2010/03/09号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2010/03/09号◆癌研究ハイライト

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2010/03/09号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年3月9日号(Volume 7 / Number 5)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・一部の子宮内膜癌において内部放射線が局所再発率低下に有効
・リンパ節の広域切除が一部の子宮内膜癌女性の生存を改善する可能性
・小児や10代の青年は若年成人より非ホジキンリンパ腫で死亡する可能性が低い
・高齢女性は子宮頸癌の恐れがある新たなHPVの感染リスクは低い
・インターネット上に医療情報が増加しているが、なお人々は医師を信頼している

一部の子宮内膜癌において内部放射線が局所再発率低下に有効

中〜高リスクの子宮内膜癌の女性を対象とした大規模ランダム化臨床試験において、腟内小線源療法(VBT)は、膣内における癌再発率の低下に外部放射線療法(EBRT)と同等に有効で、副作用も少なかった。オランダ・ライデン大学医療センターのDr. Remi Nout氏を筆頭としたPORTEC-2臨床試験のこれらの結果は3月6日付Lancet誌に発表された。

以前に行われた臨床試験PORTEC-1では、EBRTによって、中〜高の再発リスクが女性における癌の局所再発率が20%以上から5%に減少したことが示されていた。しかしながら、これら女性の1/4以上は、治療後2年以内に主に消化管(下痢など)の副作用を訴えていた。

VBTがより低い毒性でEBRTと同様に有効であるかを検証するため、研究者らは427人の女性を対象としたPORTEC-2臨床試験を実施した。子宮、卵巣および卵管の切除後、214人の女性はEBRT、残りの213人はVBTを、各治療センターの裁量にしたがい、低・中・高の線量率の治療を受けた。中央値45カ月の追跡期間後、EBRT群の4人およびVBT群の3人に膣内再発が確認された。膣における5年推定再発率はEBRT実施後が1.6%、VBT実施後は1.8%であった。両群の無病生存期間または全生存率に有意差は見られなかった。

消化管の副作用を訴えた女性数は、EBRT完了時(53.8%)とVBT(12.6%)の間に4倍以上の開きがあった。両群間の差は時間の経過とともに縮小し、治療2年後には統計的に有意ではなくなっていた。EBRT群の1人とVBT群の4人の女性は、重度の腟粘膜の委縮を訴えた。これは腟粘膜が薄くなり、不快な症状を伴うことがある状態である。治療後の性行為の頻度について両群の間に有意差はなかった。

「VBTは腟管理および局所再発率に優れ、全生存率および無病生存期間はEBRTと同様であり、QOLおよび消化管に対する毒性作用は明らかに良好である。VBTは、中〜高リスクの子宮内膜癌患者に対する補助療法の第一選択とすべきである」と著者は結論づけている。

リンパ節の広域切除が一部の子宮内膜癌女性の生存を改善する可能性

骨盤および腹部大動脈周辺のリンパ節の系統的切除は、術後の再発リスクが高い子宮内膜癌女性の全生存率を改善する可能性があると、日本の研究者らによって新たな研究が発表された。研究の結果は、2月25日付オンライン版Lancet誌で発表された。

このレトロスペクティブなコホート研究は、リンパ節切除などの子宮内膜癌の医療水準が高い2カ所の病院で治療を受けた671人の女性を対象に行われた。子宮摘出後に骨盤および大動脈の両方のリンパ節を切除した中〜高の再発リスクの女性における全生存率は、子宮摘出後に骨盤のリンパ節のみを切除した女性に比べて66%改善した。再発リスクが低いと考えられる女性については、リンパ節の広域切除と関連する全生存率の改善はなかった。再発リスクは広く用いられている子宮内膜癌に関する国際リスク分類に基づいて割り出された。研究ではまた、大動脈リンパ節切除に加え、術後に実施する化学療法が、独立して再発リスクの高い女性の生存率を改善することが示された。

本研究の結果は、リンパ節切除後の生存率に改善は見られないことを示した先の2件の臨床試験(Lancet誌およびJournal of the National Cancer Institute誌の報告)の結果と一致しないと北海道がんセンターの藤堂幸治医師らは説明し、先の両試験にはリンパ節に広がったリスクの高い患者が少数しか含まれていなかったことを指摘した。「微少腫瘍および肉眼的腫瘍の関与を排除し、リンパ節転移のリスクがある患者について十分な治療効果を達成するには、骨盤と大動脈の両方のリンパ節を切除しなければならない」と研究者らは結論している。

本研究はレトロスペクティブではあるが、そのような研究の妨げとなるバイアスの少ない研究デザインであったと、メイヨークリニックの婦人科外科のDr. Sean Dowdy氏およびDr. Andrea Marini氏は付随した論説に著している。2人は、本研究結果はランダム化臨床試験において検証しなければならず、そのような臨床試験は「長年後回しにされていた子宮内膜癌外科治療のための」標準治療の確立に必要であるという点で藤堂医師らに同意した。

小児や10代の青年は若年成人より非ホジキンリンパ腫で死亡する可能性が低い

20〜29歳で非ホジキンリンパ腫(NHL)と診断された若年成人のNHLによる死亡リスクは、青年や小児のおよそ2倍であると、CDC(疾病対策センター)によってArchives of Pediatrics and Adolescent Medicine誌3月号に発表された。NHLの若年成人は、小児や10代の青年に比べて臨床試験の参加率がかなり低いという事実など、多数の要因がこの差異に関係しているかもしれないことが示唆された。

生存率を比較するために、Dr. Eric Tai氏らは13のSEER癌登録からNHL患者2,442人のデータを分析した。この患者データには、1992〜2001年の間にNHLと診断された若年成人1,455人と10代の青年および小児987人が含まれていた。

NHLのサブタイプや診断時の病期を考慮したとしても、なお若年成人は小児や10代青年と比べて5年以内に死亡する可能性が高かった。この調査により、小児と10代青年の87%は24カ月生存しているのに対して若年成人では79%、さらに5年生存率は小児と10代青年の85%に対して若年成人は75%であったことが判明した。

時間とともにNHLの生存率は向上してきているが、若年成人における生存率の向上は小児や青年に比べて少ないと研究者らは記し、「NHLの発症を増加させるとして知られている基礎疾患の違い、治療方法の違い、臨床試験の参加不足、死亡率に寄与する可能性がある、長期的あるいは遅発性の疾病や治療の影響、最適なフォローアップの欠如」がすべて影響しているのかもしれないと示唆している。今後の生存向上に対する取り組みには、若年成人に対する臨床試験を増やし、若年成人の臨床試験参加の後押し、この年代層に対する治療アクセスの向上の促進などを含めるべきであると研究者らは結論づけた。

高齢女性は子宮頸癌の恐れがある新たなHPVの感染リスクは低い

コスタリカ在住女性を対象とした大規模コホート研究のデータから、中高年女性でのヒトパピローマウイルス(HPV)感染の自然経過が解明された。このデータは感染リスクが年齢とともに著しく低下することを示している。また、新たな感染を見つけるための頻繁なヒトパピローマウイルスのDNA検査や、中年女性に対して新規のHPV感染を防ぐ目的でワクチン接種を行うことはほとんど効果がないことも示唆している。この分析は、Journal of the National Cancer Institute誌3月3日号に掲載された。

発癌型HPVによる新たな感染は、主に若年時の性交渉でおきる。あらゆる年齢層において、通常、新規感染によって癌が発症することはなく、長い間検出可能な状態が続く感染のみが癌に進行するとみられる。

NCIの癌疫学・遺伝学部門と癌予防部門の研究チームとコスタリカおよび米国の共同研究者らは、地域住民を母集団としてほぼ1万人が参加した長期研究において、登録された18歳以上の女性の集団を7年間追跡調査した。これらの女性の約1/3が、HPV感染の有無の診断、従来法細胞診や液状検体を基とした処理法細胞診を用いた異形細胞変化の特定、そして子宮頸部の目視検査のために、6〜12カ月毎の子宮頸癌検査によって積極的に追跡評価された。前癌状態(疑わしい、または、明らかな子宮頸部上皮内腫瘍クラス3)もしくは子宮頸癌が示唆される異常評価があった女性は、コルポスコピーと生検で診断を行い、必要があれば治療を受けた。残りの2/3の女性は子宮頸癌発症リスクが低く、参加時に最初の定期検査を受けた後は5〜7年後に追跡調査を受けた(受動的追跡評価)。

この調査に参加した女性全員において、新規感染は持続することはあまりなく、前癌病変の発症につながらないとみられた。感染の持続がさらに感染の長期化および前癌状態と診断される最も高いリスクと関連していた。しかし、高齢女性の間で見つかった新たな感染は(一部は潜伏的な状態から再出現してきたかもしれない)、若い女性の感染と同様で良性であった。

HPV感染の自然経過と、どの年齢層においてもHPVを排除する人体の性質を説明する中で、著者らは、「HPVの持続性に焦点を置き、自然消滅する可能性の高いHPV感染に対して過剰反応を避けることが、HPVテストを子宮頸癌のスクリーニングプログラムに論理的に導入するために必要不可欠である」と表明した。研究者らは、「ワクチンとスクリーニングプログラムは、間違った結論を避けるためにどの種類の感染をターゲットにするのかを明確に特定する必要がある」との注意を促した。

インターネット上に医療情報が増加しているが、なお人々は医師を信頼している

最新のNCI調査によると、人々が医療情報を必要とする時は最初にインターネットを頼るとの報告は事実であるが、医師に対する米国一般大衆の信頼は、依然として上昇し続けている。対照的に、インターネットやその他のより古典的情報源(例えばテレビ)に対する信頼は低下してきている。この調査は、電子メールにより医師と連絡を取る米国人の数が一貫して増えていることも示していた。NCIの医療情報動向に関する全国調査(HINTS:Health Information National Trends Survey)を監視するスタッフのこの知見に関する投稿が、New England Journal of Medicine誌3月4日号に掲載された。

HINTSは、米国人がどのようにして癌関連情報にアクセスし使用するかを調べる唯一の全国調査である。NCIの研究者らは、2003年、2005年、2008年と連続して成人約5,000〜6,000人を調査した。今回の知見は最初の2回の調査で認められた動向を基に算出されたものである。

「この10年の間、インターネットで医療情報を得ているにもかかわらず、一般の米国人の医師に対する信頼は好ましい医療情報源として変わらず高いままであり、しかもどちらかと言えば、2002年から2008年にかけて信頼は増加している」と、NCIの癌制御・人口学部門のDr. Bradford Hesse氏とDr. Rick Mose氏は記した。

人々は現在、情報過多を経験していることをHesse氏は示唆している。そして、インターネット上の医療情報の明確さが保障されないため、人々は混乱することがある。同時に、「信頼できるサイトの掲載情報は、必ずしも一般市民に理解できるものばかりではないことをわれわれは知っている」とHesse氏は述べた。

次回のHINTSは2011年に実施の予定であり、医療情報技術を有意義に利用するためのHealthy People 2020の目標到達まで追跡できるように計画された項目を盛り込む予定である。

関連記事3月2日付オンライン版British Medical Journal誌に発表されたNCI癌疫学・遺伝学部門のDr. Sholom Wacholder氏らによる報告は、サーバリックスによるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に生じる流産の可能性を、2件の多施設第3相臨床試験において検証した。うち1件はグラクソ・スミスクライン(GSK)社、もう1件はコスタリカのNCIが資金を提供した。NCIの二重盲検試験の参加者は、サーバリックスまたはA型肝炎ワクチンHavrixに無作為に割り付けられた。2件の試験において、両群に対するワクチン接種は6カ月間で3回予定されていた。「全体として、HPVワクチン接種と流産のリスクを関連づける証拠はなかった」と著者らは結論づけた。

研究者らは、HPVワクチン接種後3カ月以内の流産発生率に、A型肝炎ワクチンの9.1%と比較して14.7%と、統計的に有意でないわずかな増加があったことを指摘した。これらの一部結果に基づき、FDAはGSKに対し、サーバリックス投与前後に妊娠した女性の流産リスクを評価する詳しい研究を行うよう要請した。

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横山 加奈子、Nogawa 訳

林 正樹(血液・腫瘍内科医/敬愛会中頭病院)、寺島 慶太(小児科医/テキサス小児科病院)監修
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