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“システム生物学”を利用して悪性度の高い乳癌を詳細に調査/フレッドハッチンソン癌研究所

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“システム生物学”を利用して悪性度の高い乳癌を詳細に調査/フレッドハッチンソン癌研究所

2011年7月28日

乳癌の進行において血中タンパク質レベルが変化する様子を調査した初めての研究―乳癌の診断のかなり前の段階からの追跡

生物学的な仕組みは相互に複雑に関係し合っているとする理解のもと、“システム生物学”を利用した研究法によって悪性度の高い乳癌を詳細に調べることで、研究者らは初めて、臨床的に癌が発見されるよりもかなり前の段階で存在量が変化している一連の血中タンパクを突き止めた。この研究はフレッドハッチンソン癌研究所のヒト生物学部門Christopher Kemp博士および同研究所公衆衛生科学部門Samir Hanash医師を含む著者らにより、Cancer Research誌発行に先立ち、8月1日付同誌電子版に掲載された。

研究者らは、HER2陽性乳癌(ヒト上皮成長因子受容体2と呼ばれるタンパク質発現陽性の癌)モデルマウスを用い、腫瘍の発生から寛解に至るさまざまな段階において研究を行った。その結果、かなりの初期段階においてさえも、初発腫瘍細胞が周辺の宿主の正常組織にシグナルを送り、細胞を誘導することによって連絡をとり、一方宿主の組織は順次そのシグナルに応答して増幅することを確認した。

「これはまさに癌の“システム生物学”的研究である。われわれは多数の遺伝子とタンパク質を腫瘍だけでなく血液や宿主組織についても同時にかつ継時的に調査した」とKemp氏は述べた。「今回の研究の結果、概して驚きだったのは、癌の病態進行過程の初期段階における宿主応答性の程度とその及ぶ範囲である。マウスでは、おそらくヒトでも同じことが言えると思うが、初期の癌は正常と同じように見えがちであるが、われわれの研究では臨床的な発見が可能となるよりもかなり早い段階で多数の変化が生じていることが示された。これらの変化を特定すれば、最終的にはより効果的な治療を可能とする早期発見ツールとして利用できるに違いないと期待している」

従来から、腫瘍細胞は腫瘍の存在を予見し得るタンパク質群を血中に出現させ、あるいは免疫反応を誘導して血中タンパク濃度の変化をもたらすものと考えられてきた。「今回の研究で新たに確認されたのは、われわれが血中で見つけた主なタンパク質シグナルは、腫瘍細胞とその周辺の微小環境との間の複雑な相互作用や応答から生じているということである」とKemp氏は述べた。

これまでは、このような腫瘍‐宿主間の相互作用は主にその腫瘍内で一度に1個の遺伝子について研究されてきた。今回初めて臨床前腫瘍モデルでの癌の全身的な反応をモニターし、腫瘍の誘発、成長、退縮の全期間にわたって癌関連タンパクの存在量を追跡した。今回見いだされた約500個のタンパク質のうち、最大3分の1に相当するタンパク質が量的変化を示し、例えばその数は癌細胞の成長に伴い増加し、腫瘍退縮に伴い減少した。

「われわれは、腫瘍に栄養を運ぶ血管新生から、初期癌の拡散や転移の特徴に至るまで、癌の発症におけるさまざまなメカニズムに関与するタンパク質について貴重な発見をした。」

損傷修復に関連するタンパク質は、癌が成長するごく初期の間にもっとも多く認められ、初期癌発見の有用な標的タンパク質となる可能性を示す。「盲目的に腫瘍バイオマーカーを検索するよりも、システム生物学に基づき、その疾患の進行過程を包括的に理解することによって研究計画を立てた方が、臨床現場で応用できるような血液検査バイオマーカーを同定できる可能性が高まるであろう」とKemp氏は述べた。

次の段階では、マウスで認められた中から最も有望なタンパク質候補を絞り込み、同じ循環血液中のタンパク質がヒトで発症した初期乳癌のマーカーに成り得るかどうかを確認し、そして最終的にはごく初期の乳癌を発見するための血液検査として確立することが目標である。

本研究はポールG. アレン財団(Paul G. Allen Family Foundation)、 NCIヒト癌マウスモデル・コンソーシアム、カナリア基金より資金提供を受けた。

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武内 優子 訳
高山吉永(分子生物学/北里大学医学部分子遺伝学・助教)監修******

原文

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