小児ホジキンリンパ腫放射線治療後の二次癌を予測する2つの遺伝的変異/シカゴ大学 | 海外がん医療情報リファレンス

小児ホジキンリンパ腫放射線治療後の二次癌を予測する2つの遺伝的変異/シカゴ大学

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小児ホジキンリンパ腫放射線治療後の二次癌を予測する2つの遺伝的変異/シカゴ大学

2つの遺伝的変異体による小児ホジキンリンパ腫の放射線治療後の二次癌の予測

 2011年7月25日

Nature Medicine 誌8月号に発表された全ゲノム関連研究によると、ホジキンリンパ腫患者の中で、放射線治療後何年も経過してから放射線誘発二次癌を発症する可能性が最も高い患者を予測することができる2つの小さな遺伝的変異体が発見されたという。事前に発症リスクの高い患者を識別することで、医師は長期的損傷の影響を最も受けやすい患者に対して、リスクを軽減させるオーダーメイド治療を行うことが可能になる。

ホジキンリンパ腫は最も治療可能な癌の一つであり、放射線治療と化学療法の併用療法後に90%以上の患者が生存している。しかしながら、小児期に治療を受けた患者の約20%は30年以内に二次癌を発症している。治療を受けた時の年齢が若ければ若いほど、そして線量が高ければ高いほど、リスクは高まる。この治療による晩期副作用は、長期生存するホジキンリンパ腫サバイバーの死因の第2位を占める。

「この研究結果により、治療開始前に放射線誘発癌を最も発症しやすい小児患者をうまく識別して、この重篤な長期間に及ぶ合併症を防ぐために治療法を変更することが可能であることが明らかになりました」と、小児科の准教授で本試験の統括著者であるKenan Onel 医学博士は述べた。「幸いわれわれのホジキンリンパ腫に対する治療選択肢の幅は広いため、放射線治療に依存することなく初期病変を抑える方法を探すことができます」。

「この結果は、全ゲノム関連研究(GWAS)にとっても勝利を意味します。これまで行われてきた多くのGWASにより複数の遺伝的変異体が発見されてきましたが、その1つ1つはあまり重要な役割を担っておらず臨床管理に与える影響はごくわずかでした。本試験は、遺伝子と非常に特異的な環境因子、つまり放射線治療後しばらく経過してから発症する癌との相互作用に注目した試験であり、少数の遺伝的変異体により非常に大きな影響がもたらされました」とOnel氏は語った。

Onel氏らは、8歳から20歳の間に化学療法と放射線療法を受けたホジキンリンパ腫患者178人のゲノムを解析した。治療後30年以内に二次癌を発症したのは96人、発症しなかったのは82人であった。

665,313つの一塩基多型(SNP)として知られている小さな遺伝的変異体に重点を置いて各患者のゲノムを走査した結果、二次癌を有する患者においてより多くみられる3つの遺伝的変異体を発見した。別の患者群(二次癌を発症した患者62人および発症していない患者71人)において追試験を行った結果、3つのマーカー中2つが有意であった。

これらの2つのマーカーはどちらも6番染色体の21qとして知られている小さな領域に由来していた。どちらもPRDM1という遺伝子の付近に位置する。

癌発症のリスク上昇と密接に関連する遺伝的変異体は、お互い、PRMD1遺伝子の活性化を低下させていると推定された。この2つの遺伝的変異体が他の遺伝子に及ぼす影響については検出されなかった。発癌リスクから保護するタイプの遺伝子変異体を有する細胞では放射線に曝露された後PRDM1の発現がみられた。二次癌に関連した遺伝子変異体を有する細胞ではPRDM1の発現は全くみられなかった。

先行研究により、PRDM1は細胞の増殖、分化およびアポトーシス(癌の場合は正常に行われない)などの様々な基本的な細胞過程に関与していることが明らかになった。この遺伝子活性化は多くの種類の癌の場合失われてしまう。

Onel氏が対象とした少数患者において、30年以内に二次癌を発症したのは、2つのリスクから保護するタイプの遺伝的変異体を有する患者の場合はほんの3%であったのに対し、高リスクの遺伝的変異体を有する患者の場合は約33%であった。

「これらのことから、われわれの所見は、放射線応答性の腫瘍抑制因子としてのPRDM1の新たな役割を支持するものとなります」と著者らは述べた。「PRMD1は、小児ホジキンリンパ腫サバイバーや放射線治療を受けた別の癌患者における二次癌の原因を理解する上で重要といえます」。

本試験はまた、全ゲノム関連研究に対して「楽観的な見方を取り戻す」ものであるとOnel氏は補足した。GWASによりこれまでに発見されてきた癌関連のマーカーの多くは、「リスクや治療への反応、あるいは生存について予測することに対して臨床的価値がないもの」とされてきた。しかし放射線治療などの環境曝露をゲノム研究に組み込むことで、「まだ判定されていない遺伝性の多くが明らかになります」とOnel氏は述べた。「環境要素を折り混ぜることで、さらに的を絞った問いかけをすることができました。このアプローチによって、ゲノミクスを日常的な癌治療に組み込むことが可能になります」。

本研究は、the National Institutes of Health, the American Cancer Society, American Lebanese Syrian Associated Charities, the Leukemia Lymphoma Society, the Breast Cancer Research Foundation, the Cancer Research Foundation, and the University of Chicago Comprehensive Cancer Centerより資金提供をされた受けた。

Onel氏の他共著者は以下の通りである:Timothy Best, Andrew Skol, Sarah Jackson, Olufunmilayo Olopade and Stephanie Huang of the University of Chicago; Dalin Li, Thomas Mack, Wendy Cozen and David Conti of University of Southern California; Kenneth Offit and Thomas Kirchhoff of Memorial Sloan Kettering Cancer Center; Yutaka Yasui of the University of Alberta; Smita Bhatia of City of Hope; Louise Strong of the MD Anderson Cancer Center; Susan Domchek and Katherine Nathanson of the University of Pennsylvania; and Leslie Robison of St Jude Children’s Research Hospitalが含まれます。

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栃木和美 訳
吉原 哲 (血液内科/造血幹細胞移植) 監修
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原文

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