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急性前骨髄球性白血病におけるオールトランスレチノイド酸の寛解後療法は有効

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急性前骨髄球性白血病におけるオールトランスレチノイド酸の寛解後療法は有効

 Post-Remission Therapy that Includes All-Trans Retinoic Acid is Effective for Acute Promyelocytic Leukemia (Posted: 07/02/2010)

要約 低または中等度リスクの急性前骨髄球性白血病(APL)患者を対象とした早期第2相試験において、化学療法剤ミトキサントロンの減量投与とオ-ルトランスレチノイン酸(ATRA)の併用による地固め (寛解後) 療法が比較的高い無病生存率を維持しつつ、より低い毒性を示しました。高リスク患者に対しては地固め療法としてATRAとイダルビシンの組み合わせに、シタラビンを併用したところ過去の試験よりも再発率を低く抑えることができました。

出典 Blood誌電子版2010年4月14日(ジャーナル要旨参照)

背景 APLはまれな疾患ですが急性骨髄性白血病(AML)のサブタイプで、進行が早く血中と骨髄中に大量の幼若造血細胞が出現する白血病です。初期療法、または導入療法ではアントラサイクリン系化学療法剤と、ビタミンA誘導体のATRAを併用するか、三酸化ヒ素によりほとんどの患者は寛解に至ります。白血病が寛解となった後、体内に残存し再発の要因となりうる癌細胞を消滅させるため患者は寛解後療法または地固め療法として2段階目の治療を行います。APLでは地固め療法の後通常1年、またはそれ以上の期間、維持療法を行います。

スペインのPETHEMA共同研究グループによる過去に実施したAPL治療に関するLPA99試験では、地固め療法としてアントラサイクリンをベースとした化学療法にATRAを併用することで、それ以前の臨床試験におけるアントラサイクリン単独による地固め療法より、はるかに再発率が低下することを示しました。LPA99では地固め療法は1カ月のコースを3回行いました。1コース目と3コース目には化学療法剤としてアントラサイクリン系化学療法剤であるイダルビシンとATRAを併用しました。2コース目はアントラサイクリンに似た構造を持つミトキサントロンとATRAを併用しました。

研究者らは、さらなる転帰の改善と有害な副作用の減少を目的として、地固め療法段階に修正を加え、新規研究としてLPA2005試験をデザインしました。

試験 LPA2005試験ではヨーロッパと南アメリカから新たにAPLと診断された小児と成人合わせて404人が参加しました。患者は2歳から83歳で、うちほとんど(79%)が18歳から60歳でした。診断時患者らは白血球数と血小板数から再発の危険度別に低リスク群、中等度リスク群と高リスク群に分類されました。

患者全員が導入療法として経口ATRAとアントラサイクリン系化学療法剤であるイダルビシン静脈注射を投与されました。完全寛解に至った後、以前のLPA99試験で用いたレジメンを修正した地固め療法を1カ月単位で3コース実施しました。新規試験では低中等度リスク群の患者には高リスク群の患者と異なる薬剤および用量を投与しました。LPA99同様、地固め療法後、生存していた患者全員に維持療法としてATRAと低用量化学療法剤を投与しました。

今回の試験の主要目的は60歳以下の高リスク患者の再発率を減少させることでした。よって当該患者らは地固め療法の1コース目と3コース目はATRAとイダルビシンに化学療法剤シタラビンを併用しました。副次目的は低中等度リスク患者の、治療効果を損なうことなく有害な副作用を減少させることであり、研究者らは地固め療法2コース目のミトキサントロン投与期間をLPA99試験よりも短縮しました。その後それらの結果とLPA99試験の結果を比較検討しました。

試験はスペインのPETHEMA財団より資金提供を受け患者らはスペイン、ポーランド、オランダ、アルゼンチン、ウルグアイ、チェコ共和国の81施設から参加しました。PETHEMAとHOVON(Hemato-Oncology Foundation for Adult in the Netherlands)グループの研究者らが試験を担当し、スペインにあるバレンシア大学病院Miguel A.Sanz医師が筆頭著者を勤めました。

結果 試験では評価可能な患者402人中372人が導入療法により完全寛解に至りました(92.5%)。残る30人は導入療法中に出血または感染症が主な原因となって死亡しました。寛解を得た372人のうち361人(97%)が3コースの地固め療法を終了し維持療法を受けました。

評価可能な372人の患者のうち、92%が生存し完全寛解後の3年間は再発しませんでした。この3年間の無病生存率はLPA99試験と比べて統計的有意差がありませんでした。

完全寛解と診断された日から3年間の累積再発率は患者全体の7%でした。高リスク患者のうち完全寛解後3年以内に再発したのは、LPA99試験の26%に対し、今回は11%でした。

導入療法開始から3年後の時点においてLPA2005試験で治療を行った患者の89%、LPA99試験では85%の患者が生存していました。この全生存率には統計的有意差はみられませんでした。

地固め療法中に、ATRAとイダルビシンにシタラビンを併用した高リスク患者は、LPA9 9試験でシタラビンを投与していない高リスク患者と比べ、血液学的(血液関連の)合併症がより多くみられ、より長期間の入院を必要としました。しかしこれらの患者はLPA9 9試験の患者に比較して死亡率も脱落率も高くありませんでした。

本試験では低中等度リスク患者と60歳以上の高リスク患者は、全員が地固め療法2コース目でミトキサントロンの投与量を減量したためLPA99試験の低中等度リスク患者よりも血液学的合併症の減少、入院期間の短縮がみられました。さらに有害事象の減少は再発率、無病生存率、全生存率に影響していませんでした。3年全生存率は低リスク患者で96%、中等度リスク患者で93%でした。

コメント 「今回の研究により、APL患者は致死性の出血イベントや感染症といった治療合併症を併発する危険性があるということに気付かされました」と、NCI臨床試験支部のRichard Little医師は述べました。本試験にはいくつかの制限事項があるものの(下記)Little医師は「前回の試験に比較して、本試験は妥当な有害事象と好ましい転帰を得ることができたと言って良いと考えています」と述べました。

またLittle医師は「全生存率は、いろいろな意味で最も重要な評価項目です。しかし、もし多くの患者が白血病を再発し、その後の治療がその再発に対し効果を示すことで生存が延長されれば、全生存率は初期治療の評価としてあまり意味がないかもしれません。無病生存率、つまり完全寛解を得た患者が再発することなく生存したというデータと、累積再発率のデータはそのレジメンの白血病治療に対するベネフィットを理解するために重要な指標となります」と付け加えました。

制限事項 本研究はシングルアーム第2相試験であり、異なる治療法を比較するため参加者を各群に無作為に振り分けるランダム化臨床試験ではありませんでした。代わりに、本試験では各リスク群の全患者が同じ治療を受け、過去の試験に参加した同様の患者群と比較しました。よって、サポートケアマネジメントや患者選択の差異などの他の要因を考慮することなく、地固め療法レジメンの修正による有害事象の減少と完全に結論付けることはできません。「私は、ランダム化試験でない限り、ある試験が他よりも優れていると言及することには、充分慎重でなければならないと考えています。(前回試験の)良好な結果は今回の修正版でも維持することができたと思いますが、2つの試験における特定の有害事象の比較を強調することは避けたいと思います」とLittle医師は述べました。

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武内 優子 訳

吉原 哲(血液内科/造血幹細胞移植)

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