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2010/02/23号◆癌研究ハイライト

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2010/02/23号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年2月23日号(Volume 7 / Number 4)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・乳癌において低線量放射線療法はQOLへの害が少ない
・Chemo-switch+ソラフェニブ療法は進行腎臓癌に有効
・DNAの増加や消失を数千の腫瘍において解読する研究
・マイクロRNAが乳癌の転移を促進する仕組みを解明
乳癌において低線量放射線療法はQOLへの害が少ない

英国では、早期乳癌の女性に対して術後に少分割放射線療法(照射回数を減らし、一回当たりの線量を増やす)を用い、より低線量の放射線で治療されることが多い。2月5日発行のLancet Oncology誌オンライン版の報告によると、5年間の追跡調査の結果、この療法は女性のボディ・イメージなどQOLへの弊害が標準的な線量の治療法に比べてわずかに少なかった。

英国癌研究所のDr.Penelope Hopwood氏らは乳癌放射線治療の標準化試験(Standardisation of Breast Radiotherapy:START)AまたはBに参加した2,208人の女性のデータをレビューした。START A試験では乳癌女性は、補助放射線療法として5週間で50Gyを25分割で照射される国際的標準療法、もしくは5週間で39Gyまたは41.5Gyを13分割で照射される療法に無作為に割り付けられた。START B試験では乳癌女性は標準療法、もしくは3週間で40Gyを15分割で照射する短期間の少分割放射線療法に無作為に割り付けられた。

両試験に参加した女性は乳房切除手術もしくは乳房温存手術(BCS)を受けており、試験Aでは78%、試験Bでは88%の女性がBCSを受けていた。大半の参加女性は乳房の大きさは中程度であり、腋窩リンパ節郭清はしているが腋窩への放射線照射は行っていない。6カ月間隔で、参加者に胸、肩、腕における痛み、腫脹、硬直、感覚、また同時に皮膚障害、ボディ・イメージに関するアンケートを行った。また、写真で記録を残し、研究者が客観的に胸部や皮膚の変化を評価できるようにした。

低線量の放射線照射(39Gyまたは40Gy)を受けた女性は、2つのより高線量(41.5Gyまたは50Gy)の治療を受けた女性よりも、5年後の皮膚状態は良好であった。少分割放射線療法を受けた女性は、標準療法を受けた女性と比較して5年後のQOLは同等であった。他の特定の症状で少分割放射線療法を支持する相違点がいくつかあったが、これらは統計学的に有意ではなかった。

「患者によるこれらの評価は、正常胸部組織への副作用が比較的少ない少分割放射線療法を支持するエビデンスを強固にする」と著者らは述べている。しかし、補助照射として少分割放射線療法と標準放射線療法のどちらを受けたかに関わらず、40%の女性は5年後のボディ・イメージに対して中等度から高度の不安があり、また、ほぼ1/3の女性が腕や肩に重度の痛みがあることから、外科治療や放射線療法後のQOLに関する患者による結果報告をさらに調査する必要性が明確に示された。

Chemo-switch+ソラフェニブ療法は進行腎臓癌に有効

分子標的薬であるソラフェニブ(ネクサバール)と、chemo-switch(※薬剤の投与法を途中で切り替えるの意)療法」という方法を組み合わせた3剤療法が、進行腎細胞癌(RCC)の治療に有効である可能性が小規模第2相臨床試験によって示唆された。この治療法を受けた患者の無増悪生存期間(腫瘍の増大なしに生存した期間)と奏効率は、スニチニブ(スーテント)などの転移腎細胞癌に対する第1の治療を受けた場合と同等であった。この結果はLancet Oncology誌オンライン版で2月15日に発表された。

研究者らは患者に従来の化学療法、つまりゲムシタビン(ジェムザール)を最大耐量で投与した後、メトロノミック化学療法(metronomic chemotherapy)という頻回で低用量の化学療法をカペシタビン(ゼローダ)とソラフェニブで行った。メトロノミック化学療法とソラフェニブはどちらも腫瘍血管新生を阻害する。化学療法終了後もソラフェニブの投与を続けた患者もいた。

バルセロナにあるMar-IMIM大学病院のDr.Joaquim Bellmunt氏が指揮する試験に参加した40人の患者は、未治療であり、転移腎細胞癌に対して一般的に行われる免疫賦活療法であるインターロイキン2やインターフェロンαを用いた治療の適応ではなかった。

試験期間中に半数の患者は部分寛解(30%以上の腫瘍縮小)し、17人は不変であった。無増悪生存期間の中央値は、これら40人の患者では11.1カ月であり、全ての効果データを利用できた34人の患者では12カ月であった。研究者らによると、副作用は「軽度から中等度」であったが、7人の患者は副作用で治療を完全に中止している。

本試験は、規模が小さく無作為化されていない等の欠点はあるが、この治療戦略は将来の試験において「さらに研究される価値がある」と、NCIがん研究センターの泌尿器腫瘍課のDr.Ramaprasad Srinivasan氏は述べた。これらは転移腎細胞癌の初回治療として用いるソラフェニブの最も強力な結果であり、「ソラフェニブ単独療法で期待されていた効果よりも優れている」と同氏は指摘した。

DNAの増加や消失を数千の腫瘍において解読する研究

DNAコピー数変化として知られる、特異な種類の遺伝的変化を同定するために、数千の腫瘍を用いて大規模分析が行われた。これらの変化は、癌増殖中に染色体の領域が不適切に増幅あるいは欠失された時に起こる。今回の新しい試験により、コピー数変化の種類と程度を、これまでで最も包括的に捉えられるようになる可能性がある。

1種類の腫瘍でみられるコピー数変化は、他のいくつかの腫瘍においても同様にみられることが多い、と研究者らはNature誌2月18日号で報告した。「癌を引き起こす遺伝的変化は種類の違う癌でも共通であることは以前からわかっていたが、本研究によってこの現象の理解が深まった」とダナファーバー癌研究所の主任研究者であるDr. Matthew Meyerson氏は述べた。

今回の分析は26種類、3,100個の癌で行われた。いくつかの癌では150以上の染色体領域で増幅や欠失が認められ、これまでコピー数変化と関連付けされていなかった領域も多く含まれていた。これら染色体領域のどのDNA部分が癌を悪化させるのか、また単に存在するだけで癌には影響しないのはどの部分なのかを同定するために、さらなる研究が必要である。

最もよくみられたコピー数変化は、染色体の比較的小さい部分(約180万DNA単位、つまりヒトゲノムの0.03%の大きさ)もあれば、染色体腕や染色体全体の長さのずっと大きな部分もあった。コピー数変化の中には、MCL1遺伝子やBCL2L1遺伝子などの細胞死を制御する遺伝子ファミリーは、他のものよりも多く含まれていた。

「特定の病気ではコピー数変化が決定的に重要になることが解り始めている」とNCI副所長であるDr. Anna Barker氏は述べた。この研究内容で大規模な試験の結果が得られれば、癌において最も重要な変化を同定しようとする時に役立つだろうと、彼女は付け加えた。これらの研究を促進するため、著者らは研究データをTumorscapeのウェブサイトで利用できるようにした。

マイクロRNAが乳癌の転移を促進する仕組みを解明

MiR-9と呼ばれるマイクロRNA(以下microRNA ※遺伝子の活性を制御する小さなRNA分子)が、乳癌が他部位へ転移したり、生き延び増殖するために栄養を集める能力に重要である可能性があることが、Nature Cell Biology誌オンライン版で2月21日に報告された。

ホワイトヘッド・バイオ医療研究所のDr. Robert Weinberg氏らは、乳癌細胞株において、miR-9は細胞間接着や組織形成に働くタンパク質であるE-カドヘリンの発現を抑制することを明らかにした。この結果は、腫瘍細胞が上皮間葉移行(EMT)と呼ばれる形質転換を起こし、原発巣から離れ他の組織に浸潤する能力を獲得するということを意味すると、Dr. Li Ma氏らは述べている。よく知られた癌遺伝子であるMYCによって、このmicroRNAが活性化されることも明らかになった。

研究者らは、乳癌マウスモデルを用いてこれらの活性パターンを確認し、普段は転移しない乳癌を移植したマウスモデルにおいてmiR-9を増加させると、多くの小さな肺腫瘍が出来ることを示した。逆に、特に転移しやすい乳癌を移植したマウスにおいて、miR-9を阻害すると転移が減少した。

乳癌細胞株や乳癌マウスモデルを用いた実験によって、miR-9が、転移に加えて、腫瘍細胞におけるβ-カテニンタンパクの活性化などのカスケード活性化を引き起こすことも示された。β-カテニンタンパクは、腫瘍血管新生で主要な役割を果たすVEGFの産生を導く。miR-9を発現する乳癌細胞を移植したマウスの腫瘍では腫瘍中やその周辺に血管が豊富であった。

しかし研究チームは、E-カドヘリンを抑制しβ-カテニンを活性化することはVEGF活性増加に「必要だが十分ではない」ことを明らかにし、この効果に必要な他のmiR-9の標的が存在すると指摘した。

そのような標的のひとつはα-カテニンであるかもしれないと、オーストラリアのアデレードのCenter for Cancer Biology所属のDr. Yeesim Khew-Goodall氏とDr. Gregory J. Goodall氏は付属解説で述べている。α-カテニンタンパクは細胞中でβ-カテニンの近くに存在し、VEGF産生を導くβ-カテニンの活性化を阻害することができる。

また、オーストラリアの研究者らは、miR-9は転移性の乳癌や肝臓癌では活性があるが、限局性の乳癌や肝臓癌では活性がないことがほかの研究で示されており、この分子は複数の腫瘍において転移を促進する可能性があることも指摘した。

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野長瀬 祥兼 訳
九鬼 貴美(腎臓内科)、辻村 信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修

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