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進行性肺癌患者に対する緩和ケアにより生存期間延長およびQOLが改善

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進行性肺癌患者に対する緩和ケアにより生存期間延長およびQOLが改善

進行性肺癌患者に対する緩和ケアにより生存期間延長およびQOLが改善

Palliative Care Improves Survival, Quality of Life in Advanced Lung Cancer

 (Posted: 09/23/2010) – New England Journal of Medicine誌2010年8月19日号掲載のランダム化臨床試験の結果によると、進行肺癌の患者に早期から緩和ケアを導入すると、終末期に緩和ケアを導入した患者に比べ、生存期間中央値が改善した。

NCIキャンサーブレティン2010年9月7日号参照

この種の試験では初めてのランダム化臨床試験の結果により、進行性肺癌患者に対する早期緩和ケアの驚くべき喜ばしい有効性-生存期間中央値の延長-が明らかにされた。研究者の中には、この所見は肺癌以外の癌患者を対象とした他の試験により追認される必要があると述べる者もいるが、今回の試験結果は腫瘍学者の認識および緩和ケアの導入に影響を与えるものになるという慎重ながら楽観的な見解を示している。これらの結果は、The New England Journal of Medicine誌8月19日号電子版に掲載された。

試験に参加した者の中で、癌治療の早期過程において緩和ケアを受けた患者は、自動的に緩和ケアを提供されなかった患者に比べてQOLの向上がみられ、うつ症状を訴えることが少なかったことも報告された。しかし、最も関心を集めた所見は生存期間の延長であり、この治療困難とされる病気を有する患者にとって注目に値する結果であった。

マサチューセッツ総合病院(MGH)およびハーバード大学医学部のDr. Jennifer Temel氏率いる研究チームによると、生存期間の改善の程度はほんの3カ月に満たないものではあったが、それは標準的な初回化学療法を用いた場合に一般的に得られる期間に相当する。これらの結果に満足する一方で、この所見は強力な緩和ケアプログラムを有する大規模な医療センターの施設にて実施された研究の一環であることが考慮されるべきである、とTemel氏はインタビューで認めた。

「今日、大規模な大学病院や比較的大きな地域病院のほとんどは緩和ケア医療を提供しています。大きな病院における緩和ケアプログラムの普及率は約80%に達します」とTemel氏は述べた。「小規模の病院では、このような緩和ケアを提供するだけの設備が整っていない可能性があります」。

マウントサイナイ医科大学の老年緩和医療科(Department of Geriatrics and Palliative Medicine)のDr. Diane Meier氏およびDr. Amy Kelley氏は、論説にて試験の限度を認める一方で、これらの所見は「一般に普及している緩和ケアの概念」に挑む立場にあると主張した。これまで、緩和ケアは延命あるいは治癒を目指した治療への代替(つまりこれ以上の術がない場合の手段として)一般的に受け止められてきたが、「本来はそのような治療の補助として同時に提供されるもの」ではないか、と両氏は述べた。

設計および結果

MGHにおいて新たに進行性非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された150人以上の患者を試験に組み込み、標準治療を行う群または標準治療と早期緩和ケア医療を組み合わせて行う群に無作為に割り付けた。

試験登録後3週間以内に、緩和ケア群の患者は緩和ケアチームと面談を行った。緩和ケアチームには通常、特別の訓練を受けた医師や看護師、ソーシャルワーカー、および聖職者が含まれるが、今回の試験の場合は医師とナースプラクティショナーのみであったとTemel氏は述べた。その後、患者は緩和ケアチームと月1回会い、必要に応じて補足的に診察を受けた。標準治療群の患者あるいはその臨床医もまた緩和ケア医療を依頼することができた。

「生存期間中央値が2.7カ月延長したことには幾分驚きました」とTemel氏は述べた。「全生存期間は、標準治療群において9カ月未満であったのに比べ、緩和ケア群の患者においては11.6カ月でした。」しかし、早期緩和ケアにより臨床的影響が有意に認められたことには強い理論的根拠がある。

「患者が、患者自身の医療について正しい判断が行えるようわれわれは手段を提供しました」とTemel氏は述べた。緩和・ホスピスケアについての議論や討論を行う場合、「『配給的(どのような治療を提供するかを考える)』医療について語るのではなく、患者が自身の医療についてより正確な判断が行えるよう情報を与えることについて語るべきです」とTemel氏は続けた。

例を挙げると、より多くの標準治療群の患者が終末期に積極的治療(死亡前2週間以内に行う化学療法あるいは死亡前3日に満たないホスピス滞在と定義)を受けていたにもかかわらず、緩和ケア早期介入群の生存率のほうが良好であった。しかし、生存期間の延長はむしろQOLおよびうつ症状の改善の結果であるという考えをTemel氏は強調した。終末期医療についての患者の意志決定は生存期間の改善に「貢献した可能性がある」と考えられるが、「生存における利益は早期においても確認されたことから、終末期に積極的な治療が行われなかったことだけでその全てが説明されるわけではありません」とTemel氏は述べた。

ミズーリ州カンザスシティーにある外来患者用施設、カンザスシティー・ホスピス・緩和ケア(Kansas City Hospice and Palliative Care)のスタッフ・クリニシャン(※病院の病床を借りて治療を行う医師)を務めるDr. Christian Sinclair氏にとっても、生存期間の延長は予期せぬことであったが、彼は別の理由で驚いた。「緩和ケアは診断時の早期の段階から行うことができますが、進行性疾患の中期から終末期にかけての症状の危機状態において行われることが多いのです。これまで早期緩和ケアをあまりみたことがなかったため驚いています」とSinclair氏は述べた。

良い緩和ケアにより、「癌とその治療に関わる身体的および精神的症状の多くが軽減または緩和されることが可能になることから、生存期間が延長されるという結果が生じるのかもしれません」と、米国国立癌研究所(NCI)の癌予防部門に所属し、NCI資金による緩和ケア研究の大規模なポートフォリオを監督するDr. Ann O’Mara氏は述べた。「患者がホスピスのプログラムに参加して、疾患状態が改善されることが多々あります」とO’Mara氏は続けた。「緩和ケアとホスピスで提供される医療の内容は、特に積極的な症状管理に関して重複することが多くあります。ですから緩和ケアを受けている患者に同様の改善がみられることは当然のことなのです」。

研究の意義

単一試験により腫瘍学における緩和ケアの実施のあり方が大幅に変わるということはありえない。同様の試験によっても緩和ケアに対する認知度および認容度が改善されるだけであろう、とO’Mara氏は考える。「しかしそれは、特に患者集団を考えると、この試験において研究チームが達成した内容を否定するものではありません」とO’Mara氏は続けた。「進行肺癌患者を試験対象に選んだ研究者らに拍手を送ります。なぜなら、肺癌患者の症状による負荷は非常に大きいからです」。

MGHによる試験で実施された包括的緩和ケアを遂行する専門知識を備えたスタッフは小規模な地域病院では配属されていることが少なく、治療を受ける患者の予後は違ったものになる可能性があることをO’Mara氏は認めている。「単に鎮痛剤や制嘔吐剤を提供するといったことではなく、患者の家族や資金問題、心理社会的問題まで管理することが必要になります。緩和ケアはとても複雑です」とO’Mara氏は説明した。

「緩和ケア導入の枠を広げるためには数々の障害があります」とSinclair氏は述べた。「しかし、その問題の大部分は元を正せばまだ臨床の現場にあるのです。早期緩和ケアに対して大きな文化的抵抗があります」とSinclair氏は続けた。緩和ケアの患者の予後に及ぼす影響を示したデータは限られており、Sinclair氏の経験から、「緩和ケアは主に終末期の疾患に対するものであるという偏見がまだあります」と述べた。

Temel氏は同僚の研究者らとともに、食道癌や膵臓癌などといった治療困難な癌を有する患者に対して同様の試験を行う計画を立てている。当面の間、緩和ケアおよび良質の癌治療は「二者択一の命題ではなく、相互排他的でもない」という考えが推進されることをTemel氏は希望する。「双方を同時に提供することは可能であり、患者にとっても有益であります」。

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 栃木 和美 訳

後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院)監修

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