セツキシマブ (Erbitux®)と放射線の併用療法は頭頸部癌患者に有益 | 海外がん医療情報リファレンス

セツキシマブ (Erbitux®)と放射線の併用療法は頭頸部癌患者に有益

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

セツキシマブ (Erbitux®)と放射線の併用療法は頭頸部癌患者に有益

Cetuximab (Erbitux®) Plus Radiation Beneficial for Patients with Head and Neck Cancer (Posted: 06/05/2004、Updated: 2/25/2010)–放射線単独治療と比べ、セツキシマブと放射線の併用療法は、まだ体内の他部位に転移していない進行した頭頸部癌患者の全生存期間を延長させることがLancet Oncology誌2009年11月7日号で発表された。


キーワード 頭頸部癌、セツキシマブ(Erbitux®)、上皮成長因子受容体(EGFR)、化学放射線療法、放射線治療(癌関連用語の多くはCancer.gov Dictionaryに掲載されています)

要約 放射線単独治療と比べると、セツキシマブと放射線の併用療法は、まだ体内の他部位に転移していない進行した頭頸部癌患者の全生存期間を延長させます。

出典 Lancet Oncology誌、オンライン版2009年11月7日号(ジャーナル要旨参照

背景 頭頸部の進行扁平上皮細胞癌(ほとんどの頭頸部癌を含むカテゴリー)患者に対する初期治療の選択肢には放射線治療、化学療法を併用した放射線治療(化学放射線療法と呼ばれます)、術後放射線または化学療法、もしくはその両方、および化学放射線療法施行前の初回(導入)化学療法があります。頭頸部癌患者に対する現在の標準治療は、シスプラチンなどのプラチナ製剤の1つを用いた化学放射線療法です。

しかしながらそのような治療の結果として、重度の口腔粘膜炎がしばしば発現し、胃管チューブを使用しないと食べることが難しくなるような状態になります。現在、毒性が低い効果的治療法の研究が行われています。

セツキシマブは上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害するモノクローナル抗体で、潜在的に毒性の少ない標的治療薬です。早期試験の結果で、セツキシマブを用いた治療を行うと、進行した頭頸部癌患者の放射線治療の効果を増感することが示唆されました。

中にはセツキシマブを用いた治療により、ざ瘡様の皮膚反応(発疹)を顔面および身体に発現する人もいますが、通常、治療後には消失する一過性のものです。この発疹の発現および強度は、いくつかの種類の癌では良好な生存率と関連しています。

試験 1999年から2002年の間に合計424人のステージⅢまたはⅣの頭頸部癌患者が米国および欧州の複数の施設で、この第Ⅲ相臨床試験に参加しました。すべての患者は扁桃、舌、咽頭あるいは喉頭に腫瘍を有し、リンパ節転移の可能性はあったとしても身体の他の部位への転移はみられませんでした。

患者は、放射線単独治療群(213人)、あるいは放射線治療+週1回のセツキシマブ投与群(211人)のいずれかに無作為に割り付けられました。各患者の病気の特徴に応じて、医師は患者を3つの放射線治療法レジメンのうちの1つで治療をしました。3つのレジメンの総線量はほぼ同じでしたが、分割照射の方法は異なっていました。

すべての患者は中央値で5年間追跡されました。試験責任医師はアラバマ大学バーミンガム校のJames A. Bonner医師でした。本試験は、インクローンシステムズ社、ブリストルマイヤーズ・スクイブ社およびメルクKGaA社から援助および薬剤の提供受けました(プロトコールの要約参照)。

2006年にNew England Journal of Medicine誌に発表された最初の報告[url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16467544](同ジャーナル要旨参照)[/url]では3年後の転帰を比較検討しました。最新報告には5年生存に関する情報が記載されています。研究者らはまた、セツキシマブ併用治療患者にみられた発疹の発現が全生存期間と関連していたかどうかを判断するために、患者のサブグループの解析を行いました。

結果 最初の解析で、セツキシマブを追加することによって全生存率が改善することが示されました(3年生存率は、放射線単独治療群が45%、セツキシマブと放射線の併用療法群が55%でした)。放射線単独治療患者の生存期間の中央値が29カ月であるのに対し、セツキシマブと放射線の併用療法患者のそれは49カ月でした。併用療法は、癌の進行または再発の防止(「局所領域制御」と言われています)においてもより優れた結果を示しました。局所領域制御率は放射線単独治療群が34%であったのに対し、併用治療群では47%でした。

最新の全生存に関するデータは、セツキシマブによる延命効果は少なくとも5年間維持されたことを示しています。 5年生存率は、放射線単独治療群が36%であるのに対して、セツキシマブ併用治療群では46%でした。最新の解析による生存期間の中央値は、前回と同じでした。

最初の解析では、重度のざ瘡様皮膚反応の発現率は、放射線単独治療群(1%)と比べ、セツキシマブ併用治療群(17%)ではるかに高いことが明らかにされました。注入反応も、セツキシマブ併用治療群でより多くみられましたが、その他のすべての副作用の発現率は同等でした。

軽度以上のざ瘡様皮膚反応はセツキシマブ併用投与患者の174人(84%)に発現しました(放射線治療を併用せずにセツキシマブのみを使用した場合、同程度の発現率が予測されます)。そのうち127人は発疹が顕著に現れました。これらの患者らの生存期間の中央値は69カ月でしたが、全く皮膚反応が現れなかった患者または軽度の発疹のみ発現した患者の生存期間の中央値は26カ月でした。

コメント 本臨床試験の早期に発表された結果では、セツキシマブは、局所領域進行頭頸部癌患者の生存期間をQOLに悪影響を及ぼすことなく延長させることが証明されました。「セツキシマブの延命効果は少なくとも5年間持続するため、これらの最新の全生存データは重要です」と米国国立癌研究所(NCI)の臨床試験部門(Clinical Investigations Branch)のClaudio Dansky Ullmann 医師は述べました。セツキシマブと放射線の併用治療は、現在、局所進行頭頸部癌患者に対する治療選択肢として認められていますが、この治療法が標準治療として的確と考えられる患者群をより明確にする必要があると同氏は付言しました。

セツキシマブによる治療を受けた患者はより頻繁に顔面および身体に発疹を発現させたことが観察されましたが、これは「セツキシマブの副作用として予想されるものです」とUllmann医師は述べました。発疹による治療効果の低下が認められないだけではなく、「ざ瘡様発疹は、最良な転帰をもたらす免疫応答のバイオマーカーであるかもしれない」と著者らは示唆しました。他の種類の癌でも同様のパターンが示されているとUllmann医師は述べました。

制限事項 New England Journal of Medicine誌に発表された最初の試験結果に付随する論説で、Marshall R. Posner医師およびLori J. Wirth医師は本試験がセツキシマブ併用治療と標準治療であるプラチナ製剤ベースの化学放射線療法とを比較していないと述べました。また、患者により放射線療法のレジメンが異なるため、結果の解釈法を複雑にしているとも述べました。

加えて、延命効果は、頭頸部癌のすべてのタイプで同じではありませんでした。「生存に関してのセツキシマブの効果は、本試験患者の半数以上の診断である口腔咽頭癌で明確に認められました。しかし、抗体(セツキシマブ)を使用しても下咽頭癌または喉頭癌患者の生存率は改善しませんでした」とPosner医師とWirth医師は論説で述べています。

このような状況下で、結果の解釈を複雑にしているのは腫瘍内のヒトパピローマウイルス(HPV)の状態に関する情報が欠如していることです。近年HPVが頭頸部癌で発見されることが増えています。そのほとんどが中咽頭(口のま後ろに位置する喉の部位)の腫瘍内に限定されています。HPV陽性の中咽頭腫瘍患者はHPV陰性腫瘍患者よりも一般的に転帰が良好であることが近年報告されています。

本臨床試験がデザインされた時点では、頭頸部癌におけるHPVの予後への影響については知られておらず、研究者らは腫瘍標本に対しHPV検査を行いませんでした。「本試験において生存期間が長かった患者はHPV陽性腫瘍を持っていたかもしれません。この特定のサブグループの患者が、セツキシマブを追加したことで、より恩恵を得られたかどうかは、現時点では不明です」とUllmann医師は述べました。現在計画されている頭頸部癌の臨床試験では、HPVの状態によって患者を選択することになっていると同医師は説明しました。「これらの臨床試験により、本試験で採用したようなあまり強力ではなく毒性の低いレジメンが主要な治療選択肢となる患者集団、またはより強力な化学放射線療法によるアプローチが必要な患者集団がより明確にされるでしょう」と続けました。

最後に、「腫瘍学者はプラチナ製剤ベースの化学放射線療法の試験ではすべて、セツキシマブを用いたこの試験よりも患者に大きな改善が示されたことを覚えておかなければなりません。現在、その毒性を忍容できる患者にとって、シスプラチンによる化学放射線療法は未だに標準治療です」とPosner医師およびWirth医師は論説で述べています。「最近登録が完了したある[url=http://www.cancer.gov/clinicaltrials/ft-RTOG-0522]試験[/url]では、これらの患者らに対してシスプラチンによる現在の標準治療にセツキシマブを加えた場合、転帰が改善するかどうかを研究しているところです」Ullmann 医師は述べましました。

******

佐々木 了子 訳

Yuko Watanabe 校正平  栄(放射線腫瘍科/武蔵村山病院) 監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  3. 3免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要
  4. 4FDAがHER2陽性早期乳がんの延長補助療法にネラチ...
  5. 5リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  6. 6ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  7. 7FDAが皮膚未分化大細胞リンパ腫にブレンツキシマブ・...
  8. 8血中循環腫瘍DNAに基づくリキットバイオプシーの可能...
  9. 9若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  10. 10FDAがFLT3遺伝子変異白血病(AML)にミドスタ...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward