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抗原特異的制御性T細胞が、抗体産生の中心を抑制/MDアンダーソンがんセンター

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抗原特異的制御性T細胞が、抗体産生の中心を抑制/MDアンダーソンがんセンター

癌、自己免疫疾患にとって潜在的に意義のある発見
MDアンダーソンがんセンター
2011年7月25日

3種類の特異的遺伝子を発現する制御性T細胞が、侵入者を攻撃するために免疫系で開始される抗体の大量生産を制御する。本研究結果は、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが率いるチームがNature Medicine誌のオンライン版に報告した。

「制御性T細胞は、不必要または過剰な免疫応答を抑制しますが、その機序は解明されていません」と、論文の統括著者であるChen Dong博士(M.D.アンダーソンがんセンター免疫学部門教授、Center for Inflammation and Cancer所長)は述べる。

「われわれは、胚中心と呼ばれる組織構造の反応を抑制する特異的な制御性T細胞を作り出す分子経路を特定しました。胚中心とは、免疫系のT細胞とB細胞が、抗体を迅速に大量生産するため、相互に作用し合う場です」と、Dong氏は述べている。

胚中心不活性化スイッチに関する今回の発見は、Dong氏らが胚中心を活性化するヘルパーT細胞の発現機序を特定してから2年後になされ、癌および自己免疫疾患に対して潜在的な意義を有する。

「いくつかの癌では、制御性T細胞数の増加が予後不良と相関しています」と、Dong氏は述べる。「理論的には、制御性T細胞は、腫瘍の微小環境における免疫応答を抑制します。この細胞がなければ、癌を攻撃していたかもしれません。

ただし、B細胞リンパ腫に関しては、B細胞の増殖や変異は問題であると、Dong氏は述べる。制御性T細胞不活性化スイッチを狙い打つことは、リンパ腫や自己免疫疾患に対しては有用かもしれない。その一方で、制御性T細胞を阻害すると、他の癌に対する免疫反応が許容されてしまうこともあり得る。

抗体産生の中心

胚中心は、リンパ節および脾臓にみられ、B細胞およびT細胞リンパ球、感染防御白血球の集合地点としての機能を果たす。

獲得免疫系が侵入した細菌やウイルスを感知すると、B細胞は侵入者の断片、すなわち抗原をT細胞に提示する。抗原により、ナイーブT細胞がサイトカインを分泌するヘルパーT細胞へと変換され、ヘルパーT細胞はB細胞が増殖し、侵入者を破壊する抗原特異的抗体を産生するよう分化するのを助ける。「胚中心の大半はB細胞が占め、B細胞を制御するヘルパーT細胞は少数です。B細胞は変異を起こし、長期免疫のために高親和性抗体を産生し、およびメモリー型のB細胞になります。胚中心構造に存在する細胞群は、平均数時間で複製し、哺乳類の中で細胞複製率が最も早いものの一つとして知られています」と、Dong氏は述べる。

抗原特異的T細胞の追跡

Nature Medicine誌によれば、Dong氏らはマウスおよびヒトの両方で、2つの遺伝子(Bcl-6、CXCR5)を発現する制御性T細胞サブグループが胚中心に移動し、そこでB細胞にアクセスしていることを発見した。

(Bcl-6は「転写因子」と呼ばれる蛋白質を産生、この蛋白質は他の遺伝子を調節するために細胞核へと移動する。CXCR5は、「CXCL13と呼ばれるシグナル伝達分子を受容する蛋白質である。)

またDong氏らは、Bcl-6とCXCR5を発現するT細胞が、他のT細胞と同じように胸線で産生されるのではなく、もう一つの転写因子Foxp3を発現する制御性T細胞の前駆細胞によって生成されることも発見した。

3つすべての蛋白質を発現する制御性T細胞をノックアウトしたマウスでは、胚中心における抗体産生が増加した。Dong氏らは、この鍵となるT細胞を濾胞制御性T細胞(Tfr)と名付けた。

2009年にScience誌に掲載された論文によると、Bcl-6とCXCR5を発現するナイーブT細胞が、胚中心のB細胞領域にも集まっていることが発見された。Bcl-6の発現によって、このT細胞は濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)に変換され、胚中心で抗体産生を開始させる。

胚中心を不活性化させるTfrと、活性化させるTfhを用いることで、抗体産生を調節できるようになる可能性がある、とDong氏は指摘する。Tfrの産生促進が、ループスや関節リウマチ等の自己免疫性炎症疾患の治療における新たなアプローチとなるかもしれない。

本研究は以下の資金提供を受けている。

The National Institutes of Health, the Leukemia and Lymphoma Society, MD Anderson, the American Heart Association, Doris Duke Charitable Foundation Clinical Scientist Development Award and the China Ministry of Science and Technology Protein Science Key Research Project.

Dong氏の共著者は、筆頭著者Yeonseok Chung, Ph.D.をはじめ以下のとおり。Shinya Tanaka, Ph.D., Roza Nurieva, Ph.D., Gustavo Martinez, Yi-Hong Wang and Joseph Reynolds, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Immunology and the Center for Cancer Immunology; Chung also is with The University of Texas Health Science Center at Houston Institute of Molecular Medicine; Seema Rawal and Sattva Neelapu, M.D., of MD Anderson’s Department of Lymphoma and Myeloma, also of the Center for Cancer Immunology; and Ziao-hui Zhou, M.D., Hui-min Fan, M.D., and Zhong-ming Liu, M.D., of Shanghai Dong Fang Hospital, Shanghai, China.

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濱田 希 訳
田中 謙太郎 MDアンダーソンがんセンター 免疫学部門
監修
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原文

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