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ソラフェニブは転移腎臓癌の再発を遅らせる

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ソラフェニブは転移腎臓癌の再発を遅らせる

Sorafenib Delays Progression of Metastatic Kidney Cancer
要約
(Posted: 02/07/2007)(Updated: 06/08/2009)Journal of Clinical Oncology誌2009年5月18日号の電子版によると、第3相試験の早期分析にて、ソラフェニブ[sorafenib](ネクサバール[Nevaxar®])を使用した治療によって転移性腎臓癌患者の無増悪生存期間が延長することが示されました。

 


キーワード
腎臓癌、淡明細胞型腎細胞癌、ソラフェニブ(ネクサバール®)、標的治療薬(癌関連用語の多くは、Cancer.gov Dictionaryに掲載されています。)

要約
第3相試験の早期分析にて、ソラフェニブ[sorafenib](ネクサバール[Nevaxar®])を使用した治療によって転移性腎臓癌患者の無増悪生存期間が延長することが示されました。現時点における最新の分析結果では、ソラフェニブによって全生存期間が延長することも示されましたが、その改善率は統計学的に有意なものではありませんでした。

出典
New England Journal of Medicine誌2007年1月11日号(ジャーナル要旨参照)。更新後の結果はJournal of Clinical Oncology誌2009年5月18日号の電子版に掲載されています(ジャーナル要旨参照)。

背景
大半の腎臓癌患者は、淡明細胞型腎細胞癌と呼ばれる悪性度の高い型を有しています。初期にみつかった場合、手術によって治癒することが可能です。しかし、癌が広がる(転移する)と5年生存率は10%未満になります。

淡明細胞型腎細胞癌を伴う患者では、腫瘍の血管の増殖を促進させる血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や他のタンパク質の値が高くなります。血管増殖を阻害する標的薬であるソラフェニブ(ネクサバール®)は、血管新生阻害薬と呼ばれる薬剤クラスに属します。

試験
2003年11月~2005年3月に実施された二重盲検第3相試験では、19カ国(米国など)の117箇所の医療施設から患者903人を登録しました。すべての患者が転移性淡明細胞型腎細胞癌を有しており、ある種の前治療(腎摘出術やサイトカイン療法)を受けていましたが、疾患の進行を止めることができませんでした。

全患者のうち451人をソラフェニブ1日2回投与群、452人をプラセボ投与群にランダムに割付けました。本試験の主要目的(主要評価項目)は、ソラフェニブ投与患者の生存期間が延長するかどうかを検討することでした。また、研究者は、ソラフェニブ投与で癌進行を遅らせることができるか(これは無増悪生存期間と呼ばれ、本試験の副次的評価項目でした)を検討するため、中間解析(2005年1月)を計画しました。

本試験の主席試験責任医師は、フランスVillejuifにあるInstitut Gustave RoussyのBernard Escudier医師でした。製薬会社のBayer社とOnyx社が試験計画に携わり、本試験を支援しました。本試験は、Treatment Approaches in Renal Cancer Global Evaluation Trial(TARGET)として知られています。

結果
計画通り2005年1月に無増悪生存期間を評価したところ、この副次的評価項目については、プラセボ群よりもソラフェニブ群で統計学的に有意な有益性が認められました。ソラフェニブ群(中間解析時点で384人)では、疾患の進行が認められるまでの期間の中央値が5.5カ月でしたが、プラセボ群(385人)では2.8カ月でした。このことは、ソラフェニブ群で疾患進行率が56%減少したことを意味します。

ソラフェニブが明らかにに有益であったことから、プラセボ群の患者に対し、投与していた薬剤について説明し、2005年5月からソラフェニブ群に加わるという選択肢を提示しました。プラセボ群のうち合計216人が入れ替わってソラフェニブ投与を開始しました。
全生存期間の最終解析は、ソラフェニブ群への入れ替わりから16カ月後の2006年9月に行われました。この時点までに561人が死亡しており、生存期間の中央値は、ソラフェニブ群で17.8カ月、プラセボ群で3.4カ月でした。この差異は統計学的に有意ではなく、非常に多くの患者がプラセボ群からソラフェニブ群に入れ替わったためである可能性が高いと考えられました。プラセボ群からソラフェニブ群に入れ替わった患者を解析から除外したところ、ソラフェニブ投与は全生存期間において統計学的に有意な改善率と関連することが明らかになりました。

副作用として発疹、下痢、疲労感、悪心および脱毛が認められましたが、ソラフェニブの忍容性は全般的に良好でした。また、ソラフェニブ群の17%で血圧上昇、3%でより重篤な心臓の問題が認められました。その他の血管新生阻害薬の中には、心血管毒性の可能性が認められているものもあります。

コメント
本試験でみられた無増悪生存期間における有益性に基づき、米国食品医薬品局は進行性腎臓癌の治療薬としてソラフェニブを2005年12月20日に承認しました。

Texas大学Southwestern Medical CenterのJames Brugarolas医学博士は「腎細胞癌は、治療に対して最も抵抗性を示す腫瘍の1つです」と、初期結果の公表文献の付随評論にて述べています。さらに同博士は「ソラフェニブ、スニチニブ(スーテント®)、Temsirolimus[テムシロリムス]、ベバシズマブ(アバスチン®)などの新しい標的治療薬から、腫瘍を分子遺伝学的かつ分子生物学的に理解することが如何に有望な治療につながるかが分かります」と付け加え、これらの治療薬が特定の患者に対して如何に影響を与えるかについてさらなる理解が必要であると指摘しています。

米国国立癌研究所のCancer Therapy Evaluation Programで腎臓癌に対する治療薬について監督しているBhupinder Mann医師は賛同したうえで、「現在の臨床試験では、転移性疾患の治療法をさらに改善することだけでなく、手術後早期の治療(補助療法)によって再発リスクが減少するかどうかも検証しています」と述べています。例えば、ECOG-E2805試験が挙げられます。これは全国的な試験であり、腎摘出術を受けていて、再発リスクが高いと考えられる患者を対象としています。この試験では、手術のみ(現在の標準療法)と比較して、手術後のソラフェニブやスニチニブ投与で再発リスクが減少するかどうか、すなわち、治癒する患者の数が増加するかどうかを検討します。患者および医師双方の関心が高いことから、本試験への参加患者は急速に増えています。患者に対する有益性が認められる薬剤が増えるにつれて、相対的な有効性に関する試験が数多く実施され、さらには、低毒性かつ低価格でありながらより有効な薬剤が承認されるようになることが期待されます。

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(斉藤芳子 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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