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ウエイトリフティングは乳癌サバイバーのリンパ浮腫の症状を悪化させず、改善させる可能性がある

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ウエイトリフティングは乳癌サバイバーのリンパ浮腫の症状を悪化させず、改善させる可能性がある

Weight Lifting Does Not Exacerbate and May Improve Lymphedema Symptoms After Breast Cancer (Posted: 09/16/2009)

–2009年8月13日発行のNew England Journal of Medicine誌に発表されたランダム化臨床試験では、徐々に進めるウエイトリフティングは、リンパ浮腫を有する乳癌サバイバーの上肢の腫脹を悪化させないことが示された。


キーワード
乳癌、サバイバー、リンパ浮腫、ウエイトリフティング、エクササイズ、晩期障害、放射線治療 (癌関連用語の多くは]Cancer.gov Dictionaryに掲載されています。)

要約 ランダム化第3相試験において、徐々に負荷を上げるウエイトリフティングは、リンパ浮腫を伴う乳癌サバイバーの上肢の膨張を悪化させないことが示されました。監督下でのウエイトトレーニングを実施したところ、1年後、こうしたウエイトリフティングにより、筋力が強化し、リンパ浮腫の悪化が減少し、症状も軽減しました。

出典 The New England Journal of Medicine誌、2009年8月13日号(ジャーナル要旨参照)。(N Engl J Med. 2009 Aug 13;361(7):664-673)

背景 リンパ系は、血管と組織のネットワークであり、リンパ液を全身に運び、感染症やその他の疾患から身体を保護しています。リンパ系が損傷を受ける、あるいは遮断されると、リンパ液が軟部組織に堆積し、リンパ浮腫として知られる状態となります。リンパ浮腫となった組織は感染を受けやすく、患者の多くは、不快感、機能の易感染性および精神的苦痛に苦しみます。 リンパ系を損傷するいかなる癌や治療でも、リンパ浮腫を発症させますが、乳癌の手術と放射線治療のいずれもが、腕、肩、頸部および胴のリンパ節に損傷を与えることがあるため、特に乳癌患者に多く見られます。リンパ浮腫は進行性の疾患で、管理することはできますが、治癒することはなく、治療後数日、あるいは数ヵ月、数年後に発症することもあります。 乳癌サバイバーは、リンパ浮腫を引き起こす、あるいは悪化させることを懸念して、上半身の運動を避けがちです。しかしながら、腋窩リンパ節を切除された、あるいは放射線照射された乳癌サバイバーを対象とした最近の臨床試験では、6ヵ月のウエイトトレーニングを行った患者は、行わなかった患者よりもリンパ浮腫に苦しまなかったことが示されています。さらに、運動を避けることにより、術後の回復遅延、あるいは身体障害の増加といった悪影響を懸念する医師もいます。

試験 研究者らは、過去1年~15年の間に乳癌と診断され、乳癌に起因する安定したリンパ浮腫を呈する乳癌サバイバー141人を対象とし、2005年10月~2007年3月に、本第3相ランダム化臨床試験を実施しました。患者の半数が、ウエイトリフティングプログラム参加群に無作為に割付けられ、地域のフィットネスセンターの年間会員となり、ウエイトリフティングの指導と最初の監督を受け、週2回の定められたセッションのいずれにも参加しなかった場合には、電話で督促を受けるようにしました。対照群は、試験期間中、現状の運動レベルを維持しましたが、試験終了後、フィットネスセンターの年間会員権とトレーニングが提供されました。 ウエイトリフティング群の患者は、訓練計画を段階的に進め、最初の13週間は監督を受けながら実施しました。重量(負荷)は、リンパ浮腫の症状が悪化しなかった患者では、徐々に増加させました。症状が悪化した(リンパ浮腫悪化)患者は、リンパ浮腫療法士により最低負荷で上半身の運動を再開することが許可されるまでは、下半身の運動のみ続けました。 上肢の太さは、腕および手を水に沈め、こぼれた水を計量することによって評価されました。さらに、リンパ浮腫療法士が、試験開始時と1年後に各患者を評価し、患者はリンパ浮腫の症状についての自己報告調査票に回答しました。 1週間以上持続する症状の変化、あるいは、3ヵ月と6ヵ月目の中間測定時に上肢の容積に5%以上の変化があった場合、リンパ浮腫悪化と評価しました。 今回の臨床試験責任医師は、フィラデルフィア・ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターのKathryn H. Schmitz博士でした。資金は、米国国立癌研究所と米国国立研究資源センターにより提供されました。

結果 主要転帰は、1年後の5%以上の腕および手の腫脹の増加(水の排出量による計測)でした 。ウエイトリフティングによる介入治療では、この転帰の発生率は増加せず、ウエイトリフティング群では70人中8人、対照群では69人中8人に見られました。 さらに、ウエイトリフティングにより、いくつかの副次的転帰が改善しました。特に、リンパ浮腫悪化の頻度はウエイトリフティング群では、対照群の半数で、 リンパ浮腫症状の重症度はウエイトリフティング群において、より大きな改善を示しました。当然のことながら、ウエイトリフティング群の患者では、上半身と同様に下半身も筋力がより向上していました。

コメント 本試験の論説の中で、ヒューストンのM.D.アンダーソンがんセンターのWendy Demark-Wahnefried博士は、今回の結果を、「ウエイトリフティング療法を支持する既存のエビデンスに対する重要な貢献」と評価しました。本試験には白人以外の女性や、幅広い教育・職業レベルの女性が多く参加していたため、今回の知見は広く応用できると考えているからです。実際、同博士は、この介入治療が、リンパ浮腫による負担がもっとも大きいと考えられる「貧困層において特に価値があるだろう」と強調しました。 「この試験ように症状管理を調査する優秀な試験がもっと必要です」と、NCI癌制御・人口学部門、癌生存者オフィス室長のJulia Rowland博士は述べました。「今回の試験の結果は特に重要です。なぜなら運動が複数の身体的、心理・社会的利益をもたらすというエビデンスを裏づけ、非常に多くの癌サバイバーが抱く、治療後の回復と健康増進のために何ができるのかという疑問に答えているからです」と、Rowland博士は語りました。「われわれは、運動が実際に乳癌生存率を向上させる重要な役割を担っているという可能性があると考え始めています。」

制限事項 本介入治療では明白な数値が示されたが、Demark-Wahnefried博士は、このプログラムが費用効果的であるか、効果的に普及させることができるか、あるいは「放置されたままにならないか」追跡調査が必要であると言及しました。実際、Schmitz博士らは、「米国中のYMCAで実施できるであろう」方法で地域のフィットネスセンターでのウエイトリフティング療法を開始したとき、普及の重要性について検討しました。 本試験の割付けに関して参加者に対する「盲検化」ができず、症状の報告または評価に偏りが生じた可能性があります。たとえば、介入群の患者は、悪化として評価する必要のある症状の変化により気付きやすくなっていた可能性があります。 最後に、本研究では、リンパ浮腫のリスクを有するものの、まだ発症していない乳癌サバイバーにおいて、ウエイトトレーニングが、その発症を防止することができるかどうかについては示されていません。この問題に取り組む研究が現在進行中です。
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入江 瑞穂 訳

原 文堅(乳腺科/四国がんセンター) 監修

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