T, G, Cの〕4文字のDNAアルファベットの1文字の変異であり、ゲノム全域にわたる遺伝子変異のマーカーとなり、病変の発生や進行に関与している可能性がある。「われわれは、炎症、ステロイドホルモンの生成と代謝、DNA修復、概日リズム、ビタミンD活性など、前立腺癌の進行を促進する可能性がある生物学的経路において重要な役割を担うであろう遺伝子のSNPを研究することにしました」とStanfordは述べた。
この研究のために、Stanford氏らはシアトル地域における診断時35-74歳の前立腺癌患者1,309人の住民ベースのコホートから採取した血液標本中のDNAを分析した。156個の候補遺伝子中の937カ所のSNPを評価したところ、そのうち22カ所のSNPが前立腺癌特異的死亡と有意な関連があることが判明した。
続いて、スウェーデンにおける診断時35-74歳の前立腺患者2,875人という別の住民ベースのコホートにおいて、これら22カ所のSNPの妥当性検証試験を実施した。患者の血液から得たDNAの遺伝子型を同定したところ、22カ所のSNPのうち5カ所が前立腺癌死と有意に関連することが判明した。中央値6.5年の追跡期間に、シアトルの患者(4.6%)に比べスウェーデンの患者(17.4%)の方が前立腺癌死の割合が高かった。この結果は、米国に比べスウェーデンの方が前立腺癌死亡率が相対的に高い事実と矛盾しない。
5カ所のSNPは、以下のとおり、前立腺癌の進行に影響すると思われる5つの遺伝子に、それぞれ1つずつ位置していた(タグ付けされた)。
o o LEPR – この研究で前立腺癌死との関連が最も強くみられたマーカーは、組織成長、炎症、血管形成、および骨密度の制御を助けるレプチン受容体遺伝子であった。骨密度に対する効果のため、LEPRは、病状進行を知るためのマーカー候補として興味深いものとなる。なぜなら、前立腺癌の主要な転移臓器は骨であり、骨転移によって致命的な癌であることを予測できるからである。
o o RNASEL – この遺伝子は遺伝性前立腺癌と関連しており、アポトーシス(プログラムされた細胞死)、炎症、細胞の増殖能および接着力(癌の成長の特徴)と関連がある。
o o IL4 – このインターロイキン4遺伝子は腫瘍の成長、血管形成、および癌細胞遊走に関連がある。
o o CRY1 – クリプトクロム1遺伝子は、概日リズムに影響を与え、したがって、アンドロゲン濃度に影響する可能性がある。アンドロゲン濃度は、前立腺癌の進行に関わることが判明している。
o o ARVCF – この遺伝子はカテニン族のタンパク質に属し、細胞の内側と外側が互いに「対話する」のを助ける。ARVCFの過剰発現は、細胞の接着を阻害することが示されており、癌の進行を容易にする可能性がある。
上記の遺伝子マーカーのうち4つないしは5つ全てを有する患者は、2つ以下しか持たない患者に比べて、前立腺癌死リスクが50%高かった。前立腺癌死リスクは、患者が有するSNP遺伝子変異の数が増すにつれて増大した。
「これまでの研究で、遺伝的背景が前立腺癌の転帰に影響を及ぼすことが示唆されていましたが、今回の研究は、致死性の疾病に関連する遺伝子マーカーを検証した初の研究です」とSanford氏は述べた。
「悪性度の高い、致死性の前立腺癌であるリスクが高い患者を診断時に判別することができれば、積極的治療の恩恵を受ける可能性が最も高い患者集団に対する治療を改善するとともに、低リスクのまま経過する腫瘍の患者が過剰治療を受けるのを防ぐ一助となる可能性がある」と著者は書いている。
候補となった5カ所のSNPが、病状進行のリスクが高い患者を層別化するために実臨床において有用であるかどうかは、今後、別の患者集団において評価する必要がある。Stanford氏らはまた、前立腺癌の不良な転帰を予測するために、これら5つの遺伝子マーカーについて追加の研究を計画している。
本研究の共同研究者が所属する機関は以下のとおりである。ストックホルムのカロリンスカ研究所、スウェーデン・ウーメオ市のウーメオ大学、メリーランド州ベセスダ市の米国国立衛生研究所・国立ヒトゲノム研究所、ノースカロライナ州ウィンストン-セーラム市のウェイクフォレスト大学医学部、〔メリーランド州〕ボルチモア市のジョンズ・ホプキンズ大学など。
本研究は、米国国立癌研究所が資金を提供する太平洋岸北西部前立腺癌特化研究拠点プログラム(スタンフォード大学が共同で主導し、事務局はハッチンソンがん研究センター内)を介して実施された。その他の援助機関は以下のとおりである。ハッチンソンがん研究センター、米国国立ヒトゲノム研究所、スウェーデン癌リスク予測センター(CRisP)、スウェーデン学術研究会議、スウェーデン癌基金、Hedlund基金、Soderberg基金、Enqvist基金、ストックホルム市議会。
報道関係者限定:公開制限中の論文”Genetic Variants in the LEPR, CRY1, RNASEL, IL4, and ARVCF Genes are Prognostic Markers of Prostate Cancer-Specific Mortality”の入手、およびStanford氏のインタビュー申込みはKristen Woodward(kwoodwar@fhcrc.org または 206-667-5095)まで。
報道関係連絡先?
Kristen Woodward ?Fred Hutchinson Cancer Research Center ?(206) 667-5095 ?kwoodwar@fhcrc.org

盛井 有美子 訳

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