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頭頸部癌で初の遺伝子変異が判明/MDアンダーソンがんセンター

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頭頸部癌で初の遺伝子変異が判明/MDアンダーソンがんセンター

Science誌に発表された研究結果により、患者の治療はよりカスタマイズされると期待される

MDアンダーソンがんセンター

2011年7月28日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによると、頭頸部扁平上皮癌の遺伝子変異を対象とした初めての包括的研究において、本疾患患者の治療効果の改善に役立つ可能性のある変異が判明した。

Science誌のScience Express特集記事オンライン版に掲載された2件の複数研究機関による研究から、以下の点が明らかになった:

・NOTCH1遺伝子の予想外の腫瘍抑制機能に影響を及ぼす変異;
・発癌遺伝子と考えられる4つの遺伝子の低頻度であるが重要な変異および
・これまで頭頸部癌では損傷を受けたり正常に機能しないとされていた、腫瘍抑制遺伝子p53の高頻度の変異

「現在利用可能な治療法よりもさらに個別化された方法を採用できるようになることで、これらの研究結果は患者へより良い治療を提供するのに役立つと思われます」と、MDアンダーソン頭頸部外科の教授で一方の論文の総括共著者である、Jeffrey Myers医学博士は述べた。

「長期的には、これらの遺伝子変異を有する患者が、手術、放射線、化学療法もしくは化学放射線療法の従来型治療でどういう経過をたどるのかを調べます」とMyers氏は述べた。「これは、追加の治療もしくは違う治療が必要な患者群を識別する際に役立ちます。また、新たに同定された変異のいくつかは、治療の潜在的な標的となる可能性があります。」

「短期的には、他の癌で癌遺伝子として知られているPI3Kの発現を増加させる変異を見つけました。PI3K経路を標的とする薬の研究が現在進行中であるため、これらの有望な薬剤の臨床試験で治療効果が認められる患者を選別することができるかもしれません」とMyers氏は述べた。

MDアンダーソンの研究者らはベイラー医科大学(BCM)およびジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らとチームを組み、頭頸部腫瘍を32検体解析した。その後、さらに88検体の腫瘍検体を用いてその研究結果を確認した。ブロード研究所、ダナファーバー癌研究所およびピッツバーグ大学医学部の研究者らからなる別のチームは、74検体の腫瘍の解析に基づいて同じ結論に達した。

頭頸部扁平上皮癌患者の約半数が、診断から5年経過後も生存する。疾患の治療では、呼吸、嚥下、音声、味覚、聴覚もしくは嗅覚の機能障害/低下が生じることがある。毎年新たに診断される患者数は、世界中で約50万人、米国では約5万人である。

本疾患の主なリスク因子は、喫煙、飲酒およびハイリスク型ヒトパピローマウイルス感染である、とMyers氏は述べた。ビンロウジを噛む習慣があるインド、台湾およびその他のアジア諸国でも、口腔癌発生のリスクは高くなる。

癌遺伝子で頻度の低い変異

腫瘍抑制遺伝子TP53は、47%の腫瘍で変異が認められ、最も影響を受けやすい遺伝子であることが明らかになった。これまでのところ、p53タンパク質の正常な発現および他の欠陥のある腫瘍抑制遺伝子の発現を回復させる試みはほとんど失敗している。

「しかしながら、p53の変異は頭頸部腫瘍で最も高頻度で起こる遺伝子異常であるという偏りのない方法による研究結果は、バイオマーカー/治療標的としてp53をいかに有効に活用できるかを見極めるために、研究を続けていく必要があることを示唆しています」とMyers氏は述べた。

次に発生頻度が高い遺伝子はNOTCH1であり、15%の腫瘍サンプルで変化が認められた。白血病の癌遺伝子であることはすでに明らかにされていたが、今回の研究結果では、頭頸部癌におけるNOTCH1の腫瘍抑制機能が示された。遺伝子の機能を明らかにするために追跡調査が実施されている。

「NOTCH1は、組織によっては幹細胞を維持したり最終分化に至らせたりする2つの生物学的機能を担っています。このことから、ある状況では癌遺伝子になったり別の状況では腫瘍抑制遺伝子になったりする理由が説明できるかもしれません」と、頭頸部外科助教で論文の筆頭共著者である、Mitchell Frederick博士は述べた。

最新の癌の標的治療は、通常癌細胞の増殖および生存を促進する変異遺伝子もしくは異常調節遺伝子である、癌遺伝子の発現を停止させることを目標としている。2つのグループが同定した最も高頻度で変異が生じた癌遺伝子は、PI3K(腫瘍の6%)およびHRAS(4%)であった。

研究チームはまた、腫瘍抑制遺伝子のCDKN2A(腫瘍の9%)およびFBXW7(5%)において、頻度は低いが重要な変異も明らかにした。

HPVによる腫瘍は遺伝的により単純である

ヒトパピローマウイルス(HPV)が頭頸部癌のリスク要因として認識されたのは最近のことである。研究により、HPV関連の癌患者の全生存期間および無増悪生存期間は、比較的長いことが明らかになった。

研究チームはその原因を次のように説明した。つまり、ウイルスに関連していない腫瘍(20.6±16.7)と比較して、HPV関連癌の1腫瘍当たりの変異(4.8±3)は少なかった。さらに、どのHPV関連の腫瘍にもTP53の変異は認められなかった。

喫煙患者の1検体の腫瘍につき変異数は、非喫煙患者の2倍以上であった。

研究者らは、本疾患による病気や死亡を減らす一番の方法は、頭頸部癌の予防、リスク評価および早期発見であると結論づけている。

今後:ゲノム活性のより包括的な調査

Myers氏によると、遺伝子多型解析は現在進行中のさらに大規模な研究の一環であり、解析には、遺伝子コピー数変化、メッセンジャーRNAおよびマイクロRNAの発現、並びにメチル化による遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングなど、腫瘍中に認められるその他のゲノム異常が含まれる。

「これらのさまざまな種類のゲノムの変動を統合することで、それらがどのように共同して機能するのか、疾患の進行にどのように影響するのかが、さらによく理解できるようになると期待しています」と、MDアンダーソンのTRIUMPH(多専門領域におけるトランスレーショナルリサーチ)プログラムの博士研究員で筆頭共著者である、Curtis Pickering博士は述べた。

MDアンダーソン-BCMチームのエフォートに対して、2つの新たな研究資金源からMDアンダーソンへ助成金が交付された。先ず、国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)から2009年米国再生・再投資法案に基づく助成金、続いてテキサスのCancer Prevention and Research Instituteから助成金が支給された。

ヒューストンでは、MDアンダーソンがんセンターが腫瘍検体を提供・調製し、ベイラー医科大学のヒトゲノムシーケンシングセンターで腫瘍のゲノム塩基配列決定を行い、MDアンダーソンの頭頸部外科およびバイオインフォマティクス・計算機生物学部門の研究者らがその結果を解析した。

「今回のような大きなプロジェクトの実施には共同研究が不可欠です」とMyers氏は述べた。「研究者らは、遺伝子多型の影響を引き出すのに十分な数の高品質の腫瘍検体を収集するために、材料を出し合うことが必要になる場合があります。また、配列決定データの結果を解析するためには、大規模な遺伝子配列を決定する能力およびバイオインフォマティクスの専門知識が必要になります。」

NIDCRは、共同研究を促進するため、MDアンダーソン-BCMチームと、2010年後半に同じNIDCR助成金から資金援助を受けて類似の研究を行ったジョンズホプキンスの研究者らの間を取り持った。

他の資金提供機関は次の通りである。米国国立癌研究所、米国癌学会“Stand Up To Cancer(癌のために立ち上がろう)”ドリームチーム・トランスレーショナルリサーチ・グラント、Virginia and D.K. Ludwig 癌研究基金、M.D.アンダーソンがんセンター頭頚部癌研究推進特別プログラム。

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのMyers氏、Frederick氏およびPickering氏の共著者は次の通りである。Samar Jasser、Tong-Xin Xie(頭頚部外科部門)、John Weinstein医学博士、Jing Wang, Ph.D.、Jiexin Zhang、Nianxiang Zhang博士, (バイオインフォマティクスおよび計算機生物学部門)、Adel El-Naggar医学博士(病理学部門)。

ベイラー医科大学ヒトゲノムシーケンシングセンターの共著者は次の通りである。David Wheeler博士、Richard Gibbs博士、Kyle Chang、Lisa Trevino博士、Jennifer Drummond、Donna Muzny、Yuanqing Wu医学博士 。

ジョンズホプキンス大学医学部からの共著者は次の通りである。筆頭共著者 Nishant Agrawal医師、総括共著者Kenneth Kinzler博士、Victor Velculescu医学博士、Chetan Bettegowda, M.D.、Bert Vogelstein医師、Nickolas Papadopoulos博士(ラドウィッグ癌研究所遺伝学部門、ハワードヒューズ医学研究所、ジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンター)、Agrawal, Ryan Li医師、Carole Fakhry医師、Wayne Koch医師、Joseph Califano医師、David Sidransky医師(耳鼻咽喉科・頭頚部外科部門)、Laura Wood医学博士、Ralph Hruban医師、William Westra医師(病理学部門)

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豊 訳
石井 一夫 (ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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原文

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