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新たに多発性骨髄腫と診断された患者において、ボルテゾミブが生存率を改善させる

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新たに多発性骨髄腫と診断された患者において、ボルテゾミブが生存率を改善させる

Bortezomib Improves Survival of Newly Diagnosed Patients with Multiple Myeloma (Updated: 05/04/2010)

– 2010年5月1日発行のJournal of Clinical Oncology誌によれば、分子標的治療薬ボルテゾミブを標準治療(メルファランとプレドニゾン)に追加すると、新たに多発性骨髄腫と診断された患者では増殖抑制期間の有意な延長および全生存率の有意な改善が認められた。


要約

多国間VISTA試験の第Ⅲ相臨床試験の結果によると、新たに多発性骨髄腫と診断された患者に対し、分子標的治療薬であるボルテゾミブを標準的治療(メルファランとプレドニゾン)に追加すると、増殖抑制期間と全生存率が有意に改善されました。これらの結果をもとに、米国ではボルテゾミブの使用が承認されました。

出典 New England Journal of Medicine誌、2008年8月28日号(ジャーナル要旨参照)続けて、最新の結果はJournal of Clinical Oncology誌、電子版2010年4月19日号(ジャーナル要旨参照

背景 多発性骨髄腫は、骨髄で形質細胞(白血球の一種)の増殖が抑制できなくなることで発症します。この疾患は滅多に治癒はしませんが、充分に治療は可能です。化学療法により、大抵はこれら骨髄腫細胞の数を減らすことが可能であり、自家幹細胞移植に体力的に耐えられない患者にとっては最初の選択肢の治療法となります。この中には65歳以上の患者のほとんどが含まれており、これは、この病気と診断されることが最も多い年齢層です。

ここ数年の標準的な化学療法は、メルファランとプレドニゾンを併用したものですが、他のいくつかの新規の薬剤でも有望な結果が出てきています。これらにはデキサメタゾン、サリドマイド、レナリドマイドなどの、さまざまな組み合わせも含まれます。その他の有望な新しい薬剤の1つがボルテゾミブ(ベルケイド®)で、これはたんぱく質の変性をコントロールする巨大な細胞構造、プロテオソームの作用を阻害するターゲット療法に用いられます。

ここで記述された試験に基づき、2008年6月20日、米国食品医薬品局(FDA)はボルテゾミブを多発性骨髄腫の一次治療薬として承認しました。

試験 VISTA試験(多発性骨髄腫において、ベルケイドを最初の標準的治療として用いる試験)において、新たに多発性骨髄腫と診断されて、治療を受けていない患者で、幹細胞移植を伴う高用量療法の対象でない人が、無作為化により2つのグループに分けられました。344人の患者はメルファランとプレドニゾンに加えてボルテゾミブの投薬を受け、338人の対照群はメルファランとプレドニゾンのみの投薬を受けました。患者の年齢の中央値は71歳で、30%が75歳以上でした。

2004年12月から2006年9月の間に、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカ22カ国の151のセンターから募集された患者は、自分がどの組み合わせの投薬を受けたかを知っていました。すべての患者が6週間サイクルの標準治療を9回受けるようスケジュールが組まれ、ボルテゾミブのグループは静脈注射による投薬も受けました。3週間ごとに血液と尿サンプルを採取して病気の進行具合が調べられ、有害事象は継続的に監視されました。治療後は、少なくとも12週間ごとに予後観察が行われました。

この試験の筆頭著者は、スペインのHospital Universitario de SalamancaのJesứs F. San Miguel医師です。

結果 2007年6月、ボルテゾミブ群の優位性が明らかになったため、データ安全性モニタリング委員会が試験を中止させました。これ以降、奏効率や病気の進行時間、病気が進行せず生存した率などの追加データは収集されませんでした。しかし、全生存率、その後の治療の有無、その後の治療による反応は、2009年3月まで追跡されました。

ボルテゾミブ群の患者は、いかなる時期においても死亡リスクが35%減少していました。治療の3年後、ボルテゾミブ群患者の全生存率は68.5%で、メルファランとプレドニゾンのみを投与された患者群では54%でした。

両グループの患者の大多数が結果的に追加の治療も受けていました。次の治療が必要になるまでの時間はボルテゾミブ群患者の方が長く、中央値が28.1ヶ月でしたが、最初にメルファランとプレドニゾンのみを投与された患者群では19.2ヶ月でした。

重要なことに、ボルテゾミブによる治療は、再発に伴う追加の治療に対し、より耐性を示すということはありませんでした。再発後に投与されたサリドマイドとレナリドマイドの薬剤による奏効率は、両グループで似通っていました。最初の治療の一部としてボルテゾミブを投与された患者は、再発後に投与された患者よりも長生きしました。

治療による副作用率は2つのグループの間でやや異なりました。深刻な(グレード3または4の)神経系の障害や痛みはボルテゾミブ群患者の13%で発症し、標準治療群では見られませんでした。しかし、これらの神経系の問題のほとんどは数ヶ月で完全に解決しました。全体的には、53%で神経系の障害や痛みが発生したのに比べて、標準治療群では16人でした。深刻な胃腸障害は、対照群でより頻繁に見られました。全体的には、53%のボルテゾミブ群患者が何らかの重篤な有害事象を経験したのに対し、標準治療群患者では44%でした。

制限事項 最近の試験では、レナリドマイドと低用量のデキサメタゾンや、メルファランとプレドニゾンの標準治療にサリドマイドあるいはレナリドマイドを加えたものでも、同等の結果が出ています。これらの結果に伴って、ロサンゼルスにあるSamuel Oschin Comprehensive Cancer InstituteのBrian Durie医師は、「これら4つの併用療法は有望に見えるが、どの治療法を選択するのが最適かを決められるような、各治療法を別のものと比較したランダム化試験のデータは入手できていない」と論説に記述しました。

コメント 「この40年間、多発性骨髄腫の治療に関してはほとんど進歩が見られなかった」と、米国国立癌研究所、癌の疫学・遺伝学部門のOla Landgren医師は述べました。「なので、過去数年に進歩が見られているのは励みになる。」そして、今回の試験で示されたように、ボルテゾミブの使用を標準治療に加えることも含めて「明らかに、我々が患者にできることはまだあるはずだ。」と言いました。

一般的な集団においては、多発性骨髄腫を発症する平均年齢は70歳前後です。したがって、多発性骨髄腫の患者の多くはさらに高齢で、大抵は幹細胞移植の厳しさには耐えられないと彼は説明しました。

「彼らにとって — そして人々が長生きするに従って、その数は増えているのだが — 新たな治療薬のメニュー数が増えることは、未来のためにわくわくするような選択肢を提示することになる」、そして、これらの薬剤の多くは有害事象がより見られるわけではなさそうだ、とLandgren医師は述べました。現時点では治癒ではないものの、かつては平均で3〜4年以上生存できなかった病気において、これは非常に有望な研究の軌跡であると言えます。

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水向 絢子訳

林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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