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浸潤性乳癌女性の一部を対象とした部分乳房に対する1回照射の安全性

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浸潤性乳癌女性の一部を対象とした部分乳房に対する1回照射の安全性

Intraoperative Partial Breast Irradiation Is as Effective as Whole Breast Radiotherapy for Some Women with Invasive Breast Cancer

(Posted: 07/08/2010) – Lancet誌2010年6月5日号電子版掲載の研究によると、一部の浸潤性乳癌女性にとって術中に一度の放射線照射は外部放射線治療の標準コースの代替となりうる。

要約 乳房温存術中に放射線1回照射を受けた乳癌女性と術後に標準的な全乳房への外照射(EBRT)を受けた乳癌女性を対象としたランダム化第3相試験において、いずれの治療法も4年後の再発率は同程度でした。

出典 Lancet誌、2010年6月4日電子版(ジャーナル要旨参照

背景 早期乳癌女性(非浸潤性乳癌)は、通常、全乳房切除術ではなく、乳房温存術(BCS)を受けます。乳房温存術では、腫瘍を含む乳腺組織とその近傍のリンパ節を切除しますが、癌の再発率を減らすために、標準治療として、乳房温存術後に全乳房への外照射治療(EBRT)が行われます。このタイプの放射線療法は、約6週間にわたって週5回低線量で放射線を照射します。

外照射療法は治療期間が長い上に治療施設までの往復移動時間を要するため、研究者らは乳房温存療法を受けた女性患者を対象に、より回数が少ない放射線照射手法を開発しています。その方法の一つとして、加速部分乳房照射法が注目されています。部分乳房照射法とは、放射線を全乳房に照射するのではなく、特に腫瘍が存在した乳腺組織に対してのみ照射する方法を指します。部分乳房照射法では、外部照射法よりも少ない回数で高線量を照射することが可能です。

部分乳房照射の方法に関しては現在開発中ですが、TARGIT-Aと呼ばれるランダム化第3相試験において、研究者らは乳房温存術を受けた浸潤性乳癌女性患者を対象として、術中に乳房へ部分照射を施行した群と術後に標準的な全乳房照射を施行した群を比較しました。

試験 9カ国からなる研究者らは、Intrabeamという装置を用いて、手術中におよそ20Gyの放射線を部分乳房に対して1回照射する群に1,113人、40~56Gyの放射線を15~25分割で照射する(治療の最後に追加照射する場合あり)EBRT群に1,119人を無作為に割り付けました。試験に参加した医師全員、Intrabeam装置使用法の特別なトレーニングを受けていました。

対象は45歳以上の女性であり、単発浸潤癌に対して乳房温存術の適格患者でした。本試験は乳管癌患者を対象とし、再発リスクの高い小葉癌患者は除外しました。しかし、乳房温存手術中に1回照射を施行する群の一部(約15%)において、術中に小葉癌あるいはその他ハイリスク癌であることがわかり、術後に追加EBRTを実施しました。両群の女性とも、必要に応じてホルモン療法および化学療法を受けました。

治療終了後、3および6カ月後に追跡調査のため、外来通院し、それ以降、半年毎に最大5年、その後は、1年毎に最大10年間評価するスケジュールをたてました。主要転帰は同側乳房での局所再発としました。本試験は、非劣性試験で、術中の部分乳房照射が標準EBRTよりも転帰を悪化させないという結果を示すことを目的としています。また、両群で観察された副作用も記録しました。

本試験は、イギリスのユニバーシティ―・カレッジ・ロンドンの手術研究部のJayant S. Vaidya医師が主導で実施されました。

結果 TARGIT-Aに参加したほとんどの女性の腫瘍は小さく、直径1cm以下が36%(ペンシル用の消しゴム程度の大きさ)、1~2cmが50%、2cm以上は全体の14%に過ぎませんでした。腫瘍の大部分は悪性度が低く、80%以上の女性にリンパ節への浸潤は見られませんでした。

追跡調査を開始してから4年後、EBRT群で5人、術中部分乳房照射群で6人のみ、乳癌の局所再発をしました。これはほぼ理想的な数字でした。この結果より、術中部分乳房照射が標準EBRTに対して劣っていなかったことを示しています。

副作用の発生率に関しても、両群とも同程度でした。術中に部分乳房照射を受けた女性患者には、手術による漿液腫(手術箇所に液体(漿液)が溜まること)が多く認められました。漿液腫は、数回のドレナージを必要としますが、1回照射による主な合併症は、EBRT群と共通していました。

制限事項 NCIのClinical Radiation Oncology BranchのチーフであるBhadrasain Vikram医師は、本試験結果を別のタイプの部分乳房照射法にまで一般化することはできないと指摘しました。「もし、このような治療効果を得たいのであれば、この装置(Intrabeam)を用いて、同じ治療スケジュールを組まなければいけません」と述べました。別の臨床試験(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Projectによる試験を含む)において、現在、部分乳房照射法と標準EBRTが、別の方法で比較されています。

さらに、Vikram氏は、「部分乳房照射法は、すべての浸潤性乳管癌患者に使用できるわけではありません。本試験に参加した患者の大多数は、腫瘍が小さく、エストロゲン受容体陽性で、かつリンパ節への浸潤もみられませんでした。それゆえ、部分乳房照射法に最も適切な患者群であったといえます。本レジメンを今回の癌の特性ではない患者に対して実施した場合、部分乳房照射法が再発予防に有効であるかどうかわからないため、幾分危険であったかもしれません」と説明しました。

コメント BCS(乳房温存術)後、EBRTを受けた患者の局所再発リスクは治療後2年目および3年目が最も高くなっています。本試験では、両群とも局所再発率は同程度で、かつ追跡調査4年目には局所再発は認められませんでした。著者らは、本試験は、術中標的照射法が安全であるという過去の知見に対し、新たに確かで成熟したエビデンスを提供したことになるとし、果たして部分乳房照射群の患者に全乳房照射を行う必要があるだろうか、といった挑戦的な結果でもある、と結論づけました。

本試験はとりわけ70歳を超えた早期乳癌女性に関係するだろうとVikram氏は述べました。最近実施された別の臨床試験では、70歳を超えた乳癌患者にとって、EBRTによる恩恵よりも欠点のほうが勝っていることが示唆されました。70歳を超えた乳癌患者にとって、術中部分乳房照射法はほぼ理想の治療法なのです。麻酔から覚めるまでに治療が終了しているため、放射線治療のために何週間も通院する必要がないからですと説明しました。

しかし、より若い患者においても、この方法は放射線療法の面倒な要素を取り除き、患者の乳房温存を可能にし、再発に対する心配を排除するという利点があります。要するに、術中部分乳房照射法が適格である患者にとって、明らかにこの方法を用いることで得られる利点と日々の放射線治療を省略できるという利点があるでしょうとVikram氏は結論づけました。

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舛田理恵 訳

中村光宏(医学放射線/京都大学大学院)監修

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