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高線量放射線によって前立腺癌の「生化学的再発」が減少する

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高線量放射線によって前立腺癌の「生化学的再発」が減少する

Higher Radiation Dose Reduces “Biochemical Recurrence” of Prostate Cancer (Posted: 10/03/2005、Updated: 3/15/2010)–Journal of Clinical Oncology誌2010年3月1日号によると、早期前立腺癌で高線量照射を受けた患者の前立腺特異抗原(PSA)値の上昇(「生化学的再発」と呼ばれる事象)幅は従来の線量の放射線治療を受けた患者よりも少ないことが示された。


キーワード 前立腺癌、高線量放射線、原体照射法(癌関連用語の多くはCancer.gov Dictionaryに掲載されています)

要約 約9年間のフォローアップの結果、早期前立腺癌で高線量照射を受けた患者の前立腺特異抗原(PSA)値の上昇(「生化学的再発」と呼ばれる事象で15年以上経過した後の実際の再発を予測できる可能性のあるもの)幅は従来の線量の放射線治療を受けた患者よりも少ないことが示されました。高線量放射線治療による利点は再発リスクの低い患者で最も顕著でした。

出典 2010年2月1日Journal of Clinical Oncology(先行のオンライン版で発表)より(ジャーナル要旨参照

背景 現在、米国ではほとんどの前立腺癌が早期に発見されます。早期前立腺癌患者の治療選択肢の1つに癌細胞を死滅させることが可能である放射線治療があります。

しかし、たとえ放射線治療後であっても、前立腺癌が再発する可能性はあります。高線量放射線治療によって再発の可能性は低下しますが、腸管障害、勃起不全、排尿困難といった副作用のリスクが高くなることがいくつかの研究で示されています。

進行前立腺癌に関する研究では、「原体」照射法という技術によって放射線科医は高線量の放射線を安全に照射することができ、これによって再発の減少が示唆されています。原体照射法では,標的体積に対して集中した照射野が三次元的に配置するため、より多くの正常組織を放射線から避けることができます。また、標的をより正確にとらえることができるため、さらに高線量の放射線を安全に照射することもできると考えられています。原体照射法には高エネルギー放射線(光子線治療)または陽子線(陽子線治療)を用います。

本稿記載の第3相臨床試験は、原体照射法を用いて従来の線量よりも高線量の放射線を照射した場合に、早期前立腺癌の制御率が改善されるか否かを調べるために計画された試験です。5年間(中央値)のフォローアップ結果は2005年に報告されています。研究者らは今回、約9年間(中央値)のフォローアップ結果について報告しました。

試験 1996年1月から1999年12月までの間に、Loma Linda University Medical Center(カリフォルニア)およびMassachusetts General Hospital(ボストン)の研究者らによって、病期Ⅱの前立腺癌があり前立腺外への転移がみられない患者393人が試験に登録されました。すべての患者が光子線と陽子線による原体照射法治療を受けました。そのうち総線量70.2 Gy(従来の線量)を受けた患者は197人、総線量79.2 Gyを受けた患者は195人でした。患者のほとんどが白人で、年齢の中央値は従来線量照射群が67歳、高線量照射群が66歳でした。

放射線治療期間中、癌に対する他の治療は全く受けませんでした(ホルモン療法を含む)。原体照射法による治療の後、研究者らは8.9年間(中央値)にわたって患者の前立腺特異抗原(PSA)値を定期的に検査して前立腺の調査を行いました。局所再発を調べるために生体組織検査を受けた症例もありました。試験では患者の主治医に副作用の重症度および数を問い合わせました。

この臨床試験が計画された1995年以来、研究者らは前立腺癌の再発リスク別に患者を分類する方法を発展させてきました。これらの分類方法によると、登録患者のうち227人(58%)が低リスク、144人(37%)が中等度リスク、17人(4%)が高リスク患者でした。

主著者はハーバード大医学部およびMassachusetts General HospitalのAnthony L. Zietman, M.D氏です。

結果 高線量照射群の患者は従来線量照射群の患者よりも生化学的再発(PSA値の上昇幅により測定)が少ない傾向が示されました。生化学的再発は従来線量照射群の患者の32%にみられたのに対し、高線量照射群の患者では17%のみにみられました。リスクグループ別の解析では、再発リスクが中等度の患者においても高線量放射線治療による利点を示す所見がみられましたが、高線量放射線治療の統計学的に有意な長期優位性が認められたのは、低リスクグループのみでした。

腸管障害や勃起不全などの副作用が認められた患者はわずかで、副作用が認められた患者の数は従来線量照射群と高線量照射群でほぼ同じでした。

患者の全生存率は両群で同等でした

制限事項 他の前立腺癌に対する高線量放射線治療の研究では光子線治療のみですが、この臨床試験では光子線治療と陽子線治療を行っています。しかしながら、本試験で比較したのは放射線量であって、放射線源ではありません。

デューク大学医療センターのW. Robert Lee医師は付随論説で「この臨床試験は光子線治療と比較して、陽子線治療の効果を予測できるように計画された試験ではありません」と述べています。

また、この臨床試験では高線量放射線治療を受けた患者の全生存率は改善しませんでした。この転帰(全生存率)の改善を示すにはさらに長期間のフォローアップが必要だと思われます。

さらにこの臨床試験は登録患者の予測再発リスク別に転帰を評価できるように計画されたわけではありませんでした。そのため、リスクグループの差は今後の試験で確認する必要があります。

コメント NCI放射線腫瘍学研究課のAradhana Kaushal医師は「このランダム化臨床試験の所見は早期前立腺癌患者に対する高線量放射線治療について、すでに米国で確立された傾向と一致するものです」と述べました。

しかしながら、今回の9年間のフォローアップで、高線量放射線治療により統計学的に有意な生化学的利点が認められたのは、再発リスクが低い患者のみであることをKaushal医師は指摘しています。また、再発リスクが低い前立腺癌患者の中には積極的な監視(患者の状態を詳しくモニタリングしながらも、癌再発の兆候が認められる、もしくは検査結果で癌細胞に変化が認められるまで治療は行わない)が同等に実行可能な選択肢となる者がいるかもしれません。

Kaushal氏は「医師が患者と治療の選択肢について話す際、医師は積極的な監視という選択肢があること忘れてはなりません。再発リスクの低い類の前立腺癌を有する老年患者で合併疾患がある場合は、無条件に積極的な監視を治療の選択肢の1つとして考えるべきです」と述べました。また、再発リスクの低い前立腺癌の中には進行がとても遅いものがあり、Kaushal氏によると「前立腺癌が原因というよりも、むしろ前立腺癌を有しながら別の理由で死亡する」再発リスクの低い前立腺癌患者集団も存在します。

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伊藤 くみ 訳

中村光宏(医学放射線)監修

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