新しい遺伝子変異を標的とした最新の優れた経口薬(クリゾチニブ)により進行性の肉腫と肺癌が劇的に縮小/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

新しい遺伝子変異を標的とした最新の優れた経口薬(クリゾチニブ)により進行性の肉腫と肺癌が劇的に縮小/ダナファーバー癌研究所

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

新しい遺伝子変異を標的とした最新の優れた経口薬(クリゾチニブ)により進行性の肉腫と肺癌が劇的に縮小/ダナファーバー癌研究所

腫瘍細胞内の変異タンパク質を検査することで患者が奏効するかを予測する
ダナファーバー癌研究所
2010年10月27日

タンパク質の異常活性が原因である進行性のまれな軟部組織悪性腫瘍(あるいは”肉腫”や”がん”)が、新しい経口薬によって劇的に縮小した。ダナファーバー癌研究所で研究を行う臨床医らがNew England Journal of Medicine(NEJM)誌の10月28日号に発表した。[pagebreak]一見同じように見える腫瘍ではあるが、このタンパク質がはじめて発見された疾患である未分化リンパ腫にちなんで未分化リンパ腫キナーゼALKと名付けられた変異タンパク質が関与していない2番目の患者では薬剤が奏効せず、この異常タンパク質に対する阻害薬の特異性が確認されたと研究者らは述べた。個々の患者のがんを遺伝子異常に基づいて分類することによって最適な薬剤治療を予測する、遺伝子検査を用いた”テーラーメイド医療”の重要性が本知見によって強調された。

NEJMの短報に、2007年に炎症性筋線維芽細胞種(IMT)と診断された44歳男性の例が掲載された。IMTとは小児期~青年期に腹部や胸部に発生することの多い肉腫(または、悪性腫瘍)である。

IMTの約半数は、ALKと他のタンパク質が融合した異常タンパク質が原因となってがんが発生する。ある患者は標準的な化学療法施行後に分子標的薬Gleevecで治療したものの、がんはその後に体のあちこちに再発した。

ダナファーバー癌研究所の腫瘍学者であり、本報告書の筆頭著者であるJames Butrynski医師と統括著者であるGeoffrey Shapiro医学博士は、ALK活性を阻害するだけではなく多くのがんで異常活性がみられる癌遺伝子METをも阻害する試験薬クリゾチニブ(crizotinib)の第1相試験への参加をこの患者に呼びかけた。

クリゾチニブを用いた治療により、50%を超える腫瘍縮小(専門的には”部分奏効”)が得られた。クリゾチニブ投与数カ月後の2008年12月には、再発した腫瘍のうちいくつかは薬剤抵抗性となって再び増大した。これらの腫瘍は、クリゾチニブが奏効し続けているものも含めて手術で切除された。術後にクリゾチニブ投与を再開し、2010年9月現在、この患者に再発の徴候はみられないと研究者らは語る。

クリゾチニブの働きはまれな肉腫に留まらない。同一誌上において、異常なALKタンパク質を有する非小細胞肺癌(NSCLC)の患者群に対するクリゾチニブの目覚しい働きを記した論文も本報告に加えて報告された。マサチューセッツ総合病院、ダナファーバーおよびブリガム・アンド・ウィメンズがんセンターおよびその他の病院の研究者らは、標準治療がもはや効かなくなった患者82例に対しクリゾチニブを投与した。ダナファーバーおよびブリガム・アンド・ウィメンズがんセンターの胸部腫瘍学プログラムで行われているテーラーメイド医療の試みの一環として、ALK異常を認める患者を探し出して本試験に参加させた。これは薬剤を患者に適合させるため、腫瘍の特性をつかむことが重要であることが強調されたものである。

その結果、47例で腫瘍が縮小し(うち完全消失1例)、27例で腫瘍の増大が止まった。このようなALK異常がみられる患者は非小細胞肺癌患者全体の約5%とごくわずかにしか過ぎないが、研究者らはALK阻害薬に感受性を持つ可能性がある他の癌種の調査を始めている。

クリゾチニブのようにかなり優れた分子標的薬でさえ、腫瘍の薬剤耐性獲得に対しては脆弱であるとShapiro氏は述べた。実際、本報告書の共著者の一人であるダナファーバー癌研究所の Pasi Janne医学博士は、クリゾチニブに耐性となり切除したIMT患者の腫瘍の調査を行った。

Cancer Research誌に同時に掲載された論文においてJanne氏らは、患者の腫瘍のALKにさらに別の変異が生じてクリゾチニブに耐性となったことを確認している。さらにJanne氏、Shapiro氏およびダナファーバー癌研究所の同僚であるKwok-Kin Wong医学博士らによって発表された研究において、クリゾチニブに対して抵抗性を獲得するなど別の変異が加わると、異常ALKタンパク質はHsp90と呼ばれる細胞シャペロンの働きに依存してその安定性を増加すことを明らかにした。現在Hsp90の阻害薬が臨床的に評価されており、その阻害薬は異常ALKタンパク質を破戒することが示されている。

クリゾチニブは現在ダナファーバー癌研究所実験治療プログラムの早期医薬品開発センターにおいて評価されている多くの標的薬のうちの一つである。このプログラムは、最新の優れた分子プロファイリング技術によって細分化された様々なタイプのがんの患者に対する効果的な新しい治療法を最高の科学技術を用いて開発するために行われている。

NEJMの短報の他の共著者は以下の通りである。
co-senior author George Demetri, MD, and Marzia Capelletti, PhD, Dana-Farber; Nikhil Ramaiya, MD, Dana-Farber/Brigham and Women’s; and Jason Hornick, MD, PhD, Paola Dal Sin, PhD, and Scott Rodig, MD, PhD, Brigham and Women’s, as well as researchers from other hospitals and Pfizer Global Research and Development.

本研究は国立衛生研究所とファイザー社から一部支援を受けている。

メディアの連絡先
Bill Schaller
(617)632-4090

******
大倉綾子 訳
田中文啓(呼吸器外科/兵庫医科大学病院・准教授)監修
******


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward