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数種類の薬剤が前立腺癌の男性のホットフラッシュに効果があると考えられる

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数種類の薬剤が前立腺癌の男性のホットフラッシュに効果があると考えられる

Several Drugs Appear Effective for Hot Flashes in Men with Prostate Cancer (Posted: 2/25/2010) –Lancet誌2009年12月4日号に発表された臨床試験によると、数種類の薬剤(抗うつ剤および2種類のホルモン療法剤)が、ホルモン療法を受けている進行前立腺癌患者のホットフラッシュに効果がある。


キーワード

前立腺癌、ホットフラッシュ、ほてり、ホルモン療法、酢酸メドロキシプロゲステロン(Gestoral®)、酢酸シプロテロン(Androcur®)、ベンラファクシン、Effexor®。(癌関連用語の多くはCancer.gov Dictionaryに掲載されています)

要約

3種類の異なる薬剤-抗うつ剤のベンラファクシン(Effexol® LP)およびホルモン療法の酢酸メドロキシプロゲステロン(Gestoral®、プロゲスチン)と酢酸シプロテロン(Androcur®、抗アンドロゲン)-のいずれの場合も、進行前立腺癌のホルモン療法を受けている男性300人以上を対象にフランスで実施された臨床試験で、ホットフラッシュの回数および強さが減少しました。ホルモン療法は、2種類ともホットフラッシュが同程度まで緩和され、ベンラファクシンの約2倍の緩和効果がありました。しかし、ベンラファクシンの治療を受けた患者のほうが、情緒機能が良好であったという報告がありました。

出典

Lancet Oncology誌、オンライン版2009年12月4日号(ジャーナル要旨参照)

背景 ほてりとしても知られるホットフラッシュ(ほてり)とは、体温の急上昇(通常5分以内でおさまる)と、それに伴う不快感、発汗、皮膚の紅潮のことです。ホットフラッシュは、ホルモンレベルが不安定になり体温調節機能が阻害された場合に発生します。ホットフラッシュの研究の多くは、更年期を迎える女性または癌のホルモン療法を受けている女性を対象に実施されていますが、男性のホットフラッシュもまた、不安定なホルモン値が原因の体温調節の乱れにより発生していると考えられています。そのため、女性に見られるホットフラッシュの症状を緩和する治療は男性にも効果的であると考えられます。

進行前立腺癌のためアンドロゲン抑制療法を受けている80%もの男性が、この治療法の最も困難な副作用であると多くの患者が認めるホットフラッシュに悩まされています。ホットフラッシュを抑える治療には通常、ホルモン療法(エストロゲンおよびプロゲスチンなどのエストロゲン以外のホルモン)があります。米国では利用できませんが、ホットフラッシュに悩まされている男性に対する抗アンドロゲンの酢酸シプロテロン(CPA)も用いられています。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)抗うつ剤のベンラファクシンとパロキセチン、抗けいれん薬のガバペンチンを含む多数の非ホルモン療法も、乳癌女性のホットフラッシュの治療薬として効果を示しており、これらの薬剤が進行前立腺癌のホルモン療法を受けている男性のホットフラッシュを緩和する可能性があるというエビデンスがいくつかあります。しかし、煩わしいホットフラッシュに悩まされる女性を対象に実施された2006年の臨床試験で、ベンラファクシンは酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)ほど効果を示しませんでした。

試験 2004年4月から2007年4月までの間、研究者らはフランス各地の泌尿器センター106カ所から911人の前立腺癌患者を登録しました。ホルモン療法を受けていた患者は一人もいませんでしたが、全員がアンドロゲン抑制薬剤、リュープロレリンの3カ月毎の服用を開始しました。半年後、ホットフラッシュの治療を希望、または前の週にホットフラッシュを14回以上訴えた311人(34%)の患者のうち、102人がベンラファクシン、101人がCPA、108人がMPAを10週間毎日服用する群に無作為に割り付けられました。

試験薬の服用を開始する前に、男性は、ホットフラッシュが起きた回数とその重症度の1週間分の記録-ホットフラッシュ日誌-をつけました。研究者は、この日誌により、試験薬の効果を比較する基準値の指標が得られました。患者の「毎日の点数」は、ホットフラッシュの回数をその重症度の平均でかけて計算されました。患者は治療開始後4、8、12週目に評価を受け、各評価に先立ち、ホットフラッシュ日誌を1週間つけました。

患者はまた、来院の前に、倦怠感、痛み、吐き気および嘔吐に加え、身体機能、社会的機能、情緒機能、日常役割機能および認知機能について質問する生活の質に関するアンケートに答えました。本臨床試験の主要転帰は、基準値と4週間との間の、ホットフラッシュの毎日の点数の変化でした。

本臨床試験の責任医師は、フランスのポアティエにある大学病院のJacques Irani医師です。本臨床試験は、フランスのピュトーにあるTakeda Laboratories(タケダ研究所)の資金提供により実施されました(プロトコルの要旨参照)。

結果

4週間の治療の後、ホットフラッシュの毎日の得点は、3種類すべての薬剤において改善されました。ベンラファクシンに割り付けられた患者の点数は47%減少し、MPAの患者は84%、CPAの患者は95%減少しました。ホットフラッシュの症状が完全に緩和されたと答えたのは、ベンラファクシン群が8%、MPA群が23%、CPA群が37%でした。ベンラファクシン群と他の2種類の薬剤との間の差異は統計学的に有意でしたが、MPAとCPAとの間に統計学的に有意な差異は見られませんでした。

情緒機能の点数ではベンラファクシン群のほうがいずれのホルモン治療よりも好成績だった以外、機能と症状の点数においては全治療群とも全員同等でした。試験薬に関連した重篤な有害事象の報告があったのは二人のみでした。一人はMPA治療を受けた患者、もう一人はCPA治療を受けた患者です。

コメント

「前立腺癌患者のホットフラッシュの標準的治療はひとつではありません」とNCIの癌予防部門のHoward Parnes医師は述べました。本臨床試験で使用した3種類の薬剤それぞれが、これまでに使用され、ある程度の効果が認められていますが、本臨床試験の著者らは、今回の試験が一対一で比較した初めての試験であると確信しています。

「欧州で、CPAは何十年もの間、前立腺癌の治療に使用されてきました」と著者らは記述しています。その結果、「CPAをホットフラッシュの治療に使用すると、場合によっては、計画しているホルモン療法を阻害する可能性があります」と追記しています。したがって、MPAがベンラファクシンよりも効能が優れていることを前提に、著者たちは、「MPAを、アンドロゲン抑制で治療を受けている男性のホットフラッシュに対する標準治療とすることを検討」しています。

本臨床試験では、ホットフラッシュの治療の研究は「性中立的」である可能性があるというエビデンスをより多く提供していると、Charles L. Loprinzi医師とSherry L. Wolf理学修士は付随の論説に記述しています。すなわち、今回の試験結果は煩わしいホットフラッシュを訴える女性には、MPAのほうがベンラファクシンよりも効果があることを示した2006年の試験の結果と一致しているということです。

制限事項 ホットフラッシュに悩まされている男性全員が治療を希望、または必要としているわけではありません。本臨床試験で、ホットフラッシュの治療を求めた男性は23%未満でした。したがって、著者たちは、このような治療をアンドロゲン抑制療法に付随して標準的に行うものとは考えていません。

CPAは米国で利用できず、2000年に出版された27件の抗アンドロゲン臨床試験の概説で、CPAが実際に症状を悪化させる可能性があることが明らかになりました。Parnes医師は「メタ分析によりCPAの安全性に関する懸念が高まりました」と述べました。

最後に、この治療法が本臨床試験で評価した期間より長い期間でも効果があるかを確定するために、長期の追跡調査が必要です。

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松長 愛美 訳

野長瀬祥兼(工学/医学) 監修

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